立憲民主党はどこからきてどこへいくのか 前編 枝野幸男 インタビュー

2018年3月19日

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昨年10月の総選挙直前に誕生した立憲民主党。告示の1週間前に結党されたのにもかかわらず支持が急伸したのは、これまでの政治とは違う「なにか」を期待されたからだったはず。2018年の立憲民主党はどんなビジョンを描くのか。──ロング・インタビューの前編は、あの選挙で感じたこと、SNSと立憲民主党、新たな党システム「パートナーズ制度」について。

この4ヶ月どうだった?

──昨年10月の総選挙が終わってそろそろ4ヶ月です。枝野さんにとってどんな4ヶ月でしたか?

大変だけど…楽しかったです。なぜなら、僕は、そして立憲民主党は、いまとても新しいチャレンジをさせてもらってるから。去年の10月の選挙の時の、あの国民の声とどう向き合うか、それを愚直に追求している感じです。これまでの政治に距離を感じていた方々の声を受け止めること、そして政治と国民とをどうつなげるのかを、みんなゼロから手探りで真剣に考えている。

そういう前向きな仕事というのは楽しいですよ。もちろん乗り越えなければならない壁はある。けれど、僕自身がもともと前向きな奴なので(笑)。元気にやらせてもらってます。

──やはり立憲民主党の結党という決断は、枝野さんにとっても大きな経験だった?

もちろんです。まず強烈に印象に残っているのが、10月3日の有楽町でのたった一人の街頭演説です。あの時僕はとにかく討ち死に覚悟だった(笑)。永田町の論理、組織の論理で言えば、僕の行動は無謀な賭けだと言われていたんです。でも、党を立ち上げてみたら、想像を超える数の人たちに、短時間でものすごい声援を送ってもらえた。街頭でも、Twitterでもそう。自分のやろうとしていることは間違ってないんじゃないか、という実感を痛烈に刻みつけられたんです。

「討ち死に覚悟」「崖っぷちだった」と語る10月3日の有楽町での街宣で、「新たな質感の支持」を実感したという。

──これまでの選挙と比べてなにが違ったんですか?

支持の量じゃなくて質が違った。「質感」とでも言うのかな、とにかく新鮮だった。あの崖っぷちで実感した、その新しい質感の支持の声にどう応えるのか。それが立憲民主党の原点だと思う。永田町の中にいてもその気持ちを忘れずに、いろいろと試行錯誤してるのが、現在かもしれない。

──最近の全国各地の立憲民主党の集会では、従来の講演会形式ではなく、より小さな規模のタウンミーティング形式や、参加者がディスカッションに参加するワークショップ形式など、様々な実験的な試みがあるようです。

タウンミーティングやワークショップは、市民との新たなコミュニケーションのあり方を模索して、試行錯誤中です。どういうコンセプトで、どういう時間帯にやるのか、それによって来場者の顔ぶれも雰囲気も変わってくる。いろんなことを考慮しながら、ああでもない、こうでもない、とやっています。

それに、僕ら立憲民主党が呼びかけるだけじゃなくて、市民の方々が自主的に企画して、いろんな問題提起やアプローチをしてくれてるのもありがたいです。そうした経験やノウハウが、党だけじゃなくて、僕らに期待してくれている市民の方にも蓄積されてきているんじゃないかな。

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立憲民主党のいくつかのタウンミーティングでは、参加者が小グループに分かれてアイデアを出し合い、最後に会場全体で意見を共有しながら、国会議員や地方自治体議員も含めてディスカッションを行っている。

──実際にタウンミーティングをやってみて手応えはありますか?

今回、1月から2月にかけて「原発ゼロ基本法案」についてのタウンミーティングを各地で開催しているのは、政策づくりのプロセスに市民をもっと巻き込んでいこうという試みです。面白いアイデアも飛び出したりして、手応えは十分にありました。こうした参加型の集会は、もっと市民を巻き込んで、その声を政策に反映させられるように、より方法論を洗練させていきたいと思ってます。

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「実は以前からエゴサをしていたんです。いまはTwitterをもっと早く始めればよかった、と反省しています」

──立憲民主党の結党のきっかけのひとつは、昨年9月末に「 #枝野立て」というハッシュタグが盛り上がったことです。その後も、公式Twitterのフォロワー数が急増したことなどで、立憲民主党のSNS戦略が注目を浴びています。去年の8月に開始した枝野さんの個人アカウントでも、自ら他の方のツイートにリプライするなど、使い方もこなれているように見えます。以前からTwitterは見られていたんですか?

