衆院本会議で4月19日、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」を議題に質疑が行われ、質疑終局後に採決の結果、賛成多数で可決、成立しました。採決に先立ち立憲民主党・無所属を代表して坂本祐之輔議員が反対の立場から討論を行いました。

 坂本議員は冒頭、「立憲民主党は、チルドレン・ファーストの考えの下、社会全体で子どもの育ちを応援する政党です。子どもや子育てにお金がかかるのは当然のことであり、子ども・子育て政策にかける予算は、より拡充する必要があると考えます。それでも、政府提出法案に反対する最大の理由は、政府が新たに創設する『子ども・子育て支援金制度』に関して、多くの重大な問題があるからです」と表明しました。問題点として坂本議員は以下の5項目を列挙しました。

(1)支援金の負担額に関する政府の説明が小出しで、極めて不誠実だったこと

 坂本議員は「今年2月には、子どもを含む医療保険加入者一人当たり月平均500円弱を徴収することとされました。立憲民主党の強い要求の結果、被保険者一人あたりを含む医療保険ごとの試算が示されたのは3月末です。そして、今月9日に、政府はようやく被用者保険の年収別の試算を示し、その後11日に国保の年収別試算を、16日に後期高齢者医療制度の試算を提出しました。このような政府の情報開示に対する後ろ向きの姿勢が、国民の不信を招いたことは明らかです」と指摘しました。

(2)今般の支援金制度が、明らかに国民負担を強いること

 坂本議員は、政府の試算では、被用者保険の場合は年収600万円で被保険者一人当たり月1,000円の徴収となり、国保の場合は年収400万円で月550円の徴収、後期高齢者医療制度の場合は年収250万円で月550円の徴収となる点に触れ、「岸田総理は『歳出改革と賃上げで実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築する』と主張しますが、歳出改革による負担軽減は本来、そのまま国民に還元すべきものであるうえ、総理の発言は詭弁であり、国民負担が増えることは、もはや火を見るよりも明らか」だと指摘しました。

(3)支援金制度が、社会保険制度の趣旨を大きく逸脱すること

 坂本議員は「今般の支援金制度は、現行の医療保険料に追加するかたちで徴収するものであり、これでは保険の本来の機能を毀損しかねません。子ども・子育て支援金は、医療に直結しない費用を医療保険の枠組みで徴収するもので、給付と負担の関連性が極めて希薄であり、問題です」と指摘しました。

(4)支援金制度が現役世代の手取り額を減じさせ、子ども・子育て支援策や少子化対策と逆行してしまうこと

 坂本議員は「支援金制度は社会保険料と同様、収入の多い現役世代に負担が偏ります。これでは、子育て世帯を支えるべき政策が、本来の意に反したものとなることが懸念されます」と指摘しました。

(5)支援金制度が賃上げや安定雇用に与え得る負の影響があること

 坂本議員は「今般の支援金制度は、被保険者だけでなく、事業主にも新たな負担をお願いするもの。支援金制度が賃上げの原資を減らしたり、安定雇用に対して逆効果となったりしたら、本末転倒です」と問題視しました。

 坂本議員はこうした問題点を指摘したうえで、立憲民主党は、政府案の子ども・子育て支援金制度を廃止し、その代替財源として、日銀が保有するETFから得られる分配金収入を充てることとする修正案を提出したことに言及。「先日の委員会では、わが党のこの提案に関して、日銀が保有するETFの分配金収入は、既に国の一般財源として活用されており、子ども・子育て政策の財源と考える余地はない旨、岸田総理が答弁されました。しかし、修正案の趣旨説明の中で詳細に明らかにした通り、そもそも政府は、ETFの分配金収入を歳入として見込んでいないのです。したがって、この総理の答弁は、国民の誤解を招くものであり、我が党の提案を不当に貶めるものであることから、速やかに撤回すべき」とも指摘しました。

 「政府案の子育て支援拡充策は、児童手当拡充が第3子以降に限定されているなど、不十分な点はありこそすれ、一歩前進ではあると考えます。本来であれば、与野党の垣根を超え議論を尽くし、ともに前へ進めたかっただけに、財源について政府・与党の皆様から理解が得られなかったことは残念です」と述べ、「しかし、私たち立憲民主党は、自民党の裏金や脱税の疑念がまったく払拭されないなか、国民に対して負担増を誤魔化し真摯に説明をせず、不公平な形で新たな負担を強いる本法案には、断固として反対します」と表明。立憲民主党は引き続き、分断をなくし社会全体で子どもの育ちを支えるという理念の実現に向けて、全力で取り組んでいく所存であることを最後に表明し、討論を終えました。

20240419「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」反対討論原稿.pdf

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