4日午後、衆院予算委員会で午前に引き続き2021年度予算案の基本的質疑が行われ、玄葉光一郎議員が質問に立ちました。玄葉議員は(1)新型コロナウイルス感染症対策(2)外交安全保障(3)東日本大震災からの復興――の3つのテーマを取り上げました。

(1)COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策

 事業者に対する休業補償について玄葉議員は、国が手当てをするのは緊急事態宣言地域だけであり、結果的に「(宣言地域にはあたらない)地方の住民ほど外出自粛をする傾向が生まれている。その分、地方の経済も委縮している」と指摘。より地方に配慮した制度設計への変更を求めました。

 また休業補償の金額については、各事業者の規模に差があるため「ある人には多すぎてバブル、他の人には雀の涙」だとして、その公平性を問いただしました。またGoToキャンペーンの実施はタイミングの問題だとして、一旦感染状況が落ち着いてからの再開に期待を寄せるとともに、感染収束地域間で先に開始するなど、実施の際の工夫を求めました。

 厚生労働省の感染者接触確認アプリCOCOAが不具合を起こしたことについては、「感染拡大を助長した可能性もある」と述べ、強く再発防止を求めました。

(2)外交安全保障

 冒頭、玄葉議員は、日本や世界にとって21世紀最大の外交課題は「中国をいかに責任ある大国に変質していくか」だと指摘。ところが現状では、中国が富国強兵路線を進み、あきらかに周辺国境の「力による現状変更」を画策する一方で、香港では「自由の灯」が消え、尖閣諸島における領海侵犯も過去最多日数に及んでいると述べました。
 このような状況では、「日中関係が正常な軌道に戻った」というような日本政府の発言には「違和感を感じる」と述べた上で、「まさかと思うが国賓として習近平主席を招こうとしているのか」と菅総理をただしました。これに対し菅総理は、習主席の訪日については「具体的な日程を調整する段階ではない」と述べた上で、「日中関係の安定は両国のみならず世界にとっても有益。さまざまな問題について、ハイレベルな協議の中で中国側に適切な行動を強く求めていく」と答弁しました。

 また今月1日から中国の国内法である海警法が施行されたことに関し、この法律が中国の接続水域で中国の管轄権の行使を目的としており、国際法違反の疑いも強いと指摘。その上で、尖閣諸島の接続水域が日米安保条約第5条(※)の対象となるのか政府の見解をただしました。これに対し茂木外務大臣が「海警法がどう運用されるか、あいまいな部分がある」などと正面から答弁をせず、玄葉議員は「接続水域は日本の施政下ではないので、5条の対象とはならない」と指摘。「今後、中国が尖閣諸島の接続水域で日本船等を排除しようとする可能性があり、見逃せない展開だ」と述べるとともに、「力の空白」を生じさせて周辺地域を不安定化させないよう政府に求めました。

 玄葉議員は、今後の日本政府の対中国外交方針として望ましいのは、(1)すでに存在する「クアッド(日米豪印4カ国連携)」に、中国の動向に次第に懸念を募らせつつある欧州各国を引き込み、「クイント(日米欧豪印5カ国連携)」とすること(2)バイデン米大統領に「法の支配」の重要性を説き、国際法律戦に持ち込むこと――であると、自身の外務大臣としての経験から提案しました。

※ 第5条:各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。(日米安全保障条約)

(3)東日本大震災からの復興

 東日本大震災から今年で10年目の節目を迎えるにあたり、政府の復興に対する姿勢をただしました。

 震災から10年が経ち、津波の被害地域では復興が総仕上げの状況にあるのに対し、原発事故の影響を受けた福島県では、依然として多くの地域が帰還困難区域となったままであることを指摘。玄葉議員は「福島県のすべての地域の避難指示を解除し、復興拠点以外の地域でも人が住めるようにするため、これらの地域における除染や放置家屋の解体をやると明言して頂きたい」と菅総理に求めました。しかし答弁に立った梶山経済産業大臣は、「そういう要望は聞いている。そうした自治体側の要望を踏まえつつ、どのように拠点地域以外の避難指示を解除していけるか、引き続き検討する」と回答するにとどまり、言質を与えませんでした。