参院で3日午前、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)と感染症法の改正案に関し、内閣、厚生労働両委員会の連合審査がおこわれ、参院会派「立憲民主・社民」から打越さく良議員が質問に立ちました。
打越議員は特措法と感染症法の改正について、国民の多くが不安を感じていると指摘し、田村厚生労働大臣に「罰則ありきではなく、国民に丁寧な説明と慎重な運用」を要請しました。
質疑は以下のとおりです。
打越議員は、罰則を設ける法改正には、十分な審議が必要と考えなかったのか、せめて野党側が議員立法案を提出した昨年の第203国会に提出すべきではなかったかと問い、改正案を提出したのが1月22日に遅れた理由と反省の弁を西村担当大臣と田村大臣に求めました。西村大臣は「私権制限について慎重な議論を重ねてきた」、田村大臣は「罰則規定について国民の中にもさまざまな意見があり、一定程度の時間が必要だった」と答弁しました。
打越議員は緊急事態宣言下で議論しなければいけなくなった政府に猛省を促しました。
続いて、人権の観点のみならず公衆衛生の観点からも、罰則への危慎があるが、この点を払拭できるのかとただすと、田村大臣は「国民に行政検査への協力について、しっかりと説明させていただきたい」と答弁しました。
感染症法改正について、刑事罰でなく行政罰であっても、適正手続(憲法31条「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」)にかなう必要があると厚生労働省に確認し、「大変重い」と強調しました。
また、刑事罰における罰金と行政罰における過料の違いについて尋ね、田村大臣は「行政の秩序を乱した場合の過料は前科がつかない」と答弁しました。
次に、「まん延等防止措置」は要件があいまいで、恣意的な運用のおそれが指摘されているが、どのように考えているかただし、 西村大臣は「都道府県の一部の地域の感染がステージ3相当になり、さらに拡大する恐れがある状況を想定している」と述べ、専門家の意見を聞いて判断していく考えを示しました。打越議員は西村大臣に早期に適用基準を公表するよう求めました。
さらに、「一丸となって」コロナ対策を進めるという要請をしていたいのに、12月14日に首相がステーキ会食、 1月の緊急事態宣言期間中に政府・与党幹部らが銀座のクラブに行ったことは、対策の実効性にマイナスの影響があるのではないかと問題視し、今後の時短命令などの必要性、合理性に対する疑義を生じさせてしまうのではないかと問いただしました。
西村大臣は政府・与党の不祥事には触れず、「すべての国民にご理解、ご協力をいただき、感染防止に取り組んでいきたい」と答弁するにとどまりました。
打越議員は、公平性をどのように担保するのか、また地域住民から信頼されての自治体業務であり、罰を振りかざすことは現場で職員が大変困難に直面するのではないかとの問題意識を示し、特に首相や与党幹部が緩んでいたことの苦情を現場の職員が浴びることへの受け止めを問いました。
西村大臣は「自治体の皆さんに負担をかけるが、事業者の皆さんにご協力いただきたい」と答弁しました。
法案の立法事実に関し、積極的疫学調査拒否・入院の措置拒否などの実例の把握についてただしました。
厚労省の担当者は137のうち107の自治体の調査で、疫学調査拒否により、クラスター対策が実施できない事例が確認されていると回答し、田村大臣は「感染者に濃厚接触者の健康を守るために調査への協力をお願いしていく」と答弁しました。打越議員は「罰則ありきが一人歩きしないように慎重な運用をお願いしたい」と要請しました。
関連して、子どもを養育しなければならず入院が難しい場合は「正当な理由」に当たるのか、児童相談所に保護する余力があるのかを尋ね、田村大臣から「正当な理由になり、罰金は適用されない」との答弁を得ました。