読むりっけん

2020年2月6日

2020年、政権の選択肢になるために——枝野幸男インタビュー

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2020年の通常国会が始まった。昨年12月に閉会した臨時国会では、立憲民主党を中心とする共同会派と日本共産党を含めた野党の連携により、英語の民間試験導入が見送られ、「桜を見る会」の問題がクローズアップされるなど、国会論戦が注目を浴びた。

2020年度予算を議論する通常国会の重点テーマは何か? 次の解散総選挙で野党に問われるものは? 国会の冒頭の代表質問で、「支え合う安心」「豊かさの分かち合い」「責任ある充実した政府」という次世代日本の青写真を示した立憲民主党代表枝野幸男に、2020年の日本政治について聞いた。

共同会派、野党連携の手ごたえは?

——昨年10月から12月までの臨時国会に、立憲民主党は共同会派を結成して臨みました。手ごたえはどうでしたか。

ここ数年で、もっとも手応えを感じた国会でした。共同会派や日本共産党はじめ他の野党の皆さんと役割分担し、統一的に、戦略的に質疑を進めていく連携がしっかりできたと思います。特に行政監視については、予想以上に大きな成果がありました。大きかったのは大学入試問題です。会期中に英語入試への民間試験導入を、会期が終わってからは国語と数学の記述式問題導入をやめさせました。

日本共産党が火をつけた「桜を見る会」の追及では、その時点で持っていた資料を野党全体で共有させてもらい、質疑の順番によって調査の範囲を振り分けるといった役割分担を、円滑に進められました。これは大きな経験になったと思います。

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桜を見る会「逃げるが勝ち」はおかしい

——通常国会が始まりましたが、臨時国会の手応えをどのように活かしていきますか。

臨時国会は短期間だし、予算審議という大山がありませんでした。「どこにお金を配分するのか」という国家の予算編成は、政治の本質です。むしろここからが本番だという気持ちで、これまでやってきた共同会派、野党間の連携をさらに飛躍的に展開したいと考えています。

たくさんのテーマがありますが、大前提は、「桜を見る会」の問題を与党、首相自身がしっかりと説明をすることです。質問に答えずに逃げ回り、官僚のみなさんにまで苦しい答弁をさせて、国会を閉じてしまえば「逃げるが勝ち」だなんて話は、絶対に許されません。総理本人による税金の私物化で、政治資金規正法違反などが疑われる案件で、さらに公文書の廃棄といった問題までついてきている。このまま終わりというわけにはいきません。

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社会保障の後退に、多額の防衛費。問題だらけの2020年度予算案

——通常国会で立憲民主党として重視するテーマは何ですか。

昨年末に政府が出した予算案そのものが大きな問題をはらんでいるので、3月までは予算問題をしっかり議論していきます。まず、消費税を上げて社会保障を充実させるはずだったのに、むしろ社会保障の充実どころか逆行するような中身がたくさん入っています。この辺りはしっかりと追及していきたい。

「本当に必要なの?」と思うような、最新鋭の戦闘機などに多額の予算を投入しているのも問題です。防衛費にしても、自衛隊員の待遇改善など、災害時にもっと自衛隊が苦労を小さく大きな効果を上げていただけるような予算の付け方のほうがよっぽど求められています。

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「呼びかけ」の真意——政権交代を担う強いつながりをつくる

——昨年12月上旬には、枝野代表から国民民主党や社会民主党へ、政権交代に向けた協力の「呼びかけ」をしました。

立憲民主党は、従来の政党とは決定的に違って、市民の声、期待を受けて結党されました。このことに私は自信と誇りを持っています。結党時の理念、政策からぶれてはいけない。一方、「20年経ったらこの理念、政策で政権を取れます」などと言っていては、政権の選択肢になるという最大野党の責任を果たせません。

昨夏、国会内での共同会派を組ませていただきました。一定の理念、政策についての共有もできました。そして先ほどお話ししたように、臨時国会では共有した理念、政策に基づいて共同会派の運営が成果をあげられた。そこで、我々の理念、政策を保持することと、最大野党の責任を果たすこと、二つの命題を両立させる余地が十分できていると感じました。