実は見てはいた(笑)。以前からエゴサーチをしていたんです。

──それは鍵つきのアカウントとかで?

いや、自分のアカウントは持ってなかった。それでもTwitterって、自分でエゴサをかけると、アカウントがなくても読めるんですね。それで「枝野」や「えだのん」、かつての党名で検索をかけたりして。それで、貴重な提言をしている人たちのアカウントは、継続してウォッチしていました。

ただ今回は、そうした声をさらに幅広く受け取りたいと思って、意識的に使っています。もちろんそのまま取り入れるわけではないですが、具体的な現場の声もあって、間違いなく参考になっています。「SNSというツールがこんなに有効なんだ」というのは、立憲民主党を立ち上げた選挙以降、本格的に実感しましたね。

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──国会質問でも、Twitterで立憲民主党への意見を募集する「 #立憲ボイス」について言及していました。国会質問にハッシュタグが登場するのは、おそらく憲政史上初めてことだと思うのですが。

#立憲ボイスも新しいチャレンジのひとつです。Twitterを始めとするSNSで、僕ら立憲民主党に対して、非常に幅広い視点からの声、多様な意見をもらうことができる。実際に僕の代表質問などにも、それは部分的に活かされています。たとえば白菜の値上がりの話だったり、深夜働かざるを得ないような人たちの子育てのサポートをどうするかの話だったり。「こういうところも見落とさないでください」とか「こういうところが大変なんだよ」という声が僕らに届いています。

#立憲ボイスの活用方法については、もっと詰めて考えていくべき部分も多いんだけれども、非常に興味深いです。いまはもっとTwitterを早く始めるべきだった、と反省しています(笑)。

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Twitterのチェックは執務室のデスクトップでも行う。

「僕だけじゃない、みんなでネット上のデマと戦っている感覚がある」

──SNSにはポジティブな側面もある一方で、いわゆる「フェイクニュース」、デマの問題もあります。枝野さんに関してだと、2011年の原発事故の際にご家族をシンガポールに避難させた、という根拠のないデマがありました。フェイクニュースは2016年のアメリカ大統領選以降に世界的に話題になりましたが、日本でも真偽不明の情報を拡散するまとめサイトの問題などがあります。この件に関してはどうですか?

原発事故時のデマはもう6年近くに渡って繰り返されています。最近も一度Twitterで「避難の件はデマです」と指摘したのだけれど、なかなか消えない。でも、立憲民主党としてTwitterを始めて気づいたのは、そうしたフェイクニュースというか、デマに対するカウンターを、僕らに期待してくれているネット上のみなさんが、独自にやってくれるような構造ができている、ということです。

──詳しく聞かせてください。

つまり、ネット上の根拠のないデマに対して、多くの人が自発的に反論してくれているんです。もちろん、デマに反論する際の材料という意味でのファクト(事実)については、僕ら当事者が提供しなきゃいけないんですが、すでにいろいろな場所に公開されている事実を整理してくれたり、あるいは僕ら当事者が忘れてしまっているような過去のデータをつなぎ合わせてくれたり。そういう意味で、僕だけじゃない、みんなでネット上のデマと戦っている感覚がある。それはものすごくありがたいし、日本社会にとっても健全な動きだと思っています。

──Twitterを始める前は、インターネットやSNSに対して、少し「怖い」というような感覚はありましたか?

うーん、正直なことを言えば、真偽不明の情報も多いし、いわゆる「ネット右翼」的な意見が盛り上がっているという印象があったかな。それから、やはり僕自身を支えてくれている選挙区の有権者への発信だけを考えるなら、インターネットにも限界はあるので。どんなにネットで発信しても、届けたい人に届かなかったら意味がないとは思っていた。僕は新人の頃から、地元の駅前でビールケースをお立ち台にして朝の街頭演説をやっていて、それは直接的に目や耳に入る。そっちの方の実感は今でも大事にしています。

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執務室の本棚には新人時代、ビールケースを抱えての街宣準備の写真が飾られている。

──それが変わったきっかけは?

やはり双方向性に気づいたこと。コミュニケーションに双方向性がでてくると、情報発信の意味が何十倍、何百倍にもなってくる。SNSのもつその双方向性に気づいたことが、立憲民主党の公式アカウントや僕個人のアカウントの開始と重なったことで、爆発的に大きな意味を持ったんだと思います。

──「声を届ける」という意味での情報発信にとどまらず、逆に「声を受け取る」コミュニケーションのツールとしても使っている?

