共同会派厚生労働部会は2日、山梨県石和町の健康科学大学産前産後ケアセンター「ママの里」を訪問。山梨県産後ケア事業を視察しました。共同会派の阿部知子、初鹿明博、早稲田夕季、大西健介、中島克仁各衆院議員らが参加。健康科学大学常務理事の金森正男さん、産前産後ケアセンター長で助産師の榊原まゆみさん、事務長の金子辰男さんの3人にご対応いただき、施設見学とヒアリングを合わせ1時間半の駆け足での視察でしたが、充実した内容となりました。

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◆山梨県産後ケア事業 

 「ママの里」は石和温泉のある山梨県石和町に2016年2月に開所。山梨県と県内27市町村の連合体である産後ケア事業推進委員会が事業実施主体となり、公募により学校法人健康科学大学が事業を受託し運営している民立民営の施設です。育児に不安を感じている、原則産後4カ月までの赤ちゃんとお母さんが対象で、利用料は1泊34,500円のうち本人負担は6,100円。残りの28,400円を県と市町村で折半ですが、一部の市町村は本人負担分を全額助成しているそうです。
 原則は3泊4日ですが、市町村の裁量で最大6泊7日まで可能。24時間常駐の助産師が、一人ひとりに合わせて専門的なケア(母乳やミルク、抱き方などの育児技術や疲労回復)を提供してくれます。中庭には足湯もあって石和温泉ならでは。ゆったりした個室、温泉水のジャグジーバス、滋養のある食事等々、産前産後のお母さんが安心して身体を休めることのできる環境が整っており、「満足度99%」にも納得しました。

◆山梨県産前産後電話相談事業

 開所前の2015年1月から、全国に先駆けて助産師による24時間体制の電話相談事業を実施。山梨県の委託事業となっています。相談者のほとんどは産後のお母さんであり、子どもの夜泣きやしつけ等の基本的な内容に加え、夜間はDVや虐待など深刻な相談も少なくないそうで、そうした場合は適切な相談窓口につないでいるとのことです。ちなみに相談件数は16年度2,073件、17年度2,112件、18年度1,841件でした。

◆自主事業

 県の委託外の自主事業にも積極的に取り組んでおり、自費宿泊や産前妊婦宿泊の受け入れ、日帰りケア、ベビーマッサージクラスなどの健康教室、薬膳講座、産後授乳クラスなどの多彩なマタニティメニューで利用者の増加を見込んでいます。

◆経営状態

 公益法人のため、収益事業による収入はすべて教育還元目的で文科省の認可を受けています。県の試算により利用率80%で黒字になる見込みを立て、2020年に8割を目指す5年計画を進行中。現状は16年22.3%(目標の55%)、17年32.7%(目標の60%)、18年43.5%(目標の70%)、19年11月末現在で37%(目標の75%)と、2020年の8割はかなりハードルが高い状況。18年度末の累積赤字は約8,200万円。

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◆現行運営の問題点と要望

1.運営費の財源は利用料収入のみ
 ⇒ 利用人数に左右されるため、安定した経営が成り立たない。
2.出生数減少
 ⇒ 2015年当初の出生数6,000人。その10%を利用者として想定したが、年々母数が減少(18年は5,500人)
3.運営費の助成制度なし
 ⇒ 人件費[助産師15名(常勤3名、非常勤12名)]、物件費、維持費等
4.継続的な安定経営に向けた支援制度
 ⇒ 赤字の場合の補填制度、特に立ち上げ時から軌道に乗るまでのスタートアップ助成金が必要
5.課税免除等の優遇措置なし(消費税、固定資産税、法人事業税、新設の不動産取得等の非課税措置)
6.母子保健衛生費国庫補助金の対象は市町村のみ
 ⇒ 他市からの里帰り出産等
 ⇒ 都道府県も対象に
7.利用申し込みに係る母親の負担軽減
 ⇒ 市町村により手続きに温度差
 ⇒ 母子保健の観点からだけでなく、少子化・人口減少対策として誰でもいつでも使える制度に
 ※「生んでくれたごほうび」でよいのでは
8.個人負担額の軽減化(一泊6,100円×3泊=18,300円+昼食代)
 ⇒ 負担感が強く敬遠(お母さんたちが自分のために高額なお金を使うという罪悪感)
9.増えている多胎や兄弟同伴宿泊利用者への加算
 ⇒ ケアの対象人数に応じてスタッフを増員する必要
10.宿泊型ケアは産後4カ月までに
 ⇒ 子育てのスタート地点でいかにサポートするかが重要

 1、3、4に関しては、阿部議員から省令の改正に向けた検討の中で、次世代育成支援対策施設整備補助金の活用が挙げられていると報告、運用拡大を要請したいと述べました。

 7に関連して、制度自体の認知度が低く制度を知らないお母さんへの周知が課題だと訴えがありました。これは市町村側の問題意識が希薄なため、啓発・周知が不十分と思われ、初鹿議員から母子手帳にパンフレットを挟んだり、出生届を出すときにあらためてアナウンスしてはどうかという意見が出されました。
 また、利用申し込みは市町村を通して行われますが、わざわざ窓口に出向かないと申請できなかったり、実家が近くにあると対象外とされたり、市町村によってその姿勢には温度差があるとのことで、制度の趣旨が理解されていないのではないか。まず職員への研修が必要ではないかと感じました。

 一方で27市町村それぞれに財政状況や出生率も違い、予算の優先順位も違うため、なかなか踏み込めないという実情の説明がありましたが、この制度のそもそもの目的は人口減少に歯止めをかけることにあったことに立ち戻り、市町村にはもう一歩、出産・育児に対する支援を手厚くしてほしいという意見がありました。

 また、10については大西議員から法制化の過程で論点になったと説明。産後2週目時点での妊産婦のうつや自殺が最多という厚労省研究班報告もあり、1カ月目、4カ月目がキーポイントであることから、産後ケアに特化した宿泊型の施設に関しては産後4カ月までに集中的にサポートする必要性が共有されました。

◆まとめ

 母子保健法の一部改正案は成立しましたが、実施基準等の省令はまさにこれから。今日伺った要望事項をしっかりと反映させるべく、引き続きしっかりと取り組むことを約束しました。

 「ママの里」の廊下にはお母さんたちが安心して楽しく子育てができるように、「ママも休もっか。」のポスターが。ハイリスクの母子だけでなく、出産という大仕事を果たしたお母さんと赤ちゃんが、まずゆっくり身体を休めることができ、家庭が果たせなくなっている子育ての文化、生活の文化を、医療的ケアだけでなく生活レベルで伝えてくれるところ、それが産後ケアセンターの役割なのだと改めて思いながら「ママの里」を後にしました。