衆院本会議で28日、菅総理の所信表明演説に対する代表質問が行われ、共同会派を代表して立憲民主党の枝野幸男代表が登壇。臨時国会を「コロナ禍から、国民の命と暮らしを守る国会にしなければならない」と訴え、(1)コロナ禍から命と暮らしを守る(2)コロナ禍の若者の貧困と教育(3)雇用と経済を守るために(4)学術会議の任命拒否問題(5)東日本大震災と原子力発電所事故(6)健全な日米同盟等――について立憲民主党の目指す社会像を示しながら政府をただしました。

 新型コロナウイルス感染症問題の影響に関して、1人親家庭の6割で収入の減少、1割で収入自体の途絶という事態に陥っている事例や、今夏以降、女性や若者を中心に自殺が増えているという実情に深い懸念を示し、「今ほど政治の力が必要とされる時はない」「『自助』を口にする総理に、声をあげようにもあげられない、こうした実態が見えているのか」と政府の認識に疑問を呈しました。

 9月15日に結党した立憲民主党について、政治が受け止めきれていない国民の暮らしの実態に「しっかりと目を向け、政治に反映させなければならない」との強い決意のもと、より多くの議員が結集していると紹介。結党後の1カ月で全国各地を訪問し、そこで受け止めた現場の声を踏まえた代表質問だと表明しました。

 まず、立憲民主党が目指す社会像に関して、「1人ひとりの『命と暮らしを守る』ために、目先の効率性だけにとらわれず、『人を幸せにする経済』を目指す。新自由主義にかわる新しい選択肢として、政治が責任をもって支え合いの役割を果たす『共生社会』の実現を掲げる」と説明。その実現のために政治と行政の力で支え合いの仕組みを充実させると展望を示しました。

 戦後最大の危機的状況を受けて枝野代表は、「広く影響を与える思い切った政策が必要」と説き、具体策として(1)年収1千万円以下の人への所得税の時限的免除、(2)困窮者への現金給付、(3)消費税の時限的減免――を提案。さらに、「こうした大胆な政策を速やかに実現するのであるならば、野党の立場からも、その政治責任を共有する覚悟である」と訴え、政府と与野党で構成する協議の場を設けるよう呼びかけました。

 コロナ禍にある国民の命と暮らしを守る上で、急ぐべき対策として医療機関への支援強化を訴えました。コロナ感染症患者を受け入れた医療機関などに絞って支援すると決定した政府の方針に対して、「多くの医療機関で経営はひっ迫しており、すべての医療機関に対する経営支援を速やかに実施すべき」と支援機関の拡充を求めました。

 学校での教育に関しては、「新しい生活様式」の下、教室の密を避け、きめ細かい教育を実現するため、少人数学級の推進と教職員の増員に取り組むよう提案しました。高等教育への支援に関しては、収入源だった仕事を失うなど、多くの大学生らが今なお、厳しい生活状況にあることを報告し、「学費減額に踏み込み、授業料を半額にすべき」との考えを示しました。

 東日本大震災による原発事故に伴って発生しているALPS処理水に関して、政府が海洋放出を近く決定するのではないかとの報道があり、関係者の間で不安が高まっていると指摘。「国民に対する説明と、国民的な議論はまったく不十分で、現状での決定は拙速だ。当面は地上保管を継続し、福島のみに負担を強いることのない処分方法など、具体的な代案の検討を進めるべき」と拙速な対応を戒めました。

 所信表明で総理が2050年までの脱炭素社会実現を打ち出したことについて「歓迎する」を評した枝野代表は、「しかし、そのために、原子力発電への依存を強めることがあってはならない」と警鐘を鳴らしました。むしろ、日本にはあらゆる種類の自然エネルギーの経験と技術があり、蓄電や断熱、そしてシステムの構築や管理で高い水準にあると説明し、「自然エネルギー立国」を推進すべきと力を込めました。

 日本学術会議の任命拒否問題では、学術会議法7条2項に「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と明記されている点から「推薦された方を任命しないことは、条文上、明らかに違法」と問題視しました。総理が学術会議からの105人の名簿を見ていないと発言していることから、「6人を任命しなかったのは総理自身の判断ではないのか?任命しなかった理由は何か?」などをただしましたが、明確な答弁はありませんでした。

 外交安全保障に関して枝野代表は、「立憲民主党は、健全な日米同盟を軸として、現実的な安全保障、外交政策を推進する」との立場を鮮明にしました。辺野古新基地問題では「沖縄の皆さんが繰り返し示してきた反対の民意に加え、軟弱地盤の影響でいつ完成するかも見通せず、建設費も膨らむ一方だ。健全な日米同盟を維持・発展させるためにも、埋め立てを中止し、沖縄の民意をはじめとした実情を、米国に対し率直に説明して理解を求め、別の道を協議すべき」と説きました。

 最後に枝野代表は、「誰もが安心できる支え合いの仕組みと、その仕組みを担う機能する政府を作り、命と暮らしを守る。多様な個人と地域が、互いに認め合い、それぞれにその力を最大限に発揮できる『共生社会』を実現する。立憲主義に基づく透明でまっとうな政治を取り戻す。『あなたのための政治』へ、右でも左でもなく前へ。それは、この国に暮らす一人ひとりを主役とする政治。『あなたのための政治』に向けて、私たちとともに進みましょう」と呼びかけ、質問を締めくくりました。

枝野幸男代表・衆院本会議代表質問(予定稿).pdf