まさにそう。SNSは双方向的なコミュニケーションが可能で、これはある意味での政治参加のチャンネルのひとつになりえるな、と。それは僕ら政治家にとってだけ意味があるというんじゃなくて、国民のみなさんの側にとっても意味があることで、もし誰かが政治に声を届けたいと思ったとき、もっとも気軽に使えるツールのひとつなんじゃないかと。もちろん世代的にそうしたテクノロジーに疎い方々もいるかもしれないけれど、当初思ったよりも幅広い世代の方々から声をもらっています。

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パートナーズ制度ってなに?

──選挙後の立憲民主党の注目されている動きとして、「立憲パートナーズ制度」が予告されています。これはどういう構想ですか?

パートナーズ制度についても、いろいろと議論して、やっとカタチになってきたところです。募集開始はまだ少し先なんだけれど、ひとつだけ言えることは、このパートナーズの構想は、これまでの政治家と市民とのあいだの関係を決定的に変える、というアイデアに基づいていることです。

従来の政党は、「党員」や「サポーター」といったカテゴリーでくくって、国民のみなさんに応援してもらっていました。つまり、政党は有権者を囲い込んで、自分たちの応援団をつくることばかり考えてた。これは僕ら立憲民主党の政治家だってそうだったかもしれない。でも、本来は国民にとって大切な政治参加のツールであるはずの政党が、そんなに閉鎖的でいいのかな?って疑問を持ったんです。

──枝野さんがそうした疑問を抱いた理由は?

理由はシンプルで、とにかく昨年の選挙で僕らの背中を押してくれたみなさん、そうでなくても、現在の立憲民主党に期待してくれているみなさんと一緒に、なにか新しいことをやりたかった。でも、いきなり「党員」って言われるとハードルが高いでしょ?「サポーター」というのも、そもそも民主主義の主役は国民一人ひとりなのに、政治家が一方的にサポートされているように聞こえてしまって、違和感があった。

その意味で、政治家と市民はまっとうな政治を実現するための「対等なパートナー」であるべきなんじゃないか、って思ったんです。だから、立憲民主党は「党員」でも「サポーター」でもなくて、「パートナー」。党費はゼロで、登録料の500円のみ。

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「僕らを後ろからサポートして欲しいんじゃない。一緒に新しい政治をつくって欲しい。本気で草の根をやろうと思っている」

──パートナーズ制度のコンセプトについてもっと聞かせてください。

パートナーズ制度の発想って、従来の党員・サポーター制度の発想と真逆なんです。応援してくれる人たちを囲い込むんじゃなくて、僕ら政党の側がオープンに扉を開き、いろんな声の受け皿になる。そして永田町の中に閉じこもっているんじゃなくて、国民の生活の現場に飛び込んでいく。

立憲民主党は、国民の声をダイレクトに反映するような、いわば「使い勝手のいい道具」になるってことです。まさに「立憲民主党はあなたです」ということ。僕らのそういう気持ちのひとつの到達点が今回のパートナーズ制度だと思う。僕らを後ろからサポートして欲しいんじゃない。一緒に新しい政治をつくって欲しい。本気で草の根をやろうと思っているんです。

──現段階でパートナーズ制度についてより詳しいイメージがありますか?

わかりやすく言えば、僕ら立憲民主党は、みんなのためのプラットフォームになりたいと思っている。生活の現場でいろんな課題にぶつかって困っている人たちだったり、なにか新しいことにチャレンジしたい人たちが、自然と集まってくるような場所。

それぞれの地域の核になる議員がいて、その議員と一緒に動いてくれるパートナーズの方々がいれば、地域の抱えている課題だとか、面白い試みというのをどんどん共有できる。そしたら、現場で汗をかいている人たちにとって本当に意味のある政策や制度の構想につなげられるんじゃないか。

もしも今の政治に対して「もっとここに目を向けろよ」とか「ここに注目して欲しい」とか、そう感じているなら、どんどんパートナーズになって欲しい。立憲民主党というプラットフォームを使って、あなたにとってのまっとうな政治を実現して欲しい。それが僕らの考える「ボトムアップ」という言葉の意味です。

──そうした想いは「パートナーズ」というネーミングにも込められている?

ネーミングについても様々な議論があったんですが、「パートナーズ」というのは、僕らの想いが一番伝わりやすいんじゃないかなって。最後はみんな合意して決めました。パートナーズの目指すところが本当に実現すれば、これまでの日本の政治家と市民のあいだにあった壁を壊すことになると思う。ようするに、もっとフラットで、対等な関係にしたいんです。

(「立憲民主党はどこからきてどこへいくのか後編」に続く)