立憲民主党など野党は11月16日、旧統一教会問題に関する第28回目となる国対ヒアリングを実施しました。今回は、親が合同結婚式で結婚し生まれた祝福2世の方3人から2世の実態や養子縁組などについて話を聞きました。全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士も同席し、旧統一教会の養子縁組の問題点について話を聞き、その後関係省庁と意見交換を行いました。

■武田ショウコさん

武田ショウコさん(右)とパートナーの方(左)

 武田ショウコさん(仮名)は20代の既婚の女性。幼少期から「サタンが入るから」と服装からテレビや漫画まで教会の教義によって制限されて育ったといいます。両親は高額献金のため朝から晩まで働き、働かない日は教会にいたため、家を空けることが多かったと振り返り、ご飯と梅干しだけといった質素な食事をとり、唯一のご馳走は学校給食だったと語りました。

 思春期には、「ハーフであることから容姿について差別を受け、それを両親に相談すると『サタンが働いている証拠だから』と真剣に取り合ってくれなかった」と語りました。さらに「日本は卑怯で韓国に謝らなければならない」という刷り込みを受け、日本人が嫌いになり「私の容姿が差別されるのも、日本が島国でよその国を知らないからだ」と思い込み、半分は日本をルーツに持つ自身にとってアイデンティがわからなくなるほど、こうした歪んだ価値観に苦しめられたと語りました。

 また、14歳の時に臓器提供意思表示について母に質問したところ「神様の元へはきれいな姿でいかなければならない。その生命はそこで死ぬべき命だから、2世のきれいな体を切り裂くなんて言語道断」と言われたと語り、人類の救済を教義の本質に据えているのに、救われる命のバトンを否定し、障がい者を否定するような教会の優生思想を感じ取ったと話しました。

 武田さんは、両親が幸せには思えず、毎日罵り合いながら生きていくことは嫌だと感じ、その後、徐々に教会から逃れたいと思うようになり、一般人と出会い結婚したと語りました。

 国に対しては、周囲が子どもを保護する仕組みを求めました。教会の教義は子どもの心の発達に大きな影響を与え、自身や兄妹のように1世の財布になっている2世は山ほどいると指摘し、教会の解散と、子どもたちの未来を守るための被害防止の法整備、反社会性の強いカルトを日本から追い出す法整備をしていただきたいと訴えました。

■佐藤海さん

佐藤海さん(プライバシー保護のため首より下のみ撮影)

 佐藤海さん(仮名)は30代の女性。両親が合同結婚式に参加し生まれた、いわゆる祝福2世。両親は現在も信者で、ご自身は離教し親とは離れて暮らしていると言います。

 幼稚園から小学校高学年になるまで母は海外宣教で長期間家を空けることが頻繁にあり、母がいないことが辛く、寂しく、友だちが親と一緒にいるのを目の当たりにして突然泣き出す等、情緒不安定だったと語りました。

 小学生の頃、礼拝の行き帰りで両親がよく消費者金融のATMに立ち寄っていたのを覚えていると語り、裕福な家でなかったものの、生活費を借りるためだけにしては立ち寄っていた頻度が多すぎたと思っていると話しました。その後、母は自己破産し、両親はいまだに献金による借金を返済中だと説明しました。

 周りの2世たちも貧困やさまざまな問題に苦しんでいることを目の当たりにし、また世間との乖離に悩むことが増え、そうした時に地下鉄サリン事件を題材にしたアニメーションを観て、「親たちが目指しているものの末路と、自分たちが置かれている現状を悟り、一切の信仰を止めた」と話しました。

 また教会には、家庭は子どもがいて初めて完成するという教えがあると話し、既に複数子どもがいる家で新たに妊娠した場合、子どもに恵まれない信者家庭へ養子に出すことが推奨される場合があると語りました。初めから子どもを養子に出す前提で妊娠する人もいると聞いたことがあるとも語りました。

