立憲民主党神奈川県総支部連合会は11日、「IRカジノを止める!民主主義を守る!オンライン決起シンポジウム」を開催。カジノの是非を決める市民の会共同代表の小林節さん、横浜港運協会常務理事の水上裕之さん、静岡大学教授の鳥畑与一さんと、枝野幸男代表、江田憲司代表代行がリレートークを行いました。また、司会は篠原豪衆院議員が務めました。

 横浜市が誘致を目指すカジノを含むIR(統合型リゾート施設)について、その是非を問う住民投票を実施するための条例制定に向け、神奈川県連は誘致に反対する市民の団体らと共に署名活動を行い、法定数の3倍を上回る19万3193人の署名を集め、条例制定を直接請求していました。この条例案は8日の市議会本会議で、自民・公明両会派の反対多数で否決されました。

 シンポジウムの冒頭、県連代表の阿部知子衆院議員は住民投票の実施を否決した市議会の対応について「横浜市政の中で最大の汚点を作った」と指摘しました。またこれまでの経緯を報告した荻原隆宏横浜市会議員は、林市長が住民投票について「意義を見出しがたい」「代表民主制が健全に機能している」との否定的な意見を示したことについて「極めて民主主義を冒涜する」「議会と市長の議論に市民は割って入るなと言わんばかりのまさに暴論。これは議会もこんな意見を許してはならない」と指摘しました。

 小林さんは、「今回、横浜市長と横浜市議会に、大変無礼な扱いを受け、この屈辱はいい経験だったと思っている。つまり選挙に勝たなければ駄目だ」と怒りをあらわにしました。また地方自治を直接民主制の観点から説明し、今回の問題は住民投票で決めるべきものだと語りました。

 水上さんは、横浜港山下ふ頭の再開発に関する提案を行っており、今回の誘致に対し反対の立場から、国際展示場、滞在型ホテル、コンサート会場、ディズニー施設、物流施設、給食センターや植物工場、ワクチン等医療品配給センター、水素エネルギーセンターなど、具体的な再開発案を示し、改めてカジノは不要だと表明しました。

 鳥畑さんは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)によるカジノ収益の減少、オンラインカジノへの移行が進んでいると指摘。さらに外国人観光客の回復や、日本の家計の疲弊、中国経済の低迷とCOVID-19により富裕層がカジノに戻るか、カジノ企業の経営体力――等の懸念から、日本型IRの制度設計の前提が崩壊したのではないかと説明しました。

 枝野代表は冒頭、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大している現状について触れ、「(家族の命を守るためにも)自らが感染しない、そして感染を広げない」よう協力を求めました。

 今回のカジノIRの問題については、まず、「民主主義とは何かが問われている問題」だと指摘。「選挙に勝ったから何をしてもいいというものではない」「相対的に評価をされたに過ぎない、全面的な白紙委任を受けているわけではない」と語り、前回の市長選で争点でなかったにも関わらず、直接請求や住民投票の制度を無視する姿勢に疑問を投げかけました。

 また、持統天皇のすごろく禁止令以降の伝統を壊す行為だと指摘。公営ギャンブルは公が直接関わり、収益も公のために使われる前提である一方、今回のカジノは民間のものであり、そうした目的や枠組みになっておらず、負けた人が身を滅ぼす懸念を示しました。さらにカジノは経済政策にはならないと指摘。カジノを運営する外国企業によって収益が海外に流れることを指摘しました。

 最後に、この問題は横浜だけの問題ではなく、大阪や、都議会議員選挙後には東京でも話が出るのではないかということもあり、党として対策本部を明日にも立ち上げることを表明しました。

 江田代表代行は、前回の市長選で林市長がカジノIRについて白紙だと表明し当選したこと、市議会議員選挙でも、今回住民投票に反対した自民党・公明党の議員は1人としてカジノ推進という表明はしていなかったのではないかと指摘。住民投票という地方自治の重要なプロセスを「意義がない」とした林市長に対し「言語道断」と非難しました。

 また、国会で2016年のカジノIR整備法採決時に、与党である公明党は党議拘束を外し自主投票で臨み、山口那津男代表、井上義久副代表(当時、幹事長)らが反対票を投じたことを振り返り、「連立与党の公明党まで置き去りにして強行採決した」と指摘しました。

 さらに、米国ニューハンプシャー州では、依存症の問題や、周辺地域ではカジノが消費を吸い上げることになり地元ビジネスへの波及効果がないことなどから、カジノ合法化を断念したことや、韓国の17カ所あるカジノのうち、唯一韓国人が入場できる江原ランドの周辺は負けた人向けの質屋と勝った人向けの風俗店が多くなったことなどを挙げ、改めてカジノついて反対の姿勢を示しました。

 最後に神奈川県連幹事長の青柳陽一郎衆院議員があいさつし、今年行われる横浜市長選挙が非常に大きな意味を持っていると語り、これからも活動を続け、横浜の歴史と伝統文化を守っていくと強調しました。