立憲民主党は3月19日、日本維新の会、参政党、社会民主党と衆院会派の有志の会との野党5党派共同で、「企業・団体献金禁止法案」(正式名称「政治資金規正法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案」)を衆院に提出しました。

 企業・団体献金は、金権腐敗政治や利権・癒着政治の温床ともいわれ、資金力のある特定の団体などのために政治・政策決定がゆがめられるおそれが大きいことから、「平成の政治改革」で政治家個人・政治家の資金管理団体への献金が禁止されました。しかし、政党助成制度が導入された後も、政党本部・支部への企業・団体献金は引き続き認められ、その全面禁止が30年来の宿題となっています。

 先の衆院選の結果、衆院においては与党が過半数割れしており、野党がまとまれば企業・団体献金の禁止も実現できることから、立憲民主党の落合貴之衆院政治改革に関する特別委員会野党筆頭理事から野党各党に協議をよびかけ、その結果、第216回臨時国会に提出した立憲民主党・有志の会・参政党の法案と、今通常国会に提出した日本維新の会の法案を一本化して、企業・団体献金を禁止する新たな野党共同案をまとめるに至りました。

 まず、企業・団体による献金やパーティー対価の支払の禁止です。会社・労働組合・職員団体・その他の団体が政治活動に関する寄附や政治資金パーティーの対価の支払をすることについて全面的に禁止し、これに違反した者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処することとしています。

 つぎに、政治団体による寄附の量的制限の創設及び上限額の引下げです。政党及び政治資金団体以外の政治団体のする政治活動に関する寄附について、新たに総枠制限として年間六千万円を設けるとともに、同一の政治団体に対する個別制限として、年間二千万円の上限額を設けることとしています。なお、同一の国会議員に係る国会議員関係政治団体間の寄附は、実質的に資金の移動であることから、これらの制限の適用を除外しています。

 そして、雇用関係の不当利用等による寄附等の制限です。会社・労働組合・職員団体・その他の団体は、その役職員又は構成員に対し、雇用その他の関係又は組織の影響力を不当に利用するなどして政治団体の構成員となることを勧誘し、政治活動に関する寄附等をさせてはならないこととしています。

 さらに、個人のする政治活動に関する寄附に係る税額控除の拡充です。個人のする政治活動に関する寄附の税額控除の対象について、所得控除と同様に、国会議員、都道府県の議員・知事、政令指定都市の議員・市長に係る候補者の資金管理団体にまで拡大するとともに、税額控除率も引き上げるものとしています。

 法案提出後、野党5党派の法案提出者が共同で記者会見を行いました。

 筆頭提出者である大串博志立憲民主党政治改革推進本部長は「自民党の裏金問題、そして今は石破総理による自民党の商品券問題もあり、政治に対する信頼は地に落ちている。私たちには、政治に対する信頼を取り戻す責務がある。かつ『平成の政治改革』から30年の宿題を今、果たすべき時にある。そういった中で企業・団体献金禁止の法案を通していかなければならない。3月末までにこの衆議院の政治改革特別委員会において結論を得ることが与野党合意もされている中であり、なんとか3月31日までに皆さんと一緒に企業・団体献金禁止の結果を出していきたい」と本法案の趣旨と決意を強調しました。

 日本維新の会の青柳仁士政調会長は「30年前、1994年の『平成の政治改革』の時に潰すことができなかった穴である、会社・労働組合・職員団体・その他の団体からの寄附を完全に禁止するというところで一致できたことは非常に大きなことだ」としたうえで、「国民民主党が乗ってくれれば、与党過半数割れの民意を示した、この国会の民意に応えることができる。自民党では絶対やらない改革を実行することができる」「この法案は成立する可能性が高いと思っている。その鍵を握る政党、全ての野党がまとまることを心から願っている」と本法案の成立へ期待を述べました。 

 有志の会の福島伸享議員は「それぞれの党でいろいろな議論、思いがあったと思うけれども、それらを全て飲み込んで野党案を一本化したことは、大きな意義がある」「何よりもその内容において、私はこの案以上の穴を塞いだ法案というのは作ることができない。憲法上の政治活動の自由の範囲との関係で極限まで穴を塞げた案になった」と法案の意義を語りました。

 参政党の北野裕子議員は「今回、提出させていただいた皆さまと一緒に、今の政治の国民の皆さんの政治に対する不信感を払拭していければ」との思いを述べました。社会民主党の新垣邦男議員も「野党5党派でまとまったことが一番、大きな意義がある」として、「大事な法案であり、ぜひこの法案を成立させて、国民の皆さんの期待に応えていきたい」と意気込みを明らかにしました。

 記者の「以前の立憲案について、政治団体は除外という部分が『抜け穴』と言われていたが、今回の共同案ではなぜ不正な寄附は行われないようになっているのか」との質問に対し、大串本部長は「『雇用その他の関係』の不当利用は、自民党の構成員の意思尊重法案に比べると、理念規定、配慮規定ではなく規範規定、義務規定としてかなり強いものになっている。加えて、新たに『組織の影響力』を不当に利用するなどした勧誘や寄附等を禁止する条項も加えることによって、インフォーマルなかたちでの強制があってはならないことを強化している」として、前回の法案をさらに強化した点を強調し、「抜け穴」を残す法律案ではないことを明らかにしました。あわせて青柳政調会長は「政治活動を行うための団体である政治団体の献金という行為を禁止するのは、憲法違反の疑いが強いので、憲法上の制約等ということを考えた際に、最終的に政治団体による寄附の量的制限の創設と上限額の引下げについて妥結に至った」と述べ、これまで「抜け穴」との誤解のあった政治団体からの寄附について、憲法の政治活動の自由に抵触しない範囲内で一番厳しい規制をかけている法案であると説明しました。

 大串本部長は「国民民主党にしっかり呼びかけていくベースができた。5党派でまとめさせていただいたので、あとは国民民主党が乗ってくれれば通るところまで来ている。ぜひこの意義を重く受け止めていただいて、前に進めさせていただきたい」と国民民主党へ賛同を改めて呼びかけ、「『結論は得る』状況まであと一歩のところまで来た」との認識を示し会見を終えました。

 提出者は、立憲民主党が大串博志(筆頭提出者)、奥野総一郎、落合貴之、井坂信彦、吉田はるみ、本庄知史、日本維新の会が青柳仁士、池下卓、有志の会が緒方林太郎、参政党が北野裕子、社会民主党が新垣邦男の各衆院議員です。

【法案】(野党共同)企業団体献金禁止法.pdf
【要綱】(野党共同)企業団体献金禁止法 .pdf
【新旧】(野党共同)企業団体献金禁止法.pdf
野党一本化案による規制の全体像.pdf