読むりっけん

2020年6月28日

生活に困ったら、社会保障を使うのは当然の権利。「支え合う社会」へ価値観の転換、問われる政治の覚悟

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新型コロナウイルス感染の影響が長期化し、生活困窮に陥る人の層が広がっている。影響が出始めた3、4月、支援団体の助けを必要としていたのは、路上生活者やネットカフェ難民を中心とした、明日にも居場所がなくなってしまう人たちだった(※)。

ただその後、非正規労働者を中心に解雇や雇止めが増加。飲食店の経営者、個人タクシーの運転手など、これまでなんとか持ちこたえていた人たちが、5、6月には支援団体を訪れているという。正社員の相談もみられるようになった。

立憲民主党の枝野幸男代表と、尾辻かな子衆議院議員は6月4日、自立生活サポートセンター・もやいの大西連理事長を招き、オンラインで支援現場の現状をヒアリング。生活困窮者支援団体の電話相談を受けたり、行政窓口への申請をサポートしたりしている東京都足立区の小椋修平区議会議員と千葉県酒々井町の白井のりくに町議会議員も参加した。

生活困窮者が増える一方、自己責任論が蔓延(まんえん)する今の社会では、生活保護はじめ社会保障制度を利用する心理的なハードルが高いのが現実だ。政治は「社会保障制度を使うのは当然の権利」というメッセージを、明確に発信してこなかった。コロナ禍をきっかけに、どうしたら「支え合う社会」へと価値観を転換し、確実に支援を届ける仕組みをつくれるか。大西さんと、立憲民主党の議員たちがともに考えた。

※写真は上段が枝野代表、尾辻衆院議員、下段左から大西さん、白井町議、小椋区議

※4月下旬に、生活困窮者支援についてオンラインでヒアリングを行った時の記事はこちら https://cdp-japan.jp/report/20200426_2880

「自分は貧困とは無縁」と思っていた正社員にも広がる生活困窮

厚労省は、新型コロナに関連した解雇や雇い止めが6月19日時点で2万6,552人にのぼると発表した。そのうち半数は非正規労働者だが、大西さんや小椋区議、白井町議によると、「自分は貧困とは無縁」と思っていたような人たちが、生活困窮に陥って相談に来ているという。これまで国の新型コロナ対策の貸付、給付金などで何とか踏ん張ってきた人も、その支援が切れればいつ倒れるかわからない。

小椋区議「3月、4月頃は日雇い派遣労働者やネットカフェ難民の方からの相談が多かったのですが、5月以降は月給制の派遣労働者、シングルマザーでパートやアルバイトを掛け持ちしている方、飲食店の経営者、個人タクシーの運転手、イベント設営のひとり親方など、様々な方から相談が舞い込むようになりました」

大西さん「月収14、15万円で、これまでは住み込みで働いていたり家族の支えがあったりして、貯金はなくても何とか生活できていた方が困窮している状態ですね。また、正社員の方からの相談も少しずつ増えています。誰にとっても他人事ではありません。

最大20万円を無利子で融資する緊急小口資金の申請も全国で急増しています。報道によると、3月25日から5月30日までの間の申請件数は約33万5,000件。東日本大震災後よりはるかに早い申請ペースだそうですから、困っている人がどれだけ多いかが、分かるかと思います」

緊急小口資金の貸付は1回のみで、総合支援資金の貸付、住居確保給付金の給付は原則3カ月を限度としている。3月に生活が厳しくなって緊急小口資金を借り、4~6月は総合支援資金を借りたり、住居確保給付金を受けたりしてしのいでいた人は、7月以降にいよいよ困窮することが予想される、という。

白井町議「都市に比べて生活困窮者が少なかった酒々井町でも、緊急小口資金の申請が増えています。4月末の段階では数件でしたが、5月末までに40件以上の申請があったそうです。1カ月の間に、平常時の1、2年分の申請があったということです。このままではまずい、と酒々井町では町独自の臨時給付金を検討しています」

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枝野代表(写真左から2番目)、辻元清美衆院議員(写真右から2番目)、尾辻衆院議員(写真右端)は5月31日、「自立生活サポートセンターもやい」「新宿ごはんプラス」が共催する食料配布・生活相談会に参加した

インターネットも、草の根の自治体議員も。支援情報を確実に届けるために必要なことは?

