日本が再生していくためのエネルギー政策を  自然エネルギー財団事業局長・大林ミカさん×党エネルギー調査会長・近藤昭一衆院議員

2019年7月2日

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 立憲民主党が掲げる主要政策の1つである「原発ゼロ」。政策コミュニケーション局では3月、立憲パートナーズの皆さんを対象に「原発・エネルギー」に関するウェブアンケートを実施しました。そこで見えてきたのは、「脱原発」「自然エネエル―推進」を支持する一方、「自然エネルギー社会は本当に可能なのか」という不安を持っている方が多いという事実です。
 こうした結果を受け止め、世界の自然エネルギー事情と、日本で自然エネルギー社会を実現するために進むべき方向性等について、自然エネルギー財団事業局長の大林ミカさんを迎え、党エネルギー調査会長の近藤昭一衆院議員が話を聞きました。

【立憲パートナーズアンケートより】

Q1 あなたは原発の再稼働についてどう思いますか。あてはまるものを1つお選びください。

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Q5 「原発ゼロ基本法案」は、全国約20カ所でタウンミーティングを開催し、市民と議論しながら法案を形にしていきました。「原発ゼロ基本法案」のように、市民との議論を重ねながら法案をまとめていくような取り組みを今後も実施する場合、あなたは参加したいと思いますか。あてはまるものを1つお選びください。

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Q6 今後の原発のあり方について、あなたの考えにもっとも近いものを1つお選びください。

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Q9 再生可能エネルギーについて、何か不安に感じていることはありますか。あてはまるものをすべてお選びください。

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「自然エネルギーの今」が届いていない

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大林:ここで回答されているのは立憲パートナーズの方なので、立憲民主党の政策に非常にシンパシーを持たれている方が対象だと理解していますが、再稼働反対の方が90%以上いらっしゃるというのは予想以上で、これは非常に大きい数値だと思いました。一般的に原発の再稼働に反対の世論は約6割程度ですが、3割も多い。昨年、「原発ゼロ基本法案」の策定に当たって各地でタウンミーティングを開催した、こうしたプロセスに「積極的に参加したい」「できれば参加したい」という方が8割以上に上るのは、エネルギー政策を作る過程のなかに「自分の声を反映させたい」という思いが強くあるのでしょう。
 一方で、そうしたエネルギー政策にかなり関心が高いと思われる方々にも「自然エネルギーの今」が届いていない、自然エネルギーの普及に関してはまだ誤解があると感じます。
 私がエネルギーに関する活動に携わってもう27年になりますが、こういった時代が来るとは思わなかったくらい、世界ではすさまじい勢いで自然エネルギーの普及が進んでいます。気候変動に立ち向かう自然エネルギーの最先端の国々では、小さな国に限らず比較的大きな国でも「100%自然エネルギー」を目標に掲げている。スペインなどがそうです。もし単独の国としてカウントするなら世界第5位の経済規模を持つ米国カリフォルニア州も同じくです。これは、政策を作る側も市民も自然エネルギーが力をつけてきているのを実際に見ているからで、国や地域の目標になるということはそこに人々の支持が当然あるということです。


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近藤:世界的に見れば、いわゆる化石燃料を産出する国よりも産出しない国の方が多い。自然エネルギーは、そもそも燃料費がかかりませんから、成長という観点を第一に考える日本の経済界はなぜもっと自然エネルギーに力を入れないのか。これでは世界の潮流から置き去りにされかねません。

大林:いまや、むしろ化石燃料を産出する国が自然エネルギー導入に非常に熱心で、代表的なのがサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)です。中国は過去10年、自然エネルギーの導入の世界のトップを走っています。まさに、自然エネルギーが世界の地政学も変えつつあるのです。
 この10年間で自然エネルギーのコストは大幅に低下しています。太陽光パネルのコストは8割低下、さらに今後5年間で6割下がると予測されています。高いと言われてきた洋上風力や集中型の太陽熱発電も安くなってきた。エネルギーの中で、コストが上がっているのは原子力だけです。

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近藤:そういう現実があって、そこを広く発信しているにもかかわらずなかなか国としての施策は進まない。政府の予算を見ても、エネルギー関係でいうと原発事故後の除染など復興関連や、いまなお原子力、あるいは水素などが多くを占め、自然エネルギー関係のものはあまり盛り込まれていません。「高い」と言いながら自然エネルギー推進を補助する予算をつけていない。世界の潮流と違いますよね。

大林:日本でも当然コストは下がってはいますが、海外に比べるとまだまだです。ドイツのように日本よりも日照条件が悪く、しかも労働力が高いところでも太陽光や風力発電のコストが下がっているのは、技術的な革新が起きているということです。ではなぜ日本ではコストが高いのかということは政府もきちんと分析しきれていません。

