「このままではいけない。自分たちの未来を変えたい」サーフィンに夢中な若者が、政治を通して気候危機に立ち上がった理由 #FridaysforFuture Kyoto 塚本悠平

2020年3月20日

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3兆8900億円。これが何の金額か分かるだろうか。答えは、2018年の日本における気候関連災害による被害総額。ドイツの有力な環境NGO「ジャーマン・ウォッチ」による試算だ。

今年に入って、オーストラリアでは大規模な山火事と大洪水が発生した。南極では20℃を超える気温を記録。日本でも昨年、巨大な台風が猛威を奮ったことは記憶に新しいだろう。地球温暖化が引き起こす気候変動は、自然環境はもちろん、経済や社会に大きな影響を及ぼしている。気候変動は、もはや「気候危機」というべき段階なのだ。

IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第5次報告書によると、社会的リスクを減らすには、今世紀末までの気温上昇を産業革命前から1.5℃未満に抑える必要がある。しかし現状のまま何も策を講じなければ4℃以上上昇すると見込まれている。

「このままではいけない。自分たちの未来を変えたい」――そんな思いで立ち上がった若者のひとりが、京都大学の大学院で地球環境学を学ぶ塚本悠平さんだ。昨年2月に、世界的なムーブメントと呼応するかたちで「Fridays For Future Kyoto」を立ち上げた。2020年2月に行われた立憲フェスで、衆議院議員の堀越啓仁が聞いた彼の活動について、リポートする。

サーフィンで訪れた海、豪雨に襲われた故郷での衝撃

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塚本さん(右)と堀越議員

塚本さんが環境問題に関心を持ちはじめたのは高校2年生の頃。趣味のサーフィンを楽しむために訪れた京都府京丹後市の海に、真っ黒なオイルが大量に浮かんでいるのを目にした。地元の人に聞けば、沖の方で原油タンカーが座礁したという。

臭いし危ないし、これじゃサーフィンできない。残念に思うと同時に、教科書で勉強していた海洋汚染や環境問題と目の前で起こっている状況がリンクしたんです。それが僕の原体験ですね。

いったん環境問題が気になると、海で目にするプラスチックごみも気になってくる。分からないことを調べていくうちに、環境問題に対して具体的に行動をしていく意志が固まっていった。

そして、おととしの夏。故郷である岡山が、記録的な豪雨に襲われた。街のほとんどが水に浸るほどの被害に見舞われた岡山県倉敷市の真備町に、塚本さんはボランティアとして通った。泥かき家屋の洗浄をしていると、気候変動の脅威がひしひしと伝わってきたという。

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2018年に豪雨に襲われた岡山県倉敷市

気候変動についての科学的なデータや経済損失は、ニュースや論文で目にはしていました。それが、被害の現場に出てみると、気候変動って本当に、今起こっているんだなという危機感を覚えるようになったんです。

Fridays For Future Kyotoを立ち上げ、マーチを敢行するが…

気候変動は、自分たちの未来を脅かす危機だ。そう感じる若者たちが行動を起こし始めている。スウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリさんたちが国会議事堂前で行った学校ストライキは、「Fridays For Future」という呼び名で世界中に波及。2019年3月には、初めての「グローバル気候マーチ」が行われた。世界で一斉に、同じ日に学校を休んでマーチに参加し、気候変動を止めるべく声を上げることを呼びかけるアクションだ。

塚本さんはこの活動に共感し、同年夏に、Fridays For Future Kyotoを1人で立ち上げた。すぐに仲間を集め、2カ月後には京都市内でマーチを展開。そこで塚本さんが感じたのは、世界との意識の差だと言う。

京都のマーチには100人ほどが集まりました。でも、同じ日にベルギーやオーストラリア、イギリスでは数万人規模が集まったんですよ。日本の若者は政治への関心も気候変動への危機感も薄いんだなぁと痛感しました。

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もっと世界の動きをリアルに感じたい。気候変動に対するアクションの最前線で学びたい。そんな思いを胸に秘め、塚本さんは2019年12月にスペインのマドリードで開かれたCOP25(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)に参加した。

COP25の現場でぶつけられた、日本と石炭火力への「NO」!

COP25の期間中、Fridays For Futureは、各国が前向きな交渉をするよう会議場の内外で声を上げ続けた。もちろん、気候マーチも。1週目の金曜日にプラド美術館の周りで行われたマーチは、主催者発表で50万人が参加する大規模なものになった。そこで塚本さんが掲げたプラカードに書かれていたのは「ストップ石炭」という文字。

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COP25期間中にマドリードで行われた気候マーチ

温室効果ガスを削減するという意味でも、人権を守るという意味でも、脱石炭は大事なイシューです。石炭をやめてください、というのは、世界全体に対してのメッセージでもありますが、特に、日本政府に訴えたいことでもあります。G7諸国の中でも日本は、石炭火力発電所の開発や輸出が目立つので。

COP25の開幕にあたって、国連のグレーテス事務総長も温暖化対策の強化と石炭火力発電の利用をやめるよう各国に求めていた。ところが、COP期間中に日本の経産大臣が「石炭火力発電など化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい」と発言し、日本は地球温暖化対策に後ろ向きと認定された国に贈られる不名誉な賞「化石賞」を受賞。塚本さんは日本代表として、その表彰台に立つことになった。

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堂々たる不名誉、「化石賞」を日本代表として受け取った塚本さん

記者会見では、各国のNGOや研究者の人たちから激しくブーイングを受けたり、『STOP Coal!』と言われたりするんですよ。僕も同じ気持ちなんですが(笑)。そういう反応を直に受けて、石炭火力の問題がいかに世界から関心を向けられているのかを痛感させられましたね。

Fridays For Future Kyotoは、マーチなどで気候変動への関心を高めるだけでなく、気候変動を止めるための仕組みをつくる政治にもアプローチしている。2月2日に行われた京都市長選では、候補者に気候変動に関するインタビューをしたり、気候政策へのコミットを促す嘆願書を出したりと、積極的なアクションを行った。

これからを担う若者たちにも、気候危機を回避する責任を感じてほしい

IPCCによる科学的なシミュレーションでは、気候変動がこのまま進むと、今よりもひどい災害が起こることが予測されている。塚本さんは、政治家や経営者はもちろん、これからを担う若者たちにも、その危機と、危機を回避するための責任を感じてほしいと訴える。

熱波だとか、干ばつだとか、データを見ると怖い未来が見えてくるんです。自分たちの生活も、社会も、経済も、地球環境という土台があってこそのものじゃないですか。政治をする上でも、ビジネスをする上でも、生活する上でも、気候変動対策を今すぐ、しっかり進めていくんだという意識を持ってほしいですね。

世界同時に気候変動を止める意思を行動で示す「グローバル気候マーチ」は、新型肺炎の収束状況にもよるが、今年も4月24日に行われる予定だ。Fridays For Future Kyotoが中心となる京都はもちろん、マーチは日本全国で行われる。Fridays For Future KyotoのFacebookTwitterInstagramをフォローして、世界とシンクロする動きに参加してみてはどうだろうか。

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塚本悠平 YUHEI TSUKAMOTO

1995年岡山県生まれ、大阪府出身。関西大学卒業後、京都大学大学院で地球環境学や会計学を学ぶ。NPO法人気候ネットワークにて長期有給インターン中。脱炭素投資研究会代表。