様々な人が生活困窮に陥る中で、支援情報を確実に届けるにはどうしたらいいのだろうか。枝野代表は「自分から積極的に情報を取得しようとする人ばかりではないはず」と懸念を示した。大西さんや小椋区議、白井町議は、人々の手元に確実に届く情報発信を政治が考えるべきだ、と強調する。

大西さん「通信料金が払えず通話はできなくなってしまったけれど、スマホの端末だけは持っているという方はたくさんいます。Wi-Fiのある場所でネット検索やメールをしているんですね。なので、厚労省のクラスター対策班がLINEでアンケートを取っていたように、全アカウントに向けて支援情報を届ける。Google、Facebook、Twitterなどに広告を出す。そういったプッシュ型の取り組みができないでしょうか」

白井町議「『わかりやすく伝えること』も重要ですね。行政の情報は専門用語が多く、『自分に関連することだと思えない』という方も多いんです。多くの方に届く言葉で説明する必要があります」

小椋区議「情報の伝達という点でいうと、厚労省や東京都からの通達が自治体窓口の職員まで届いておらず、結果として対象となる方が追い返されてしまう事態が起きていることも問題です。厚労省も頑張っているのですが、通達が頻繁に出されるので、情報の更新が追いついていないのですね。なので僕自身は今、情報の更新があった際は各福祉事務所に『こういう通達があったので、対応の変更をお願いします』とお伝えしています」

国がつくった仕組みが各自治体で正しく運用されているかの確認、地域住民の声を聞くとともに、制度を周知すること。支援を確実に届けるには、大西さんは「地方分権が進む中で、自治体議員のみなさんの役割がとても重要」と期待を寄せる。立憲民主党では、自治体議員どうし、自治体議員と国会議員のつながりの両方を強め、地域社会に密着した自治体議員の活動を後押ししている。

「生活保護など社会福祉を使うのは当然の権利」。セーフティネットを機能させるため、政治が明確なメッセージ発信を

新型コロナにより、非正規労働者やシングルマザーなど、もともと弱い立場にいた人に加え、「自分は貧困とは無縁」と思っていた人たちも大きな影響を受けている。大西さんは「平常時からきちんと支援制度を整えてこなかったツケが回ってきている。分断ではなく、支え合う社会へ価値観の転換を、政治と一緒に進めたい」と訴えた。

大西さん「これまで、セーフティネットの穴を埋めようと様々な政策がつくられてきましたが、それによって社会福祉制度が複雑化し、使いこなすのが難しくなってしまいました。

社会保障を利用することへのためらいや反感も深刻です。こうした価値観を変えなければ、せっかくの制度も有名無実化してしまう。生活保護も、本来なら使えるのに利用していない人が7、8割という状況です。セーフティネットがちゃんと機能する社会にしないといけません。

厳しい条件や申請の手間をクリアした人だけが制度を利用できる仕組みでは、『あの人はずるい』といった気持ちが生まれ、分断が進みます。申請する側も、それを確認する行政側も負担が大きい。そうではなく、困っている人が生まれないような普遍的な仕組みが必要ではないでしょうか。枝野さんが示した『支え合う社会』の仕組み(※)を一緒に考えていけたらと思っています」

※枝野代表は5月29日の会見で、「支え合う社会へ―ポストコロナ社会と政治のあり方(『命と暮らしを守る政権構想』)」(私案)を発表した。https://cdp-japan.jp/news/20200530_3034

このまま経済停滞が続けば、生活保護に頼らざるを得なくなる人が増えることが予想される。しかし、生活保護制度の認知が進まず、誤解や偏見が蔓延する中では、本来は救えたはずの人が救えなくなってしまう。

尾辻衆院議員「この数十年、非正規雇用が増える労働政策がとられてきて、雇用における非正規雇用の割合は4割近い。日本社会は非正規雇用の方々に支えられていると言っても過言ではありませんが、緊急時に真っ先にあおりを受けるのもこの方々です。

決して本人の努力が足りないわけではなく、社会システムがそうなっている。ここを変えなければいけない。安心して働ける雇用制度、万が一のことがあっても生活が守られるセーフティネットを整備しなければと改めて感じました」

枝野代表「憲法25条は、第1項で『すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』、第2項で『国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に務めなければならない』と定めています。生活に困窮した方が、生活保護をはじめ社会福祉の制度を利用することは当然の権利だ、というメッセージを国が発信していかなければいけません。

今回、多くの方が持続化給付金などの制度を利用し、“支えられる経験”をしました。感染拡大を防ぐには人々が力を合わせる必要があり、他者の命と暮らしを守ることが自分の命と暮らしを守ることにつながると実感した人も多いでしょう。これを契機として、自己責任論が跋扈(ばっこ)する社会ではなく、お互いさまに支え合う社会へと転換させていきたいです」

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