衆院憲法審査会で26日、日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸問題についての自由討議とともに、日本国憲法の改正手続きに関する法律の一部を改正する法律案」(国民投票法改正案)に関する質疑が行われました。国民投票法改正案は、2016年に改正された公職選挙法の内容を、憲法改正の手続きに関する国民投票にも適用するため、「共通投票所」の設置や「洋上投票」を可能にする、投票所に入ることができる子どもの範囲の拡大――等7項目を見直すものです(写真上は、質問する奥野議員)。
質疑に立った奥野総一郎議員は冒頭、「本法制定時の重要な前提、CMの量的自主規制の導入が現在崩れている。7項目の先行採決ではなく、少なくともCM規制等の質疑、採決、改正が合わせて必要だと考える」と表明しました。
国民投票法で定めるテレビCMのあり方をめぐり、日本民間放送連盟(民放連)は2019年の同調査会で「テレビ広告の量的な自主規制は行わない」との方針を明示。立法者の1人である枝野幸男代表はこれを受け、「民放連がテレビ広告の量的な自主規制をするなら法律で規制しなくてもいいが、そうでなければ国民投票法自体が欠陥法だと言わざるをえない」と指摘しました。
奥野議員はこうした経緯を踏まえ、同じく立法者の1人である、自民党の船田元議員に対し、「法によるCMの量的規制、インターネットの広告の規制について検討が必要ではないか」「資金力が投票結果を左右してはならないのではないか」と質問。新たな論点として、外国政府による国民投票への関与が懸念されることから、国民投票運動に対する外国人寄付の規制や、公職選挙法の改正2項目を踏まえた国民投票法の改正が必要ではないかと提起し、7項目にとどまらない、国民投票法の抜本的な改正が必要ではないかと主張しました。
その上で、次回以降、そうした論点を含む、自身も提出者である旧国民民主党の議員立法「国民投票法改正案」の趣旨説明と、改正法案との並行審議を求め、「真に民意を反映した公正な投票結果が出る仕組みを整えることこそが憲法改正議論の前提だと思う」と述べました。旧国民民主党が2019年5月に衆院に提出した改正案は、政党によるスポットCMの禁止や、企業・団体が国民投票運動に支出できる上限を5億円に規制することなどが柱です。
船田議員は「平成19年(2007年)の法制定時においてもCM規制については重大なことだと参考人質疑も含めて議論してきた。当初、民放連の方々が、『量的規制も含めて何らかの自主ルールを作りたい』と発言されたが、最近になって『量的な規制は行えない』との結論になった。このことは大変残念に思っているが、CM規制についてはもっともっと知恵を出さなければいけないと現在考えている」と答弁。7項目の改正部分についてまず結論を出した後に、速やかにTVCMの規制のあり方、インターネットの広告の問題をはじめさまざまな論点について今後議論していくべきとの考えを示しました。
各党の自由討議では、立憲民主党から辻元清美議員が発言し、CM規制について「難しい問題であったとしても結論を出していくことが重要だ」とあらためて強調。法制定以後海外調査を進めるなかで、デマが国民投票等に与える影響が深刻であることが明らかになっているとして、例えばイギリスではEU離脱をめぐる国民投票実施後にキャメロン前首相が「デマはますます悪化している。特にSNS上の」と発言していたことを紹介。「(参院の)附帯決議に書かれたことをこの間放置してきた。難しい問題だからといってまた先送りになるのではないかと危惧している。CM規制は、与党対野党の話ではない。表現の自由など憲法に深く関わる問題が含まれている。だからこそこの問題から逃げてはならない」と述べ、「今後議論していく方針かどうか」と自民党の新藤幹事に質問。あわせて、一般の委員会でも法案審査が終わると、野党が一般質疑を求めても与党が拒否してほとんど開かれないのが現状だとして、「本委員会の持ち方についても配慮をしていただきたい」と求めました。
最後に、大阪の住民投票の問題に触れ、「5年で2回やった。(住民を)二分するような話を数年に1回やるような社会では、政治も社会も安定しない。政権交代の時代であり、分断するような話(国民投票)をやって、政権が代わってまた揺り戻すようなことは、どのような影響を及ぼすか。私たち政治家はよく考えなければいけないと思っている」と述べました。
新藤幹事は、「(改正案の)7項目は手続きの問題。公平や自由を担保するための議論はしっかりと議論することは約束したい」などと答弁。細田会長は「自由討議の扱いは、幹事が協議しているところ」だと発言しました。