2020年12月14日

政府の全世代型社会保障検討会議の最終報告について

立憲民主党 厚生労働部会・社会保障調査会

はじめに
 政府の全世代型社会保障検討会議においては、高齢者や患者等の実態を踏まえない、財政面偏重の議論が行われてきた。また、少子高齢化、目減りする年金、介護離職など、直面する課題への抜本的な解決策は打ち出されなかった。政府の唱える全世代型社会保障では、国民生活の安心は確保できない。
 最終報告の内容については今後精査が必要であるが、現時点で特に問題点として指摘しておかなければならないのは以下の点である。

主な問題点
1.一定年収以上の後期高齢者の医療費窓口負担 2 割への引き上げについて
 政府は、後期高齢者の医療費窓口負担の 2 割への引き上げについて、年収200 万円以上(単身世帯の場合)を対象とすることを決定した。私たちはこれを、現時点で容認することはできない。

 消費増税や保険料負担増等の影響が継続している中にあって、医療に係る安易な自己負担の引き上げは、患者や医療現場の実情に照らして、社会不安を増大させる。したがって、その後の受診抑制によりさらなる症状の重症化や事態の悪化を招くおそれ、長期的に却って医療財政を悪化させるおそれ等がないとの確証がない限り、後期高齢者の医療費窓口負担 2 割への引き上げは認められない。

 特に、コロナ禍にあってすでに受診抑制が顕著となっており、感染拡大の収束及び社会不安の解消がなされない中で医療費の窓口負担を引き上げれば、その受診抑制に拍車をかける可能性が高い。引き上げの施行時期は 2022 年 10 月から 2023 年 3 月の間とされたが、現時点では感染収束の目処は立っていない。仮に収束したとしても、新型コロナウイルス感染拡大の影響が継続している可能性は否定できない。

 一方で、2022 年以降、団塊の世代が後期高齢者となり、後期高齢者の医療費が増えるため、すでに厳しい後期高齢者支援金を拠出する現役世代の負担は、今後さらにその厳しさを増していくことが危惧されている。公費負担の拡充により、現役世代の負担を軽減しうる、負担構造改革を早急に実行すべきである。立憲民主党としては、少なくとも、今般の後期高齢者の医療費の窓口負担の引き上げによって軽減されると試算されている現役世代の負担 880 億円程度については、後期高齢者の負担増によってではなく、公費で軽減すべきであると考える。

2.紹介状なしで大病院を受診した際の定額負担の増額
 政府は紹介状なしで大病院を受診した際の定額負担について、対象となる病院を拡大した上で、現行の5千円以上から 2 千円程度引き上げることとした。大病院に患者が集中しないようにするための措置を強化することは必要である。ただし、コロナ禍で医療提供体制がひっ迫した状況が続いた場合、医療機関が限られている地方などにおいて、負担が重くなって患者が受診できないといった事態が起きないようにすべきである。

※最終報告には、児童手当の特例給付の見直しが記載されているが、立憲民主党は子ども・子育てプロジェクトチーム「児童手当特例給付の一部削減に反対するコメント」で反対を表明している。

終わりに
 立憲民主党はすでに、医療・介護・障がい福祉などの自己負担の合計額に上限を設ける総合合算制度の創設を提案している。また今後、社会保障調査会において、逆進的な現状の社会保険料の累進化について検討していく。さらに、医療、介護、障がい福祉、保育、教育、放課後児童クラブなどの「ベーシックサービス」の拡充の具体策について検討を深め、誰もが安心して暮らせる社会をつくっていく。
                                                                        以上

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