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 自然エネルギー財団の2016年の研究で明らかになったのは、建設費用が非常に高いということ。日本の場合、2012年の固定価格買取制度(FIT)導入が自然エネルギーによる発電を事業規模で展開する初めての契機となったため、大規模発電設備の建築技術が未熟だった。技術開発を進めていくためには、将来も長期的に自然エネルギーを増やしていくことを示すこと、政府の意欲的な導入目標値が非常に重要です。そういった強いメッセージが発信されて初めて産業はそこに投資ができる。新しい技術を開発して、建設のコストを下げるという循環につながっていくのだと思います。今夏発表する新しいスタディではさらに発注方法などにも切り込んでいますが、分析とそれに対する対応、という作業が必要です。
 日本の場合、固定価格買取制度を導入したことで当時500万キロワットだった太陽光発電が7年間で5500万キロワット、55ギガワットになった。一方で、風力発電は固定価格買取制度前の340万キロワット、3.4ギガワットに対し、いまだに380万キロワット、3.8ギガワットですから非常にバランスが悪い。

 最近では逆転現象も出ていますが、一般的には風力発電は太陽光より安い電源なので、太陽光との導入差がこれだけあるというのは、やはり政策的なおかしさがある。日本の商業風力発電は90年代半ばから始まっていますが、25年間、国内で市場を拡大開発できなかった。発電事業をしたくても、送電線への連系を厳しく制限されてきた。日本はまだ完全な発送電分離を実現しておらず、送電線の独立した公正な運用ができていないことが原因にあると思います。

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大林:海外で自然エネルギーのコストが下がっている理由の一つに、固定価格買取制度で十分な産業競争力を培った電源が、入札制度へ移行している、ということがあげられます。日本政府も今そういった政策導入について議論をしていますが、慎重に進めることが必要です。例えば先ほどの風力の場合のように、発電事業そのものが同業他社(日本の場合は大手電力会社)が所有する送電システムの状況に左右されるとしたら、事業を拡大するのが難しいのは当たり前です。日本では、他国に比べて、電力システム改革が遅れているので、自然エネルギーが、公正な競争をできる環境にはまだありません。まずは、法的分離でよいので、発送電分離を完了し、発電事業者の意向が送電事業や小売り事業に影響を与えない環境を作ることが必要です。そして、原子力や石炭火力など、系統運用上柔軟性に欠ける電源を優先するのではなく、自然エネルギーをまず発電させるルールが必要です。そして、国の意志として、今後も継続的に制度を見直しつつ、自然エネルギーを確実に増やしていくのだという姿勢を明確に示す必要がある。
 国の「エネルギー基本計画」など、もうすでに達成が目の前に迫る目標値を掲げたままでは、今後も自然エネルギーを拡大するというシグナルを市場に送ることはできず、投資家は事業に投資できず、事業家はリスクを負って事業を開発することができず、技術革新は起こらず、競争市場は成り立たちません。

原子力と自然エネルギーに対する世界の投資

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出典:Mycle Schneider, 2018

送電事業が独立できるシステムの確立を

近藤:最近では、産業界のなかでも、いわゆる原子力産業や発電事業者ではなく、電気を利用して産業を動かしていく側は、自然エネルギーを推進する方向に変わりつつある。ただ、まさに政府の長期的な計画のなかに、自然エネルギーを進めていくしっかりとした目標、その目標への道筋が見えません。そうすると、事業として起業すらできず銀行も融資をしてくれない、産業として動いていかない。そんなブレーキがかかっています。

大林:日本の場合、戦後、電力会社が地域独占で、しかも発電と送電と販売がすべて一つになった形で需給コントロールすることになりました。その概念が非常に強く、発電と送電と配電、特に発電の中での自由化が非常に遅れましたし、送電は当然公共財として独占ですから、販売、小売りの自由化も2016年までできなかった。そういう意味では電力会社の地域独占の原則が非常に強く出ていて、地域で電力の需給調整を行うことが義務になっています。本来であれば地域間でやり取りをすることによって効率的な発電所の運用をしたり、自然エネルギーをもっと入れることができるはずですが、そうなっていません。
 北海道は昨年ブラックアウトしてしまいましたが、本州から北海道への連系線のシステムが古く、停電したところに電気を送れるような方式でなかったことも、最終的に域内全面停電してしまった理由の一つです。エネルギーセキュリティを考えるなら、本州から北海道のバックアップも重要ですし、北海道から本州へ自然エネルギーの電気を送るということも考えられます。

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大林:日本がかつて、地域独占の電力会社で集中型の発電設備を作っていったことで経済発展を遂げたのは事実です。しかし今は、巨大な発電所ではなく、分散型の発電所を各地域に作り、全体をつなぎ、もっと柔軟に運用していく技術が発達しています。自然エネルギーのコストも、それをつなぐ送電技術も安くなっている。そこに情報通信の技術、ITの技術が入り、実際の発電と送電の運用と、電気を売り買いする市場とを、すべてつなぐことができるようになった。供給側だけでなく、需要側からも需要を削減したり、オンサイトで発電したり止めたりできるようになった。海外では、電気市場と分散型の発電設備がITでつながり柔軟に運転されている。技術に優れた日本がそれを導入することは確実に可能です。

