立憲民主党など野党は12月27日、旧統一教会問題に関する第35回目となる国対ヒアリングを実施しました。今回は、親が信仰する宗教を背景とした虐待を受けていると、その子どもたちが訴えているケースがあることを受け、同日厚生労働省が児童相談所などで対応する際の指針とQ&Aを都道府県知事・市町村長に通知したことを受け、行われました。ヒアリングには、宗教2世や被害者弁護士連絡会の弁護士、ジャーナリスト、関係省庁が参加しました。

 今回通知されたQ&Aの事例は、これまでの被害対策本部や国対ヒアリングで宗教2世の当事者が訴えてきたものが多く含まれており、山井和則衆院議員は画期的で歴史的だとして、取りまとめた厚労省子ども家庭局の羽野室長に感謝の意を表しました。

 冒頭、厚労省より通知内容について、(1)宗教の信仰等に関連する児童虐待の事例(2)児童虐待対応や自立支援等にあたって留意すべき事項(3)関連する支援――を整理したと説明があり、基本的な考え方として(1)背景に宗教等の信仰があったとしても、児童の安全を確保するための対応を行う(2)判断の際には例示を機会的に当てはめるのではなく総合的に判断する必要があり、その際は児童の側に立って判断すべき(3)保護者以外が保護者に指示・示唆する行為も躊躇なく警察に告発を相談すべき――との説明がありました。

 また、留意すべき事項として、(1)宗教等に関する児童虐待を受けている児童は、宗教等の教義の影響を強く受けている場合がある(2)親に指導しても改善が困難である場合も想定され、また指導を契機に虐待行為がエスカレートすることや、宗教団体等から家庭に対する働きかけが強まる懸念もあり、児童の安全確保を最優先とする(3)18歳以上であることのみをもって消極的な対応はしないことが必要(4)一つひとつの行為が軽微であっても、児童虐待に該当する場合もある――などを挙げました。

■宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A(厚生労働省ウェブサイト)

【概要版】宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A(PDF形式)
【本編】宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A(PDF形式)
【通知本文】「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」について(PDF形式)

 エホバの証人3世で宗教2世問題ネットワーク会員の夏野ななさん(仮名)は、「被害2世の声を真摯に受け止め、確実に児童への宗教的虐待を止めるために素晴らしい物をつくってくださった」「運用されることにより多くの未来ある子どもたちがこれ以上宗教的虐待に苦しまずに済む」と感謝する一方で、この指針やQ&Aが「30年前にあれば、私や多くの被害2世の人生は、まったく違うものになっていた」と振り返り、例示されたほとんどをこの身で経験してきたと明かしました。

夏野ななさん

 旧統一教会祝福2世でありバーチャルユーチューバーのもるすこちゃんさん(仮名)は、指に着けている指輪を見せ、統一教会の合同結婚式を受けた者が身につけている祝福リングだと説明。2世同士で祝福結婚をし、3世を育てていると明かし、これまで自分の素性を隠して活動してきましたが「子どもたちが安心して育つことのできる社会になることを願って」国対ヒアリングに参加することを決めたと話しました。

 もるすこちゃんさんは2世としていろいろなものが欠けた状態で育ったと振り返り、現在子育てをしていることから、親としてサポートできているのか今回のQ&Aは考えさせられる内容だと語り、いま子育てしている信者に是非読んでもらいたいと話しました。

指輪を見せるもるすこちゃんさん

 旧統一教会2世の高橋みゆきさん(仮名)は、今回作成したQ&Aを児童相談所の人だけでなく多くの人に読んでもらいたいと語り、宗教を背景とした児童虐待がどういったものか認識されることで、虐待が起きにくい風土を作っていく効果があるのではないかと語りました。また、「あらゆる行為を虐待と認定してほしいのではなく、あくまでも一部の常識を外れた行為を制限していきたい」と語り、宗教関係者に向けては、「私たちは宗教法人の敵ではない。例え親子の関係でも、宗教の名において行っている活動で決して超えていけない一線を定めたもの」「何が子どものためになるのかを一緒に考えていただきたい」と話しました。

高橋みゆきさん

 旧統一教会祝福2世の小川さゆりさん(仮名)は、直接命にかかわる虐待や身体的な虐待ではない、多くの人が悩んでいた心理的虐待がQ&Aとして明記して認めてもらえたことに対してありがたいと語りました。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士は、主に旧統一教会とエホバの証人の2世の声を参考にしたと思うが、他の宗教被害にも適用できるものだと評価しました。今後の課題として、しっかり対応するための予算や人的な体制整備と、関係機関の体制整備が必要だと指摘しました。

阿部克臣弁護士

 ジャーナリストの鈴木エイトさんは、個々の家庭で起きていることではなく、組織による児童への人権侵害の疑いが強い場合は、継続して組織的に行っている団体を規制する法律を作ってもらいたいと語りました。

鈴木エイトさん

※今回のヒアリングは、被害者保護の観点から、夏野ななさんは顔出し可・音声もそのまま、もるすこちゃんさんついては顔出し不可(モザイクのかかった写真・映像も不可)・音声はそのまま、高橋みゆきさんは顔出し不可(モザイクのかかった写真・映像も不可)・音声は変え、オンラインで参加の小川さゆりさんは、顔出し一切不可・音声はそのまま。またヒアリングのライブ配信や録画の配信は不可としています。いずれも仮名です。