持続可能な社会のために、いま政治がプラスチック削減に取り組むべき理由──グリーンピース・ジャパン×堀越けいにん衆院議員

2020年4月19日

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昨今、海を漂うプラスチックによって命を落とす動物たちの写真が衝撃を与え、海洋プラスチック問題への関心が高まっている。しかし、プラスチックが海洋汚染だけでなく、気候変動や健康被害も引き起こすと言われていることをご存知だろうか。

日本は一人当たりの容器包装プラスチックごみ発生量が世界第2位、発展途上国へプラスチックごみを輸出した量は米国に次いで2位と、大きなインパクトを持つ。日本が大量生産・大量消費の使い捨てモデルを見直して、循環型社会を目指すのは急務だ。

プラスチック問題にはどんな広がりがあるのか? 政治がすべきことは何か? 環境問題の調査や政策提言に取り組む国際環境NGOグリーンピース・ジャパンのプラスチック問題担当・大舘弘昌さん、気候変動/エネルギー担当・関根彩子さんと、立憲民主党環境部会の堀越けいにん衆議院議員に、語り合ってもらった。

※この鼎談は2019年11月に行われました。

海洋を汚染しているプラスチックごみ。生態系や人体への影響は?

堀越)まず、プラスチックごみの現状と課題について、改めて教えていただけますか?

グリーンピース・大舘)プラスチックごみは、毎分トラック1台分も海に流れ込んでいると言われています。プラスチックごみに首が挟まったまま成長したアザラシや、餌のクラゲと間違えてビニールを食べて餓死するウミガメやクジラなど、多くの生き物がその犠牲になっています。

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左から関根さん、大舘さん、堀越議員

堀越)生き物の痛々しい姿がインターネットなどで拡散する時代になり、プラスチックを問題視する声が高まっていますね。

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大舘)はい。そしてプラスチックは砕けると、もっと厄介なのです。ベランダにある洗濯ばさみがボロボロになるように、プラスチックごみは劣化して細かくなります。

化粧品のスクラブなど人工的なマイクロビーズも海に流れていて、生産を禁止している国もありますが、日本では企業の自主規制に任されています。これら5mm以下のプラスチックごみを一般に「マイクロプラスチック」と呼んでいます。WWF(世界自然保護基金)の調査によると、それは魚介類や飲料水にも含まれ、わたしたちは1週間にクレジットカード1枚分(約5g)のプラスチックを体内に取り込んでいます。

堀越)毎週1枚! そう言われるとすごくリアルに感じられます。ただ、マイクロプラスチックの人体への影響は未解明だそうですね。

大舘)はい。マイクロプラスチックが有害物質を吸着し、それを食べた魚や鳥の体内に毒が移行した例は報告されていますが、人体への害は調査中です。しかし予防的観点から対策は必要だと思います。

グリーンピース・関根)吸着する有害物質の中には、危険なため今では使用されなくなった有害物質もあります。海洋や自然界に残留しているんです。

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廃プラ輸出大国・日本。「高リサイクル率」の影に隠れた途上国の被害

堀越)とはいえ、プラスチックは輸送コストや利便性、衛生管理の面でも優秀だから、使用量は世界で爆発的に増えています。日本は、廃プラスチックの輸出大国でもありますよね。

大舘)そうですね。以前は先進国が国内でリサイクルしきれない廃プラスチックを中国が多く引き受けていましたが、環境汚染が深刻になり中国政府が2017年に輸入を中止したのです。日本も当時、年間約900万トンの廃プラスチックのうち150万トンほどを輸出していました。

その後、行き場を失った世界のプラスチックごみは、マレーシアやインドネシアなど東南アジアを中心に分散して輸出されています。

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大舘)そこで、グリーンピースはマレーシアを調査しました。処理しきれないごみが道端で燃やされていたり、即席の埋め立て場近くの養殖場でエビが全滅していたり、現地の施設で不十分な焼却が行われて近隣の住民が様々な健康被害を訴えるなど、かなり実害が出ていました。

日本の廃プラ輸出量は米国に次いで2位。一人当たりの使い捨てプラスチック使用量でも日本は世界2位です。世界のプラスチックの用途の4割近くが商品パッケージだと言われ、日本でも同様です。ペットボトルを含むパッケージ類は使い捨てが多い分野ですし、処理しきれていない現状を見ても、この分野こそ、今すぐ議論が必要ではないかと思います。

堀越)日本のプラスチックのリサイクル率は高いと言われ、海外に及ぼしている影響については、あまり知られていませんね。

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大舘)リサイクル率だけ見れば80%以上ですからね。でも、回収された廃プラスチックを燃やした熱を温水プールに利用するような「サーマルリサイクル」が約60%を占めるわけです。これは日本独特の用語です。「リサイクル」と言っても資源を燃やし、循環させていないわけですから。

細かくして再成形する「マテリアルリサイクル」は23%ほど。それも繰り返すと品質が落ちるため、たとえば回収したペットボトルのうちペットボトルに再生できるのは10%程度です。そして、化学原料まで分解して活用する「ケミカルリサイクル」が数パーセント。後は、埋め立てや単純焼却。これが、日本のリサイクル率の内訳です。

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プラスチックが温暖化を進めてしまう

堀越)プラスチックはほぼ燃やされているのが現状で、当然、温室効果ガスが出ていると。気候変動問題とも密接に関わっているわけですね?

