政府が令和3年度予算案の中で、児童手当の「特例給付」の廃止や、その「所得制限」の判定方法の見直しを検討していることを受け、立憲民主党は2日、「少子化対策に逆行する児童手当の削減に反対する要望書」を取りまとめました。泉健太政務調査会長と子ども・子育てプロジェクトチーム(PT)の大西健介座長が同日、国会内で記者会見を行いました。

 会見の冒頭、泉政調会長は、昨年度の予算編成の大臣折衝時に合意した項目として、来年度予算案において(1)特例給付(※1)自体の廃止、(2)所得制限の判定方法の見直し(※2)――が検討されていることに触れました。その上で「政府は『まだ決まってません、決まってません』とは言うが、詳細な制度設計が決まっていないにしても、児童手当が減額になる可能性が極めて高いとわれわれは考えている」と説明。「昨年の出生率が約86万人、過去最低を記録している。またコロナ禍の中、ただでさえ生活が大変厳しい状況にある中で、少子化対策にも逆行する、子育て支援にも逆行する。こうした政策を来年度予算に盛り込むというのは大変問題だ」と政府の検討案に対し、強い問題意識を示しました。

 この問題を検討した子ども・子育てPTの大西座長は、「特例給付の廃止ないしは縮小ということだが、われわれが民主党政権下で子ども手当を作った時には所得制限を設けず、親の世帯の年収に関わらず、すべての子どもたちに手当を支給すべきであるという考えに立っていた」と説明。「この特例給付の縮小・廃止というのは認められないということをはっきりと書かせて頂いた」と述べました。

 またこの特例給付の廃止と、「世帯年収の合算」という所得制限の判定方法の見直しが同時に行われると非常に影響が大きいと考えているとも説明しました。具体例としては、主たる生計者の年収が700万、配偶者の年収が300万でだった場合、主たる生計者の年収が700万なので、今の所得制限水準(年収960万円)には引っかからないが、所得が合算される判定基準になると、年収が夫婦合算で1000万円になり所得制限に引っかかってしまうというケースを挙げました。

 大西座長は「先日、麻生財務大臣が少子化の原因は、子どもを持つと『大変だ、大変だ』と言い過ぎるからという趣旨のことを仰った。しかし『理想の人数』の子どもを生まない理由の第一は、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからだ」「共働き世帯がなぜ働いているかというと、まさにこの教育費や子育ての費用を捻出するために働いているということ。子育て中の共働き世帯の負担増や、あるいは女性の就労意欲を削ぐような、こうした世帯年収合算の導入は認められない」と述べた上で、近々、政府3役クラスに要望書を提出するつもりである旨を説明しました。

 さらに大西座長は「今回、この児童手当の減額をおこなう目的として、政府は『待機児童対策予算』の確保を挙げている。しかしそもそも菅総理は『縦割り廃止』『縦割り打破』ということを言っておられる。もし待機児童対策の予算を出したいのであれば、それは子育て予算の中でやりくりするのではなく、他から持ってきていただきたい。予算の全体の見直しの中でやっていただきたい」と訴えました。

 泉政調会長は「今の政府に対して、また与党自民党に対しても、これは絶対に撤回すべきだと申し上げたい。そして児童手当と待機児童対策、双方の予算を確保すべきだと強く主張していく」と政府に対し、検討の見直しを強く求めていく考えを示しました。

※1 特例給付:所得制限を超える世帯について、子どもの年齢にかかわらず1人あたり5千円の児童手当を給付する制度を指す(中学卒業までの15年間の支給総額は子ども1人当たり90万円)

※2 所得制限判定方法の見直し:現在、所得制限は「主たる生計者」の年収に対してかけられている(例えば、所得制限未満の世帯の場合、子ども2人のケースだと、月2万5,000円、中学卒業までの15年間で計400万円)。検討されている改正案では、これを「主たる生計者」と配偶者の年収を合算したものを、新たに所得判定の基準にしようとしている。

少子化対策に逆行する児童手当の削減に反対する要望書【確定版】.pdf