立憲民主党は9月7日、旧統一教会被害対策本部会議を国会内で開催し、(1)宗教学者で北海道大学大学院文学研究院の櫻井義秀教授から、カルト・マインドコントロールの概念や財産被害誘導行為、被害者支援等(2)法務省から、「旧統一教会」問題相談集中強化期間の電話相談(参考:合同電話相談窓口配布チラシPDF)の現状(3)旧統一教会被害者(祝福2世の方)2名から高額献金の被害事例等――についてヒアリングしました。

 泉代表はあいさつで、政府の一時的な電話相談窓口はできたが、いろいろな不安があり、掛けられない人もいるのではないかと語り、今回のように当事者の方が声を上げたことで多くの声が届いていると述べました。また、当事者同士だからこそ聞き取り分かることもあるので、そういったものを対策に活かしていくと語りました。

 また冒頭、西村智奈美対策本部長は、「(多くの方が)被害救済に期待をしてくださっている」「しっかり迅速に、かつていねいにこの問題を議論し解決策をしっかり作っていく」と述べ、カルト被害防止・救済の法制化に向け準備していることを報告。本来、超党派で取り組むべき問題であるものの与党自民党が後ろ向きな状況であるため私たちが議論をリードしていきたいと述べました。

■カルト・マインドコントロールの概念や財産被害誘導行為、被害者支援等について

オンラインで参加した櫻井教授(スクリーン)

 櫻井教授は、(1)カルト、マインドコントロールなどの概念(2)旧統一教会関連のこれまでの訴訟(3)政府「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」」(4)宗教団体の献金・布施のあり方(5)フランスの反セクト法の評価と機能――などについて説明。論点として(1)統一教会対応か、カルト問題対応か(2)宗教法人法81条(宗教法人の解散請求)か、新法をつくるのか(3)宗教と政治のあり方を論じる際、どこまで拡大するのか――の3点を挙げました。

 質疑応答で櫻井教授は、宗教法人法81条(宗教法人の解散請求)と信教の自由の関係について、81条により解散をするのはハードルが高い行為との認識を示す一方で、献金被害や霊感商法の被害が多く、被害回復ができない、あるいは一般市民が不安だという状況を解消できない場合、踏み込んだ対応(法律的・行政的な介入)をしてもいいのではないかと述べました。それにより宗教団体や信者の信教の自由を侵害するまでは行かないとし、信者の方が何を信じているかは自由だと説明しました。

 その他、質疑応答では、被害者救済にどういった法整備が必要か、反セクト法の10要件と罰の関係、81条が適用されないのは政治との癒着ではないか、第三者が被害申し立てをする場合の問題点、郷路征記弁護士の言う「伝道の違法性」(郷路理論)は成立するか――などのやり取りがありました。

■「旧統一教会」問題相談集中強化期間の電話相談の現状

 9月5日から30日までを「旧統一教会」問題相談集中強化期間として、複数の省庁が合同の電話相談窓口を開設したことについて現状確認を行いました。

 電話窓口では、関係する相談機関の熟練した相談員が対応。解きほぐすように話を聞き、複数の相談がある場合には優先順位をつけ、一つずつ対応している等の説明を受けました。また初日だけで155件(速報値)の相談があったとの報告がありました。

 西村本部長は、電話相談窓口が実効性があるものにしてほしいと要望しました。

■旧統一教会被害者(信仰2世、祝福2世)2名からヒアリング

 2名とも特定の支持政党はなく、超党派でこの問題に対応してほしいとして、今回のヒアリングで私人としての話を語っていただきました。

 Sさんは、母が「このままでは家族が不幸になる」と言われ入信し(現在は脱会)、普通に生活ができていたものの、献金や霊感商法による借金返済に苦しんでいた事を大人になり知ったと語り、見かねて借金の返済を手伝ったことがあると話しました。

 メディアやSNSなどで「身内に不幸があった人を狙う」「恐怖を植え付け冷静な判断ができなくなった人を狙う」という手口は本当にあると指摘。「周囲や子どもから借金してまで献金するほど追い詰めらている家庭は複数ある」「追い詰めてまで献金させる必要があるのか」「(家族を思う気持ちを利用して搾り取ろうとするのは)宗教としては逸脱した行為だ」と語りました。

 「他人事とは思ってほしくない」「このような場に出てこられない(人もいる)」「特に未成年者は声を上げることすら難しい」と話し、(1)一時的ではなく継続して相談できる場所、未成年者でも相談できる場所をつくほってほしい(2)高額献金を規制し、苦しい思いをして献金することがないよう国として対応してほしい――と訴えました。

 小川さゆり(仮名)さんは、両親が20歳前後に統一教会に入信、合同結婚式で結婚し生まれた2世信者。現在は脱会し一般人と結婚。両親は現在も熱心な信者だと語りました。

 脱会した経緯は、アルバイト代など200万円を献金のため両親に没収されたり、隠し貯めていた貯金を母に無断で全額引き落とされるなどの金銭的な理由と、高校時代に介護が必要になった祖母に家族が暴言・暴力を振るうようになったり、結婚前に参加しなければならない21日修練会に参加した際、公職者からセクハラを受けたり、韓国にある除霊施設の修練会に参加した際、精神崩壊した信者を数多く目の当たりにし、自身も精神の安定を保つことが難しくなり精神疾患を負うなどの、精神的な理由を挙げました。

 小川さんは今回のヒアリングのために、献金被害等の調査を実施し、現役信者や元信者を対象に献金被害を中心としたアンケートを実施。現在までに集まった35件から一部を抜粋した資料を元に状況の説明をしました。

 被害者を増やさないために、(1)高額献金・霊感商法の規制(2)統一教会の解散(3)宗教的虐待からの子どもの救済(4)政治と宗教の関係の検討――を超党派で対応してほしいと求めました。

 質疑応答で、脱会した経緯についてSさんは、忙しくなりだんだん教会に行かなくなったことや、不信感、家を出て独立して関わらなくなったことを挙げ、Sさんは母から、教会に疑問が出てきてフェードアウトしていき、マインドコントロールが解けるのに時間がかかったが、その時点で脱会届を出したと聞いたと説明しました。小川さんは、前述の経緯について語った後、フェードアウトしたと述べました。また小川さんは、脱会するというと何かと勧誘されたり、脱会届に現住所を書く必要があることなどを挙げ、多くの人はフェードアウトしていると説明しました。

Sさん(プライバシー保護のため足元のみ撮影)
小川さん(左・プライバシー保護のため首より下のみ撮影)