衆院消費者問題に関する特別委員会で12月7日、旧統一教会問題をめぐる被害者救済法案(「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」と「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案」)の審議が行われ、旧統一教会のマインドコントロールによる多額の寄付や霊感商法に苦しむ被害者救済の観点から吉田統彦議員が質疑を行いました。
吉田議員は冒頭、立憲民主党と日本維新の会が共同で旧統一教会被害者救済のための法案を共同提出していることに触れ、「速やかに審議していれば今頃は法案が成立し、いち早く被害者救済、将来の被害防止が図られつつあったと思う。被害者の皆さんは被害者救済法案をまさに30年待っておられたと言っても過言ではない。この方々の期待に応えるためにも政府並びに河野大臣は質問に対し、簡潔にそして真摯にお答えいただくとともに野党案からも取り入れるべきは取り入れ、被害者そして長く被害者救済に活動してきた参考人の全国霊感商法対策弁護士連絡会その他の弁護士が納得する法案を成立させることが政治の責任である」と呼びかけました。
吉田議員は、11月15日に河野大臣が「被害者の救済が最も重要である」という趣旨の答弁をしていることを取り上げながら、「法律は将来に向かって効力が生じ、過去の事象で今現実に被害を受けている救済には直接つながらない」と指摘。今回の新法案が現時点で困っている被害者の救済につながる部分はあるのか質問しました。河野大臣は、「法律というのは原則として施行日以降が対象となる」と述べ、「配慮義務についてそれ自体がさかのぼって適用するのはあり得ない」と答弁しました。
吉田議員は、法人等への寄付の取消権を行使した場合について、「加害者が簡単に取り消しに応じて寄付されたお金を返還するのは考えにくく、結局裁判での争いになるのが一般的になると思う」と指摘。消費者庁は「取消権を完全に履行したいと思えば裁判で争っていただくことになる」と答えました。
さらに吉田議員は、法律の禁止行為に違反した寄付を無効にすることが被害者救済に資するにも関わらず、なぜそのようにしなかったのか理由を問いました。河野大臣は、「法律行為を公序良俗違反等で無効とするのは、その内容が社会的相当性を欠く場合であると承知しています。寄付するという法律行為そのものは、仮にそれが高額な財産の移転を目的とするものであってもそれだけでは直ちに社会的相当性を欠くとは言いがたい」等と答えました。吉田議員は、社会的相当性の具体的な例の説明を消費者庁に求めましたが、明確な答弁はありませんでした。
吉田議員は、霊感商法による壺の売買で多額の金銭を支払ってしまうことを念頭に「(法案は)なぜ寄付だけが対象となって、売買契約が対象とならないのでしょうか」と質問しました。河野大臣は、「例えば、無価値な壺を100万円で売りつける場合は、個人がそれを知っている場合は実質的には寄付であると考えられます。また、個人が100万円の壺が実は無価値であることを知らない場合は詐欺の疑いがある。見かけ上売買契約を装っているにすぎず無償で相手方に財産に関する権利を移転し財産上の利益を供与するという本質において、寄付と評価しうる場合には新法の適用対象になりうる」と説明しました。
マインドコントロール下の困惑状態での寄付の取消権を行使する際に、被害者側に立証責任の負担があるため、被害者側に配慮していることがあるかを政府に質問。消費者庁は「最終的には裁判で金銭のトラブルについては解決していただく必要があると思いますが、法テラスを中心にする相談体制をしっかり構築するとともに関係機関が協力してそういった方々を支援できるように政府として取り組んでいる」と答えました。
吉田議員は、親が子の財産を侵害することを阻止するために未成年者が債権者代位権を行使することが本当にできるのか、未成年が親を訴える場合は親権が停止されるのが前提となるのか質問しました。消費者庁は、「債権者代位権の適切な行使のためには、さまざまな手続が必要だというのは認識している。そういった方々が円滑に手続を行えるように支援していくのが重要だ」「未成年者が自分自身で親権を持たれる方と利益相反する形で訴訟する場合には、親権についてまず別の方を代理を立てて委託する必要がある」と答えました。