なので、ぜひ立憲民主党と一緒に現在の政治を変え、少しでも目指す社会に近づくために、より強いつながりを作っていこう、と共同会派のみなさんに呼びかけさせていただきました。もちろん、各党には大切にしている理念や政策があります。なので、こちらの思う協力体制が一朝一夕に築けるとは思っていません。しかし、野党で強い連携体制をつくり、現在の政治に代わるもう一つの選択肢になる、という目的は同じなはず。今回の呼びかけの成否にかかわらず、それぞれの持ち味を活かしながら、政権交代へと力強く進んでいく意志は変わりません。野党第一党として、その責任をしっかりと果たしていくつもりです。

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——2009年に自民党から旧民主党への政権交代がありましたが、3年3カ月後に下野しました。その結果、自民党に変わる新しい政治への希望が断たれてしまったという感覚が有権者の中にあると思います。振り返ってみて、旧民主党政権はどういった経験だったと思いますか。

前回はほとんどのメンバーが初めて政権にチャレンジしたので、良くも悪くも高揚感がありました。有権者の期待も大きかったと思います。その期待に応えられなかったことは率直に反省しています。一方で、情報公開や政治のオープン化、教育や福祉に力を入れたことなど、あの時代に前に進んだこともあり、そうした功罪をしっかりと受け止めて次の政権に備えたい。

次は政権を取った時に実現する政策の優先順位や、これだけ問題が山積の長期政権のゆがみをどう正すのか、具体的な政権構想が重要になってきます。今の共同会派には、実際その3年3ヶ月、政権を担わせていただいたメンバーがいます。ある意味で、その経験を活かすのが、あの時ご期待いただいた皆さんに対する責任だと受け止めています。

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日本には潜在的な力がある——「支え合う安心」「豊かさの分かち合い」、そして「責任ある充実した政府」が政権交代のテーマ

——政権交代のテーマは何になると考えていますか。

「支え合う安心」「豊かさの分かち合い」、そして「責任ある充実した政府」です。1年間に生まれる子どもの数はどんどん少なくなり、超高齢化と人口減少が進んでします。同時に、消費税率が引き上げられたにもかかわらず、医療費の窓口負担を引き上げようとする動きが伝えられています。格差が固定化し、老後の不安は高まるばかりで、明日への希望を見出せない人が増えています。

アベノミクスの限界は明確だと思います。しかし、限界が見えてきたからこそ、何をどう変えていくのかが明らかになってきているんです。今、政治を変え、新しい道を切り拓ければ、日本にはまだまだ潜在的な力があります。その潜在力を引き出すのが、この3つのポイントです。

——それぞれについて詳しく聞かせてください。

第一に、「支え合う安心」です。人口減少は続いていますが、潜在的なものも含めれば、子どもを産み育てたいと望む方々は多いはずなんです。その希望をかなえる社会を作れば一定程度、歯止めをかけることができる。老後、子育て、教育は、かつては個人や家庭に委ねられていましたが、今の日本では、いずれも自分の力だけではどうにもなりません。自己責任論から脱却し、社会全体で「支え合う安心」の仕組みを構築するべき時だと思います。

次に、「豊かさの分かち合い」による経済の活性化です。バブル崩壊後の国内総生産(GDP)の成長率は、2018年までの平均で1%未満。一方で国際収支は一時的なマイナスはありますが、黒字基調が続いています。つまりストックでは豊かだけれども、そのお金が国内でうまく循環せず、豊かさが偏っているから、GDPが伸び悩んでいるんです。

次の日本政治のテーマは、この豊かさをどう公平に分配していくか、みんなで豊かさを分かち合っていくか。これに尽きます。世代や立場を超えて、豊かさを分かち合える仕組みがあれば、必ずこれからの人口減少と高齢化の時代に立ち向かう財産になるはずです。

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最後に、「責任ある充実した政府」です。「支え合う安心」も、「豊かさを分かち合う」ことも、民間まかせの市場原理だけでは実現できません。これは大きな転換なんです。この20年ほどの日本では、「民間でできることは民間で」「小さな政府」といった言葉が、絶対的正義として語られてきました。しかしその結果、本来政治が背負うべき役割まで放棄した、「小さすぎて無責任な政府」になってしまっている。

