自民党の裏金問題は、2023年11月に東京地検が関係者を任意で事情聴取したことが発覚してから、立憲民主党は真相を解明し責任を追及するために、予算委員会などで度々岸田総理にただしました。特捜の捜査は現職国会議員(不記載額3500万円以上の)3人を含む計10人の立件で終結してしまいました。岸田総理は「検察の捜査は終結した」「政治責任はこれから検討」との発言を続けるだけで一向に真相は明らかになりませんでした。そこで、野党は政治倫理審査会を開催し、関係議員の審査を行うように求めました。

  ◆「記憶にございません」は許さない

 これを受けて、2月から3月にかけて衆参両院では政治倫理審査会が開かれました。特に参院では39年前に設置されてから史上初の開催となりました。しかし、その中で自民党議員は「記憶にございません」「秘書がやったことで自分は知らなかった」を繰り返すばかりでした。また、議員間の発言に食い違いがあっても、何が本当のことか解明されないままうやむやで終わってしまいました。

<衆院政治倫理審査会>
2月29日 岸田総理、武田元総務相(二階派)
3月1日 西村前経産相(安部派)、松野前官房長官(安部派)、塩谷元文科相(安部派)、高木前国対委員長(安部派)
<参院政治倫理審査会>
3月14日 世耕前参議院幹事長(安部派)

 一般社会では、責任者が「記憶にございません」や、部下のやっていたことを「知らなかった」との言い訳は通用しません。にもかかわらず、政治家が「記憶にございません」「秘書がやった」と言い逃れできてしまうのは、政治家本人の責任を問う制度が十分整備されていないことに一因があります。

 現行法では公職選挙法に連座制が規定されており、選挙において候補者本人以外の者による選挙違反行為を理由として、当選無効や立候補制限という効果を生じさせます。昭和25年の施行当時から連座制を導入しており、政治スキャンダルが発覚するたびに連座制強化の法改正がおこなわれてきました。

 立憲民主党は、責任者たる政治家が責任を負わせるために、政治資金規正法においても、政治家が失職する「連座制」の創設を提案しました。 

◆裏金を許さない

自民党「聴き取り調査に関する報告書」より抜粋

 自民党の裏金は(1)政治資金であるならば、政治資金収支報告書に記載すべきであるところ不記載であったこと(2)政治資金でないならば、雑所得として課税の対象となるが納税していない、政治家本人が政治資金と言えば、領収書が提示できなくても、事実上免税となってしまっている――等が問題として指摘されました。


 民主制の発展に寄与するものとして政治資金の寄付等の自由は認められています。その自由をはき違え、政治家個人が、その資金の流れ、使途を表に出さない裏金として、政治活動以外に使っているとの疑念をもたれることは、政治資金規正法の基本理念「国民の疑惑を招くことのないように※1」と規定されている通り、あってはならないことです。
 
 立憲民主党は、政治資金規正法の政治資金収支報告書等の不記載について、従来の故意・重過失による場合に加えて、過失による場合(150万円を超える寄附に関する不記載に限る)に対する罰則の新設を提案しました。代表者も150万円超えの不記載の場合、過失も処罰することとし、当該国会議員は公民権停止になる可能性、「連座制」の対象にしました。

 成立した自民党案では、政治資金収支報告書提出時に、国会議員による「確認書」の交付を義務付けました。確認を怠ったと判断されれば連座制、公民権停止・失職の対象となります。ただ、「会計責任者にだまされた」と言えば責任が問われない可能性がある等抜け道が指摘されています。

※1 政治資金規正法(基本理念)
第二条 この法律は、政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ、その収支の状況を明らかにすることを旨とし、これに対する判断は国民にゆだね、いやしくも政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないように、適切に運用されなければならない。
2 政治団体は、その責任を自覚し、その政治資金の収受に当たつては、いやしくも国民の疑惑を招くことのないように、この法律に基づいて公明正大に行わなければならない。