関根)はい。世界の気温は早ければ10年後に、産業革命前に比べて+1.5℃となり、暖かい海のサンゴの9割が死滅すると言われています。長期的な傾向として、猛暑や豪雨といった異常気象は、温暖化により深刻化していると言われています。日本では2019年の豪雨や台風被害による保険金の支払い額が東日本大震災を超え、経済的損失も相当な規模に達しました。

プラスチックの主原料である石油は、採掘時を含め、生産段階から多くの二酸化炭素を発生させます。そして、世界で生産される石油の6%がプラスチックになります。

そのプラスチックが生産から廃棄までのライフサイクルを通して、世界で石炭火力発電所約180基分の温室効果ガスを発生させています。日本にある石炭火力発電所92基(2019年8月時点)より多いですから、その規模の大きさがわかります。これらを考え合わせると、プラスチックが気候変動に与える影響は非常に大きいと言えると思います。

また、日本は最も温室効果ガスを排出する石炭火力発電所を増設し、海外への輸出も進めています。先進国は2030年までに、二酸化炭素排出量を半減させることを求められているにも関わらず、です。

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リサイクルや素材の代替だけに終始していては、循環型社会へと変わるチャンスを逃してしまう

堀越)日本政府は2019年のG20で「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減する」と宣言しました。グリーンピースさんのご見解は?

大舘)宣言がなされたこと自体は一定の評価をしています。しかし、具体的な数値目標がなく法的拘束力のある規制につながらなかった点が、非常に残念でした。期限も遠いと感じます。G20前に日本政府が出した「プラスチック資源循環戦略」には、2030年までに使い捨てプラスチックを25%削減するとありますが、起点となる年が書かれていません。

循環型社会の実現のために政治ができることは、もっとたくさんあるはずです。リサイクルや素材の代替に終始していては、チャンスを逃します。手始めとなる「レジ袋有料化」にしても、除外項目があります。このレベルの対策では明らかに、目指すべき地点にはたどり着けません。

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堀越)レジ袋については、立憲民主党も先日、除外を設けず一律に有償化して、消費者に広く知ってもらう意味でも、省令ではなくて法律でしっかりと規制をかけていくべきだと申し入れをしたところです。

たとえば、バイオプラスチックが25%含まれていれば無償で配布していい、と緩めてしまうと、一部の大手コンビニエンスストアなどは導入済みのレジ袋を配れてしまう。まるで何も変わりません。

EPR(拡大生産者責任制度)やインセンティブで、使い捨て経済からサーキュラーエコノミーへ

堀越)ちなみに、私はマイバッグとマイボトルを持ち歩いていますが、マイボトルにドリンクを注いでくれる店舗は、まだまだ少ないですね。ドリンクバーにある炭酸やホットやアイスが選べるサーバーから自分で注いで電子マネーで支払える仕組みがあったら、非常に便利だろうと思います。

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大舘)グリーンピースも東京都に給水器の増設を求めるキャンペーンを行いました。街中でマイボトルに給水できれば、無料ですし、ごみも出ません。もう一つ、大切なのが企業の変革です。使い捨てプラスチックに頼って成長してきた世界の多国籍企業のビジネスモデルの転換を、政策で促せるのではないでしょうか。

たとえば、プラスチックの生産者が回収や再利用の責任を持つEPR(Extended Producer Responsibility:拡大生産者責任制度)を導入する。あるいはアイデアベースですが、リデュースやリユースに取り組む企業にインセンティブが生じる制度も考えられるかもしれません。

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堀越)「サーキュラーエコノミー」という概念がありますよね。物を廃棄せず分解してまた別の物を作るサイクル(循環)を前提として、環境にも経済にも持続可能性を持たせる新しい経済活動の考え方です。日本も経産省が導入を進めるべきですが、まだ大量生産・大量消費の経済から抜け出せていません。

SDGs(2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」)には、貧困や気候変動、経済成長など17個のゴールがありますが、全てはつながっていて、その根底には自然資本があります。健全な自然環境がなければ経済発展も、暮らしや生活も存続し得ない。この理念を理解していれば、今のような政策にはならないのではないでしょうか。

