立憲民主党など野党は11月18日、旧統一教会問題に関する第29回目となる国対ヒアリングを実施しました。今回は、旧統一教会2世で両親が1億円以上を献金しており、返金手続きがうまくいっていないという鈴木みらいさん(仮名)などから、教会の養子縁組や、その他の問題について話を聞きました。全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士も同席。旧統一教会の養子縁組の問題点や、会合中に行われた与野党幹事長会談で示された政府の新法案の概要「寄附適正化の仕組み」について関係省庁と意見交換を行いました。
■旧統一教会の養子縁組の問題
山井和則議員は養子縁組に関連し、文鮮明氏の著書にある「女性たちは、いくら勉強したとしても男性に従っていくのです」(※1)、「私は結婚した夫婦に『無条件に子どもをたくさん生みなさい』と言っています」(※2)――といった記述を挙げ、こうした言葉から「産児制限をしてはならない」「私たち統一教会の女性たちには産児制限をさせません」(※3)という流れになったと指摘。3人産んだ母親に教会から4人目を産み養子に出すよう求められたという実際に聞いた話を紹介し、「本当に子どものためなのかという疑念がある」と指摘しました。
※1 「二世たちの行く道 中高生のための訓読教材」
※2 「平和を愛する世界人として」
※3 「み旨にかなった子女指導」
阿部弁護士は、「実態として海外の養子縁組は多いと思う」と語り、人類、宗教、文化の統一などを掲げており、合同結婚式でも国籍の違う人たちをマッチングさせていることなどを挙げました。
また海外への養子縁組に関連し、養子縁組あっせん法の可能な限り日本国内において児童が養育されることが望ましいとの規定(第3条の2)について、政府は、子どもの権利条約第21条のbにある、出身国内において里親などの適切な方法で監護を受けることができない場合に、これに代わる監護の手段として国際的な養子縁組を考慮することができると定められていることを示しました。
■鈴木みらいさん
鈴木さんは現在30代。親が合同結婚式で結婚し生まれた祝福2世で、現在も両親・兄弟は現役信者であるといいます。教会内で養子になった子を少なくとも6人は知っていると語り、多い頻度で養子縁組が行われていると指摘。教会が1981年から今年5月までの41年間に745人の養子縁組が行われたと説明していますが、「実際の養子縁組は745人よりはるかに多いと思う」と語りました。
さらに日本在住の日本人信者家庭から海外在住の日本人信者家庭へ養子縁組が行われた例として、2010年代に養母が実母の産前産後に日本に帰国し、養子になる赤ちゃんが海外渡航できるようになった時点で養母とともに渡航した話を挙げ、海外への養子縁組はハードルが高いのではないか、教会が支援しないと難しいのではないかと話しました。また、海外から日本への養子縁組も2、3件知っているとも語りました。
鈴木さんの両親による約1億6千万円の献金の返金については、教会に全額返金を求めていたものの、教会からは3千万円の返金は可能と両親へ返答があり、その状況について鈴木さんが教会に問い合わせたところ「本人に聞いてください」と話すのみで返答は得られなかったと語りました。
両親に電話で確認したところ、(1)申し訳ないというが具体的に何が申し訳ないのか説明ができない(2)真心から寄付したというが、うまく説明できない(3)3千万円の返金の理由も説明できず教会が提示したとしか答えられない――など要領を得なかったと説明。両親はマインドコントロール下にあり、正常な判断ができない状況にあると語りました。電話の後、兄弟とも話し返金のサインはしないことになったものの、その後両親は子どもたちに内緒で合意書にサインをしてしまったと話しました。
また、教会では霊界にいる先祖を地獄から救うため解怨と祝福をするが、430代前まで解怨祝福することが推奨され、天国に入る条件になっていると説明。総額1千5百万円ほどになり、解怨料は、直接韓国の修練場に支払われるため返金請求も複雑になるだろうと話しました。鈴木さんの両親も献金とは別に430代8直系の先祖解怨祝福をしていると語り、信者家庭の献金額は計り知れないと語りました。
鈴木さんは、洗脳されていない家族や親族が取り消せるような法案を成立させてほしいと訴えました。
■養子の元2世信者
教会の信者同士で養子のやり取りをされた20代の祝福元2世信者の方の話として、昨日山井和則衆院議員が本人と会い聞いたときの音声が流されました。
この元2世信者の方は、養子だと聞きたのは4歳の頃で、純粋にどうやって産まれたのかを聞いたところ育ての親から養子であることを告げられたといい、小さい頃だったので、聞いたときはそこまでショックを受けた感じではなかったと振り返りました。
成長とともに養子であることの葛藤や思い悩むことが増えていったと語りました。実の家族には他に兄弟もいるので「どうして私だったのか」「どうして私でないと駄目だったのか」などの思いが強く、行き着くところは「教会の教義しかない」と話しました。カウンセリングの治療で自分の生い立ちから振り返ることがあり、生い立ちや養子に関することが中核をなすほどの影響を与える要因だったと気づくことができたが、それはこの数年のことだと語りました。
養子縁組については、「幸せに暮らしている方も、もちろん絶対いらっしゃると思うが、多分何かしら精神的に落ち込みやすかったり、傷つきやすかったり、誰にも言えない苦しみを抱えていたりなどの2世の子たちが多いのではないか」と語りました。
教会に対しては、あっせんではなく、教義のためではなく、子どもの幸せのためだということを具体的に説明をして欲しいと語り、これは親に対しても思っていたことだが、説明をしてもらわないと、「いつまで経っても、結局私はなんのために産まれてきて、なんで生きているのだろうと一生苦しみ続ける」と話しました。
政府などに対しては、実際に過去に起こってきたことを受け止めていただき、今後こういうことが起こらないように、審査を厳しくするなどの再発防止策を求めました。
■政府の新法案の概要「寄附適正化の仕組み」について
政府から示された「被害救済・再発防止のための寄附適正化の仕組み(概要)」について、阿部弁護士は「統一教会には適用されない」と指摘。「寄附に関する規制」の勧誘に関する禁止事項に、霊感等により寄付をすることが必要不可欠であることを告げるとあるが、教会以外のカルト的な団体も含め、ここまで詰めて献金をさせるケースがどれだけあるか、かなり疑問があると語り適用範囲が狭い条文だと述べました。
さらに禁止行為の「霊感等による知見を用いた告知」について、先祖の因縁を語り恐怖や不安を与え壺や塔を買わせるという典型的なやり方は、現在はそういうことをやっていないと指摘。教会には適用されないと述べました。現在は、教義に基づき献金をさせているので、果たして「霊感」に含まれるのかと疑問視しました。
また、家族の取消権について、「扶養義務等にかかる定期金債権のうち」とあり、「あくまでも家族の扶養義務の侵害の範囲でしかできない」と語り、「月数万円といった、それほど大きい金額にはならない」「救済の範囲もかなり限られたものになる」と指摘しました。
鈴木さんは、当時は献金したことも知らず、苦しい生活費を賄うためにアルバイトをしていたと振り返り、現在は扶養を外れており、こうした場合、請求はできず救済にはならないのではないかと話し、また、対象が狭いことから、「高額献金を訴えている人たちは救済できない法案ではないか」と困惑を隠せませんでした。
※今回のヒアリングは、これまで同様、被害者保護の観点から顔出しは無しとし、モザイクのかかった写真・映像も不可。音声は変え、ライブ配信や録画の配信は不可としています。