自然エネルギーで地域経済の再生を

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近藤:立憲民主党が「再生可能エネルギーの推進」を掲げる理由として、原発ゼロの早期実現やコスト的にも急速に下がっていること、自然エネルギーの推進により地域に所得と雇用をもたらすという、地域再生の側面などがあります。例えば、北海道では自然エネルギーのポテンシャル、能力はすごく高い。風力発電などの会社を興すことによって雇用も生むし、利益を上げれば自然エネルギーが地域の発展につながる。自然エネルギーを推進していくことは大事だと思っています。
 ところが、いまは発電したエネルギーを送電線に接続してもらえないなど、せっかくポテンシャルがあっても活かされていません。事業として起業さえできず、銀行も融資してくれない。だから産業として動いていかない。こうした障壁を一つひとつ変えていき、エネルギーの地産地消を推進していきたいと思っています。

大林:地域の企業が自然エネルギーを導入していく、あるいは自ら産業を興していくことで地域の財産になっていくことも大きな動きになります。今、供給側ではなく、需要家レベルでも、エネルギーを使う企業として、自然エネルギーの利用を進めていないことがビジネスにとってマイナスになると考え、自ら使うエネルギーを100%自然エネルギーにすることを宣言する大企業や自治体、団体が増えています。米国では、トランプ政権は気候変動対策に後ろ向きですが、代わりに州や企業が率先して取り組んでいる。これと似たような状況が日本国内でも起き始めています。日本の場合は自治体の権限がなかなか発揮されていませんが、例えば東京都では政府に先駆け、日本で唯一二酸化炭素の排出量取引を取り入れています。2050年のカーボンニュートラル(脱炭素)も宣言しています。その他、長野県や福島県など、自然エネルギー100%という目標値を掲げる自治体も現れている。国が遅いならそういった形で地域から、あるいは企業レベルの取り組みが進むことで政策を転換してくことができるのではないかという希望はあります。

近藤:やはり一番のネックは電力系統の問題だと感じます。安くはなってきたとは言え、設備投資にはかなりのコストがかかる。ここを解決していくにはどのような方法があるのでしょう。

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大林:例えば、日本では系統を全て揃えると10兆円という研究結果があります。これ自体どういう根拠で出てきた数値か公開が必要ですが、それを前提としても、流れる電気量を考えると、そんなに高くはない。1キロワットアワーあたりのコストはだいたい0.1円とか0.2円くらいになる。例えば、政府は2017年、電力システム改革貫徹のために原発事故による賠償・廃炉費用を託送料金に12兆円を上乗せしました。託送料金は電気を流すためにありますが、いまのシステムのままでは託送料金を乗せてもそれを新しく送電事業者が設備投資に使える制度になっていません。
 ですから、まずその仕組みを作るべきですし、そのためには発電と送電をはっきり分けて、発電の利益のために送電事業があるのではないということをはっきりさせることが必要です。電事連(電気事業連合会※の略称)という団体がありますが、送電事業者連合があってもいいと思います。海外では、需給調整をするのは送電事業者の実務です。自然エネルギーが入ってくることによって送電事業の柔軟性の提供や技術革新の必要性など、自らの業務に求められる位置づけがまったく変わり、非常に仕事が活性化したという話を聞きます。欧州では、原子力や石炭の火力発電所を抱えている発電事業者はビジネスが成り立たなくなり、一つは自然エネルギーと送電事業、もう一つは化石燃料と原子力で事業を分けて運営していく、といった傾向が続いています。儲かるビジネスは自然エネルギーと送電事業ということで、多くの投資が流れている。日本も、石炭火力や原子力への投資を止めて、自然エネルギーと送電網へと設備投資を進められる制度を作っていくことが重要です。

近藤:ありがとうございました。われわれも今回のアンケートを見て、多くの皆さんが自然エネルギーの推進を求めていると実感しましたし、逆にまだ理解されていないことについてはもっと提言していかなければいけません。そのなかで系統の問題大林さんがいま指摘されたことを改革していくことが大事だとあらためて思いました。

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大林:立憲民主党には、ぜひ新しいエネルギー政策を作ってもらいたいですね。それは単なるエネルギー政策の話ではなく、日本が再生していくために重要な社会作りだということを含めたものを示してほしいです。
 地域レベルで見たときに、もちろん市町村レベルもすごく重要ですが、自分の周りだけではなくもっと広い範囲で自然エネルギーのバランスをとらえる必要があると思います。いま太陽光発電の開発計画をめぐり近隣住民の反対運動が各地で起きているのは、自然エネルギーの推進そのものが他の政策とバランスが取れていないことによるものです。例えば、環境影響評価もそうですし、手つかずの森に比べて農地の転用はものすごく厳しく規制されているなど、もっと柔軟な制度になるよう、現実的な政策提言をぜひやってもらいたいです。