 さらに教会に教義により養子に出されたことを本人が気づき、傷ついてしまうことがあると指摘。佐藤さんの近くにもそうしたことで傷ついている人がいると明かしました。

 また、信者間で養子に出した場合、元の家族が近くにいることも多く、礼拝で顔を合わせたり、家族同士で交流があったりすると語り、自分だけが養子に出されたという事実が子どもに非常に深くのしかかってくるのではないかと指摘しました。

 要望として、(1)被害者救済法案の今国会での成立(2)家族による取消権も盛り込む(3)一定額以上の献金(寄付)には必ず領収書を発行することの義務付け(4)宗教2世にどのような問題があるかの行政の調査(5)さまざまな理由で精神を病み信仰のある親と同居をせざるを得ず、声もあげられない2世が多くいることから2世たちの自立、社会参加を支援する仕組みづくりと、こうした問題に取り組んでいる団体への支援の強化――などを求めました。

■小川さゆりさん

オンラインで参加した小川さゆりさん

 小川さゆりさん(仮名)は、両親が20歳前後に統一教会に入信、合同結婚式で結婚し生まれた、いわゆる祝福2世。現在は脱会し一般人と結婚しています。

 小川さんは、兄弟が3人養子に出されたと語り、1歳下の妹が養子に出されたときは、養子先が分派だったことが後に分かり、生後8カ月か10カ月の頃に戻ってきたを話しました。さらにその下の5番目と6番目の子どもがそれぞれ養子に出され、生後5カ月くらいのとき確認したところ普通養子縁組だったと説明しました。

 小川さんは下に兄弟ができることは嬉しかったが、養子に出すことを知ったときにはショックだったと振り返りました。また、産まれる前後、数週間は里親の女性が自宅に泊まり込みで、母親の世話をしたり、小川さんたち兄弟と遊んだり、産まれた子どもの世話をし、その後、引き取っていったと話しました。

 「子どもの気持ちは一切関係がなく、全て教会、信者である親の事情だけがまかり通っている。また子どもの人権がとても無視されている重大な問題」「事実を知ったときの子どもたちの、存在意義やアイデンティティが崩壊するといった深刻な問題がある」と指摘。献金は何かしら返ってくる方法はあったとしても、子どもたちの時間は返ってこないと語り、「子どもたちの人生はカルト教団に左右されて良いのか」と怒りをあらわにしました。

■旧統一教会の養子縁組問題の論点(阿部弁護士)

 阿部弁護士は、教義において産児制限を否定し、多産を推奨するとともに、既に複数子のある信者家庭に対し、子のない他の信者家庭に養子を出すことを推奨していると指摘。さらに、養子に出すことを目的として妊娠・出産を繰り返す例が多くあり、引取先が妊娠中に決まることもあるとの証言がなされていると説明しました。

 養子として出された子どもの中には、こうした養子縁組の経緯を知り、精神を病む者や引きこもりになる者、自殺未遂や自殺に追い込まれる者がいると指摘。また養子縁組先で、ネグレクト等の児童虐待を受ける者がいると語りました。

 こうしたことから、養子に出すことを目的とした妊娠・出産は子の福祉に反するのではないか、また人道的・倫理的・道徳的に問題があるのではないかと強く批判しました。

 さらに、旧統一教会による組織的な養子縁組のあっせん行為は、(1)営利目的での児童の養育をあっせんする行為を禁止している児童福祉法(第34条第8項)(2)民間の事業者が養子縁組のあっせんを業として行うことについて許可制とし、無許可で養子縁組あっせん事業を行った者等についての罰則を規定する「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」――に反するのではないかと指摘しました。

 厚生労働省の担当者は、教会が都道府県からの許可を受けずに養子縁組のあっせんを行っていた可能性があるとして、近く教会に事実関係の確認を行うことを検討していると説明しました。

 会議では、教会のツイッターで「養子を3名以上出された家庭」が「7名以上子女のいる夫婦」「公職45年以上の家庭」「90歳を超えて今なお活躍されている方」と並んで表彰されたとする内容のツイートや、「統一教会は『子どもの幸せのため』と言うがそれは断じて違うと2世の立場から言える」と山井和則衆院議員が養子の元2世信者から受け取った連絡なども紹介されました。