衆院本会議で9日、所得税法等の一部改正案の趣旨説明があり、会派を代表し日吉雄太議員が登壇しました。

 日吉議員は冒頭、「東京オリパラ組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言に対して、有志で、白い服装、胸に白いポケットチーフ、白いバラを身につけ、女性参政権のシンボルである『白』をまとい、抗議の意味をこめて本会議に臨んでおります」と表明し、質問に入りました。

■総理の説明責任

 質問の冒頭、日吉議員は菅総理の長男が総務省幹部に対し、国家公務員倫理法抵触が疑われる接待を重ねていたとされる問題に触れ、与党の「説明責任無視」の姿勢を批判。国民の信頼を損ねる行為であり、「国民の皆さまは、強い憤りをもって私たち野党も含め、国会議員全員の言動を注視している」と述べた上で、総務省に対して内部調査の期限を切るよう求めました。

■税制総論

 税制の総論として日吉議員は「コロナ禍において、私たちの価値観の大転換が起こり、生き方、暮らし方、仕事の仕方などさまざまな変革が生じている」と、足元で起きつつある社会の変化を指摘するとともに、これからの日本社会は、「競争一辺倒の格差社会」から「個人を尊重し互いに支えあう共生社会」へ、「物質的な満足感」から、より「精神的な満足感」に重きを置く社会へと深化することを目指していくべきだと訴えました。そのために税制が果たすべき役割は大きく、タイムリーかつ適切な改正が求められているとも述べました。

 今回の税制改正で「経済構造の転換支援」が大きな柱として掲げられていることについて、その方向性には賛同するものの、「喫緊の課題への対応は不十分であり、社会の歪みを抜本的に解消する道筋もまったく示されていない」と、政府が提示した改正案を批判しました。そして日吉雄太議員は、そのような社会の歪みを是正するための長期的な解決策の一つとして、原則として全ての人に確定申告を義務付けることを提案しました。

■税制改正案各論
  1. 消費税の期限付き廃止

     日吉議員は、税制で家計を下支えするということであれば、全ての人に課される消費税を減税することが一つの選択肢であり、「本来であれば真っ先に検討すべき事項のはずだが、今回の改正には盛り込まれていない」と指摘。生活に困窮する方を支援し、消費の促進を通して事業者を支えるために、経済が回復するまでの当面の間、消費税を廃止するつもりがないか、菅総理の見解をただしました。

  2. 住宅ローン控除特例の延長

     この制度の恩恵を受けられるのはローンを組める中高所得者層であり、「コロナ禍で苦しむ低所得者層には恩恵がない」と述べた上で、「住宅ローン控除の見直し、家賃補助制度の創設等、住宅政策全体の抜本的な転換を行うべきではないか」と提案しました。

  3. デジタルトランスフォーメーション(DX)及びカーボンニュートラルの投資促進税制

     DX及びカーボンニュートラルの投資促進税制について、日吉議員は「そもそも投資する余力のある大企業にしか恩恵のない制度」と述べた上で、中小企業が事業を継続し、雇用を維持できるように後押しをするのが今、税制に求められていると訴えました。

 この他、政府が納税猶予特例を予定通り2月1日をもって打ち切ったことについて日吉議員は「51万件という決して少なくない利用がある。特例の打ち切りは、社会的弱者の切り捨てに他ならない」と、政府の対応を批判しました。資産課税についても、再分配機能の強化とそれによる格差の是正という観点から、相続税・贈与税のあり方については抜本的に見直すべきだと主張しました。航空機燃料税の引き下げについては、「コロナ禍における航空産業への支援は当然とはいえ、これと比較すると、個人所得課税の減税と中小企業への減税が見劣りすることは否めない。もっと個人と中小企業にも手厚い支援をする必要があるのではないか」と問題提起しました。

■まとめ

 最後に日吉議員は、今回の税制改正が日本社会の問題点を解決する中長期的な税制上の道筋を示すという点でも、極めて不十分であるのみならず、大企業・高所得者を優遇し、中小企業・中低所得者には十分な支援がない、いわば「貧富の格差助長税制」であると強く批判。所得再分配機能と財源調達機能の低下は、高所得者・大企業優遇の税制を展開してきた政府・与党の怠慢、失策であり、「金融所得課税の総合課税化」や「給付付き税額控除」といった、所得再分配機能を回復させるような税制全体の抜本的改革が必要だと訴えました。終わりに「改革を止めているのは野党ではなく、あなた方だ」と述べ、演説を締めくくりました。

本会議代表質問 日吉雄太(所得税法等の一部を改正する法)2021年2月9日 .pdf

東京オリ・パラ組織委員会の森会長の女性蔑視発言への抗議の意を込め、有志議員が女性参政権運動の象徴とされる『白』を身に着け出席
参院議員も本会議を傍聴