衆院本会議で10日、予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案に関する趣旨説明と質疑が行われ、立憲民主党の中島克仁議員が共同会派「立憲民主党・社民・無所属」を代表して菅総理に質問しました。

 改正案は、現下の新型コロナウイルス感染症の発生の状況に対処するため、当該感染症に係る臨時の予防接種に関する特例を設け、国が全額費用を負担すること、製造販売業者等に生じる損失を政府が補償することができることとし、国民には接種を受ける努力義務が発生するほか、検疫法の改正で指定感染症の指定を1年以内に限り延期できるようにするものです。

 中島議員は、新型コロナウィルスの感染拡大、長期化するなか、ただでさえぜい弱な地域の医療・介護・福祉基盤が崩壊の危機にあるとして、診療所、クリニックの医師や職員が感染して、休業せざる得なくなった場合の補償や感染防止対策の設備投資費補助など、協力を得るための支援強化、また公立病院などの医療機関への十分な支援、平時でも慢性的な人材不足にある介護・障がい福祉現場への支援が必要だと主張。深刻な雇用情勢、ひとり親世帯の生活困窮に対しては、野党が提案する、新型コロナウィルス感染症対応支援金・給付金制度の欠陥を改める内容の「休業支援金拡充法案」の措置や申請締切の延長、低所得のひとり親世帯への2回目の臨時特別給付金の年内支給などに応じるよう求めました。

 その上で、本改正案に対して中島議員は、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大を受けて、急ピッチでワクチン開発が進められているなか、政府が供給契約を進めている欧米3社のワクチンは、投与実績が蓄積されておらず、大人数に接種すれば、副反応が生じる方の数は増加し、その中には重篤な健康被害を受ける方が出てくることは否定できないと指摘。「ワクチン接種にあたっては、副反応等のリスクと発症予防・重症化予防等のベネフィット(=利益)との利益衡量が欠かせない」と述べ、(1)開発中のワクチンを広く国民に接種した場合、わが国全体における総合的なリスクとベネフィットをどのように認識しているのか(2)ワクチン承認の可否が判断される薬事・食品衛生審議会の議論の内容について、国民、社会とできる限りリアルタイムで共有できるよう議事録を1週間以内に公表してもらいたい(3)ワクチン提供にあたって、日本人における有効性・安全性を十分に確認しないまま海外の臨床試験データのみをもって承認を行う「特例承認」は、今回のワクチン承認にはそぐわないのではないか――などと提起し、総理の見解をただしました。

 政府が9月8日、新型コロナウィルスワクチンを確保するために6714億円の予備費支出を閣議決定したことに、「製薬企業との契約については、交渉ごとであるため、その内容の全てを明らかにできないことは一定程度理解する」とした上で、投入されているのは国民の税金であり、契約内容や、ワクチン確保について交渉を進めている3社を選定した根拠を国民や国会に全く示さないのは無責任だと批判。「可能な限り、契約内容や業者選定の根拠を公表するべきだ」と総理に迫りました。

 中島議員は終わりにあたって、「ワクチン接種は国民の命と健康に直結する行為であり、接種のあり方の議論は専門的知識も必要となる。厚生労働委員会での審議は参考人質疑で専門家から意見を聴取することは必須だ」と強調。丁寧かつ徹底した法案審議を求めました。