参院本会議で12月8日午後、衆院から送付された旧統一教会問題をめぐる被害者救済新法案(「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」と「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案」)が審議入り。「立憲民主・社民」を代表して質問に立った石橋通宏議員は、法案の懸念点を具体的に指摘しながら岸田総理らの見解をただしました。

 石橋議員は冒頭、旧統一教会による深刻な被害実態に「私たちは、30年以上に及ぶ政治の不作為によって、旧統一教会による甚大な被害、家族崩壊、人生破壊、二世のみなさんに対する悲惨な人権侵害を許してきた重大な責任を痛感し、一日も早く真に実効性ある法制度を作り上げる責任を果たさなければならない」と表明。岸田総理に、「過去の反省と、被害者の方々への責任、そして、私たちに課せられた極めて重たい責務をどう胸に刻み、この法案を提出され、この審議に臨んでいるのか」と尋ねました。これに対し岸田総理は、「過去数十年にわたり旧統一教会の被害が続いてきたことについては、政府として深刻に受け止めなければならない。改正法案および新法案の早期成立により早期の被害者の救済と被害の再発防止に万全を期すべく参院においても丁寧に説明最大限努力していく」と述べるのみで、反省や責任の言葉はありませんでした。

 その上で、石橋議員は被害者救済新法案について、(1)実効性を高めるための努力(2)寄付の勧誘行為に係る規制対象(3)寄付行為一般を対象とした理由および寄付文化への配慮(4)高額の壺や経典の販売に係る本法案の規制対象(5)第3条の配慮義務を禁止規定にできないより説得力のある理由と、配慮義務にかかる衆議院での法案修正(6)取り消し権行使の要件(7)必要不可欠の要件(8)資金調達要求の禁止規定――等計14項目について質問しました。

 「配慮義務」に関しては、立憲民主党などが禁止規定にすべきだと訴え、修正を求めてきた経緯があり、なぜ頑なに禁止行為にしないのか、また、同日衆院で修正が加えられた「十分な配慮」としたことにより、いかなる法的な効果、行政の対応が生じるのかを尋ねました。

 岸田総理は、「配慮義務は、適切な判断を行うことが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定している。禁止行為とする場合よりも、こういう結果を招く、より幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定およびそれに基づく損害賠償請求を容易とする効果が高いと考えている。禁止規定について最大限規定を行った上で、さらに配慮義務の規定を行っているが、仮に配慮義務を法人等の禁止行為として具体化した場合には、現在禁止規定と規定しているものと同様の内容になると考えている」と答えました。

 石橋議員は「困惑」要件の対象について、マインドコントロール下にあってすでに義務感や使命感で寄付行為を行った場合も対象に含まれるか否かを問うとともに、「困惑」については、消費者契約法の逐条解説を条文化すべきだと求めました。

 これに対し岸田総理は、「寄付当時は自分が困惑しているか判断でいない状態で、外形的には義務感や使命感で寄付を行っているように見える場合でも、あとから冷静になって考えると不安に乗じられ困惑していた寄付だったと気付いたということであれば、そのような立証を行って取り消し権を行使することが可能だと考えられる。旧統一教会関係の被害者はこのような被害例が多いと考えられることから、多くの被害者が本法案を活用することで救済されうると考えている」と答弁。逐条解説を条文化すべきとの指摘には、「困惑を分かりやすく解説したものが逐条解説であり、表現を入れ替えたとしても何ら法的な効力に変更はないと考えている」と、否定的な考えを示す一方、「困惑に該当する事例などをさらに分かりやすく法律の解釈等で示すことは、法律の実効性を高めるために有用であり、しっかりと取り組んでいく」と述べました。