衆院本会議で2日、地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案に対する討論が行われ、衆院会派「立憲民主党・無所属」を代表して松田功議員が賛成の立場から討論を行いました。

 冒頭、コロナ禍の自粛すべき時期にもかかわらず総務省の職員が高額の接待を受けていた問題について、武田総務大臣に第三者による検証委員会の立ち上げを求め、国民とともにしっかりとチェックしていく考えを示しました。また、長男が関与した問題の責任を明確にしていない菅総理に、「総務大臣在職中に長男を秘書官に登用、その後、長男は総務省の許認可を必要とする東北新社へ入社されました。一連の流れの中で、決して関係ないと言い切れるものでは無いことを自覚していただきたい」と強く迫りました。

 また、1998年の大蔵省の接待汚職事件により、官僚が逮捕され、大臣、日銀総裁が引責辞任し、大蔵省の解体へとつながった後、国家公務員倫理法が施行された経緯を振り返りました。安倍政権発足後、文書の改ざん、虚偽答弁など忖度政治が横行していると、政と官の倫理観の低下を強く批判しました。国民に疑念が残るような調査で終了することが無いよう、菅総理から武田総務大臣に強く指示するよう求めました。

■地方税法等の一部を改正する法律案について

 松田議員は、地方自治や地方税法についての課題を次のとおり指摘しました。

(1)本来目指すべき分権社会に向けた、税源の移譲がなされていない点は、極めて残念であるといわざるを得ない。

(2)固定資産税の据え置きはコロナによるダメージに苦しむ納税者にとっては負担軽減となるが、一方で、市町村税の基幹税であるにもかかわらず、税収減になる自治体に対する代替の税源確保等の措置が講じられていない。

(3)車体課税の環境性能割税制では、新車を買わない限り税金は安くならず、自動車を買わない人にも恩恵はない。交通政策全体の視点には乏しいと言わざるを得ない。

(4)住宅ローン控除が延長されるが、新規購入や増改築に限っており、借家住まいを続ける人や、増改築しない人には無関係。幅広い国民に恩恵があるよう、家賃補助や住宅手当の創設などを検討するべき。

 しかしながら、新型コロナウイルス感染症により、納税者の負担が増大している現下の状況にかんがみ、固定資産税の負担軽減、航空機燃料譲与税の譲与割合の引き上げ等の税制上の措置を講じることは必要であり、法案に賛成することにしたと述べました。

■地方交付税法等の一部を改正する法律案について

 つづいて、地方自治体の財源、地方交付税法の課題について次のとおり指摘しました。

(1)地方財源不足の縮小、折半対象財源不足の解消、臨時財政対策債の減額、交付税特会の着実な償還のいずれも実現できず、地方財政の危機的状況はますます深まっている。

(2)地方から縮減・廃止を求められていた、赤字地方債である臨時財政対策債は、5兆4796億円。過去の臨財債の元利償還金をまかなうためにも3兆7627億円の増発となり、借金を借金で返済する異常事態が拡大している。

(3)交付税総額確保のため、各種の繰延べ策を積み上げているが、後年度の一般財源確保の余地を考えると、そうそう多用できる対策とはいえない弥縫(びほう)策である。

(4)地方交付税算定の元となった国の成長率や税収見通しが非常に甘く、当初予算では高く見積もり、補正で減額することが常態化しかねない懸念がある。

(5)デジタル推進や災害対策、地方回帰支援など、施策の方向性は否定しないが、地方が自由に使えるはずの一般財源の「補助金化」が拡大していることについては、懸念が残る。

(6)本来の地方交付税法6条の3第2項に基づく交付税の法定率の引き上げ等を含めた抜本的な改革が見送られているのは問題。総務省の概算要求で毎年度の事項要求にとどまっている「法定率の変更」を本格的に議論しなければならない。

 他方、2021年度の地方財政は、税収が3.6兆円の大幅な減収となり、地方財源不足が前年度比5.6兆円増の10.1兆円にまで拡大している中で、あらゆる手段を講じ、前年度を上回る一般財源総額を確保したことは、自治体の新年度予算における安定的な財源に目途をつけたやむを得ない措置であったとの認識を示しました。その上で、課題は山積しているものの、住民や事業者の命と暮らしを支える自治体現場を支援するため、賛成するに至ったと表明しました。

 松田議員は最後に「地方財政計画は、地方全体の標準的行政水準の姿を具体化するとともに、毎年度の財政運営の指針としての役割をもっており、今後どういう社会を目指していくのか、福祉国家としての日本の姿に大きな影響を与えることになる。立憲民主党は、コロナ禍だからこそ、地方の皆さんとともに、従来の中央集権的なシステムから脱却し、分権・自治の花開く社会を目指し、地方税財政制度のあるべき姿を描いていかなければならない」と主張し、討論を結びました。

地方税法、地方交付税法改正案賛成討論(予定稿).pdf