民営化路線の結果起きた、かんぽ生命の官民癒着問題。大学入学共通テストの民間丸投げ。公営に限定されてきたギャンブルを民間開放しようとしたカジノ。非正規化と定員抑制を進めすぎた挙句、長時間労働が常態化して正規でも希望者が激減し、非正規が集まらなくなっている教職員の世界。常勤職員が不足して大規模災害対応がパンクしている地方自治体。介護サービスの不足や待機児童の問題も、民間だけでは対応できない。

今こそ「小さな政府」幻想から脱却し、必要なことには「責任ある充実した政府」を、そして「民間でできないことはしっかりと官が責任を持つ」「まっとうな政治」を取り戻すことが必要でしょう。

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ジェンダー平等の後退——しかし地殻変動は起きている

——昨年12月には、世界経済フォーラム(WEF)による「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」ジェンダー・ギャップ指数が発表され、日本は過去最低の121位でした。女性の社会的な生きづらさに対して解決を望む声が高まっています。枝野代表は政治家になってから25年以上、選択的夫婦別姓の実現を訴えてきましたが、今の状況をどう見ていますか。

ジェンダー平等に向けた動きが大きく後退しているように見えるのは否定はしません。しかし、一方で、大きく前進できる準備がかなり整ってきていると思います。同性婚を求める動きが活発化しています。何十年も前から訴えられてきた選択的夫婦別姓が、いまだに実現されないのはおかしい、という声が高まっています。昨年、パンプス着用強制に反対する#KuTooといった運動が一定程度の広がりを見せました。

国民生活の足元では、地殻変動が起き始めているんだと思います。それを政治としての結果に、一つでもでも二つでもつなげていきたい。大きな地殻変動をみんなが実感できる状況まで、もうちょっとだと思っています。

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「さまざまな当事者の声を聞く政治」は、時代の必然

——ジェンダーの問題だけでなく、昨年は英語の民間試験導入に対して高校生が反対するなど、さまざまな当事者が声を上げ始めていると感じます。

今までの政党と有権者とのつながり方と、一段違う次元に行きたい、という思いを持っています。昭和の時代のように、様々な業界の利益団体や町内会といった伝統的な団体が民意を取りまとめて政治を動かす仕組みでは、こぼれ落ちてしまう声があります。一人ひとりの生活が多様化、複雑化していますから。これまでのやり方も尊重しながら、同時に新しい声の受け止め方も模索したいんです。

だとしたら、時代的な課題にきちんと反応するためには、従来政治的な影響力をあまり持っていなかったけれども、政治にとって一番大事な情報や声を持っている、社会課題ごとのNPOや個人の声が届きやすい仕組みを作っておかねばなりません。それに挑戦するのが立憲民主党の使命だと考えているくらいです。これは政党にとって新しいチャレンジではあるけれども、時代の必然なんだと思います。

たとえば、おととし、昨年と続けて障がい者団体や国会・地方議員が交流する障がい当事者の方々を招いたフェスを開催しました。障がい者問題とひとくちに言っても、様々な人が様々な社会活動をされていると気づきがあります。そうすると全然関係ない政策テーマを扱う時でも、「この政策だとこういう障がいを持つ人が困るな」といった気づきに必ずつながるんですよね。他にも立憲民主党は子育て世代や女性、非正規雇用の方々など、さまざまな当事者と直接つながる仕組みをつくろうとしています。

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——最後に、立憲民主党のパートナーズの皆さんや有権者の皆さんにメッセージをお願いします。

臨時国会での大学入試問題では、高校生を中心に当事者のみなさんが声を上げてくれた。それにわれわれが反応したことで、与党にも大きなプレッシャーを与えられて、事実上の中止に追い込むことができました。声を上げれば、政治は変わるんです。

自分たちが動くことによって明るい未来を作れる、選べる。私たちは明るい未来を一緒に作っていけるようなメッセージと政策を提供し続けていきたいと思います。

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枝野幸男 YUKIO EDANO

1964年生まれ。衆議院議員(9期、埼玉5区)。弁護士(第二東京弁護士会)。1993年に初当選し、日本新党の新人議員として薬害エイズの問題に関わる。その後、民主党時代には政調会長、幹事長、現行制度下で最年少での官房長官などを歴任した。2017年10月に「国民の声に背中を押されて」、たった一人で立憲民主党を結党。現在、立憲民主党代表。

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