立憲民主党は28日午後、つながる本部(本部長・枝野幸男代表)と障がい・難病プロジェクトチーム(PT、座長・山花郁夫衆院議員)の共催で「障害者差別解消法」(正式名称「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)の改正に関するヒアリングをオンラインで実施。3月上旬にも政府から障害者差別解消法改正案が提出される予定であることから、国会での審議に先立ち、同法の課題などについて当事者および支援者の皆さんから意見を聞きました。
開会のあいさつで、つながる本部事務総長の逢坂誠二衆院議員は、党の綱領の冒頭部分を読み上げ、そこに掲げた、一人ひとりの日常の暮らしと働く現場、地域の声とつながることを具現化する組織として「つながる本部」を設置したとあらためて説明。同日のヒアリングを、障がい者の差別解消に向けた幅広い活動につなげていく入り口にしたいと述べました。
続いて、障がい・難病PT座長の山花郁夫衆院議員は、2013年に「障害者差別解消法」が成立した際、関係団体の方々とも、「必ずしも十分ではないが、3年後の見直しのところで頑張ろう」と話をしていたと振り返り、「いよいよ見直しの機会が来た。法案の背景や内容なども伺うことで、地方議員も含めて地域でいろいろな取り組みができるのではないか。ヒアリングや意見交換を通じて一歩一歩地道に前進していきたい」とあいさつしました。
会議ではまず、障害者インターナショナル(通称DPI日本会議)の議長補佐・崔栄繁(さい・たかのり)さんが「障害者差別解消法の課題」をテーマに基調講演。崔さんは、今回の法改正について、法案提出までの経緯として、同法の附則にあった、16年4月施行から3年後の見直し規定を踏まえ、19年2月から内閣府の障害者政策委員会で検討の議論がスタート、20年6月に意見の最終とりまとめを行ったと説明。障害者差別解消法改正案のポイントとしては、「民間事業者の合理的配慮義務化」「ワンストップ相談窓口など相談体制の強化」「施行期日は、公布の日から3年を超えない範囲内」等を挙げた上で、同改正案の今通常国会での成立とともに、今年夏から来年春には国連障害者権利委員会の日本政府審査が予定されているなか、今国会での改正以外でも中長期的に解消法のバーションアップを求めました。
具体的な課題として、「実効性を上げるためにワンストップの窓口が必要。それが可能な条文を新設などしてほしい」「国連の障害者権利委員会の各国への審査で関心が高い論点の1つである女性障がい者や複合差別の問題について、日本の法制度では対応できていない。障がい女性の複合差別に関する文言を入れ込めないか」「施行期日が3年を超えない範囲では長すぎる。施行は公布から1年後くらいにしてほしい」などと列挙。また、障害者基本法についても課題を残しているとして、基本法の改正の必要性にも言及しました。
講演後には、関係団体の皆さんがそれぞれコメント。「難病のこども支援全国ネットワーク」の福島慎吾さんは、「障害者差別解消法施行の際には力強い法律になると喜んでいたが、学校教育にまつわるトラブルの解決には極めて無力だ。学校を含めて、行政機関における合理的配慮は、民間事業主におけるものと比べて、より高い次元のものが保証されるべきであり、ぜひ規定してほしい」、「DPI女性障害者ネットワーク」の藤原久美子さんは、「女性の複合差別解消のためには、やはり合理的配慮の義務化。障害者政策委員会の意見を尊重することを求めたい。女性の複合差別を解消するための適切な措置を取るためには、差別解消法や基本法に差別解消のための条文を入れるべき。女性のエンパワーメントのための研修やワンストップ窓口の創設も重要だ」などと述べました。
「全日本難聴者・中途失聴者団体連合会」の新谷友良さんは、特に新型コロナウイルスワクチン接種の実施に関して、「日本には1000万人を超える中途失聴者がいて、意思疎通が電話や口頭での説明が音声によってのみ進められることに非常に大きな不安を持っている。ワクチン接種の連絡は電話だけではなくて、FAX、パソコン・スマホによる予約を可能にしていただきたい。中途難聴者への筆談もしくはコミュニケーションボードによるサポート、音声案内説明についての字幕表示などの対応をしてほしい」と求めました。
「インクルーシブ教育の会」の福地健太郎さんは、「合理的配慮を義務化するにあたって私立の学校や大学にも合理的配を義務化することを明確にしていただきたい。日本のような分離教育は、区別であり、差別、国連障害者の権利条約に反するもの。将来的に差別解消法においても、学校教育における区別や分離は差別であると定義するようにお願いしたい」、「ピアサポートみえ」の杉田宏さんは、「学校教育では現在の差別解消法の相談窓口が実質的に機能していないという問題がある。例えば、地域の学校に就学したいと思っても、教育委員会によって拒否されることが多い。介護士や看護師をつけることができないという理由から、地域の学校への就学を諦めざるを得なかったり、逆に介助者や看護師がつかない代わりに保護者による付き添いを強いられていたりする。現状では実質的に何も解消していない」とそれぞれ、障がい者への理解が進まず、差別が解消されない現状を訴えました。
「全国『精神病』者集団」共同代表の関口明彦さんは、現在、障がいに基づく差別を受けた側が負っている挙証責任を、差別をした側に追わせる形にしてほしいと要望。発達障害当事者協会の嘉津山具子さんは、障害者基本法におけるさまざまなサービスが精神障がいと同様の扱いとなっていることから、発達障がいのサービスの実情に合わないケースが事例として上がっていると指摘、基本法の改正を求めました。
当事者や関係団体のさまざまな意見を受け、障がい・難病PT顧問の原口一博副代表は、今回の法改正に当たっては、インクルーシブ教育や学びの権利、アドボケート(権利擁護を担う養護者や代弁者のこと)してもらう権利を書き込むよう求めていきたいと表明。ほかにも参加した小宮山泰子、金子恵美、道下大樹各衆院議員、石橋通宏、川田龍平、横沢高徳、岸真紀子各参院議員らは、「当事者や現場の方々の意見を今後の国会質疑に生かしていく」「積み残された課題については、引き続き一緒に議論し前に進めていきたい」「法律ができても現場では理解や配慮が足りず取り組みが進んでいないと実感。地方議員とともに現実に差別をなくすためにどうしたら機能するのか、地方議員とも連携して動いていく」「当事者の皆さんの声を反映させられるよう、理解の輪を広げ、誰一人取り残さない社会を作っていきたい」などと発言しました。
会議には、障がい・難病関連団体の皆さんをはじめ、党所属の自治体議員や総支部長などが参加、司会進行は障がい・難病PT事務局長の早稲田夕季衆院議員が務めました。
立憲民主党は、今後の法案審議において同日上がった意見も含め、当事者や関係する団体の皆さんからいただいた声を法改正に活かすべく、取り組んでいきます。