現在は外務省がSDGsを担当していますが、しっかり取り組むなら、各省庁に横串を刺す形でSDGsの組織を作らなければいけない。MDGs(2001年に採択された「ミレニアム開発目標」)の反省を込めた「誰一人取り残さない」という目標を達成するには、日本で私たちが享受している豊かさが、誰かの犠牲の上に成り立っていたらいけないのです。それを改善するのが本来のSDGsです。

日本の廃プラスチックが途上国の環境や人々の健康を害して財産や人権をも奪っている。プラスチックの根深い問題を正しく発信して、皆で立ち上がろう!と促すのが本来の政府の役割だと思います。

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「プラごみ出さない」が誰にとっても理想的な理由って?

大舘)本当にそうですね。現実を知り、想像力を働かせることが大事です。最近、ごみや無駄を出さない社会を目指す動きも再注目されて、国内外で動きがあります。

グリーンピースでは今、世界の好事例を集めています。ニュージーランドのある店では冷蔵システムをミストに換えて、保湿しつつ野菜を裸で売っています。チリでは米や洗剤の量り売りの店が急増しています。パッケージがない分だけ安く、低所得の家庭でも必要な時に必要なだけ買えるから人気なのです。

今後は、そこにイノベーションや新技術が組み合わされ、さらに面白いことになっていくでしょう。日本でも新たなビジネスが生まれて世界に出ていけるよう、政治の力で後押しできたら良いですよね。

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堀越)そうですね。日本では、ここ数十年でペットボトルが爆発的に増え、ごみを出さない流れに逆行しています。

大舘)容器包装リサイクル法が制定される1995年以前は、500mlのペットボトルは存在しなかったですからね。

立憲民主党は党内でペットボトル飲料を飲まない取り組みを始めたそうですが、議員さんやスタッフの皆さんの意識に変化はありますか?

堀越)確実にあると思いますね。「言うならやろう」というシンプルな発想で私が提案したのですが、それ以来、サーバーでマイボトルに給水していたら他の議員に「それいいね」と声を掛けられたり、会議でペットボトル自粛を呼び掛ける場面に出会ったりしました。

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大舘)いい話ですね。必要のない使い捨てプラスチックなどは大幅に減らし、プラスチックに頼らなくていい部分は新しい技術や仕組みを入れて、どうしても必要なプラスチックは、しっかりリサイクルする。この最終段階を目指す流れを作る必要があります。

堀越)自治体にとってプラスチックの回収処分はコストです。耐用年数がかなり過ぎた焼却炉を使っている自治体も多く、高カロリーなプラスチックを燃やすと炉が傷むこともある。輸出先がなくなった場合を考えても、国内の廃プラスチック処理能力には限界があるのですから、プラスチックごみは出ないことが理想です。

企業も、EPRで容器包装処理に大きなコストがかかるなら、より環境負荷が少ない物づくりに注力するでしょう。リユースで提供して回収・再利用したほうがコスト的に安いのなら、それも広まるはずです。消費者教育も同時に必要なので、消費者庁との連携も大切になります。

容器包装リサイクル法の改正や、EPRの導入、あとはプラスチック生産量を減らすためペレットそのものに課税するなど、政治からのアプローチはたくさんありますね。

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製造側も消費者も。多方面からの意見を聞いて、プラ削減の議員立法をしたい

堀越)日本のプラスチック対策には、世界から厳しい目が向けられています。社会全体でプラスチックの総量を減らしていくための枠組みが必要です。

大舘)最近の内閣府の世論調査では9割近くが、プラスチックごみ問題に関心を持っています。グリーンピースの給水機を増やすキャンペーンを知って、自分たちが通う大学の学長に給水機設置を要望したり、学内の食堂に取り組みを提案したり、積極的にアクションを起こす若者たちが確実に増えています。

そして、抜本的な解決策を政治に期待する声が多いのも事実です。今後、市民の声をどのように取り入れていくのでしょうか?

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堀越)この対談もその一環ですが、これから多くの団体、生産者、国民の皆さんにヒアリングを重ねたいと思っています。プラスチックを規制すれば毎日の生活に影響が及びますから、多方面からご意見をしっかりいただいた上で進めなくてはなりません。

タウンミーティングなどを通じて、ワークショップ形式で皆さんからアイデアをいただき、どこまでだったら許容できるのか、といった細かなやり取りもしながら、法案の要旨を一緒に作っていけたらと願っています。

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対談場所を提供いただいた群馬県高崎市の「BIOSK」前で、BIOSK店主の櫻井正喜さんと。有機野菜、オーガニック食品販売とカフェを手掛けている