東日本大震災・原発事故から10年を前に9日、衆院東日本大震災復興特別委員会が開かれ、平沢復興大臣の所信演説に対する質疑が行われました。立憲民主党から質問に立った、玄葉光一郎、山崎誠、金子恵美、小熊慎司、階猛、岡本あき子各議員は、災害関連死を含めて、亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された方々にお見舞いの言葉を述べ、被災地の現状や課題について平沢復興大臣はじめ政府の見解をただしました。

玄葉光一郎議員

 玄葉議員は、(1)帰還困難区域における特定復興再生拠点以外の地域(2)復興・被災者支援に取り組むNPOへの支援強化――について質問。帰還困難区域における特定復興再生拠点内に戻ってくるかどうか、帰還するかどうかを決める1つの材料にもなる、拠点以外の地域についてどう道筋をつけるかが、最大の残された課題の1つだと述べ、拠点以外の地域のなかの必要な家屋の解体や除染を含めた措置にかかる費用についておおよその試算をしておくべきだと主張。拠点については、必要な家屋の解体や除染も含めた措置に現状で約2700億円かかっていることを確認した上で、「例えば全町避難を余儀なくされた方々が、少なくとも必要な家屋の解体とか必要な除染をしてほしいということは、決して無理な要望ではないと思う。類推するに、数千億円単位で可能だと思うし、東電に求償することも場合によっては可能だ。少なくとも今年中くらいには全体の方針を決めてもらいたい」と求めました。これに対し平沢大臣は「検討を加速度的にやっているところ」と答えるにとどまりました。

 玄葉議員は、この10年間を振り返り、「NPOは復興の大変強力なパートナー」だと評価。財政的に事業が困難になっているNPOも出てきているとして、これから例えば移住の話を考えた時、移住者や自治体ではなく、NPOにある程度の財政支援をした方が心の問題も含めて環境を整えていくには効果的なのではないかと提起すると、平沢大臣は「もっともっとしっかり取り組めるようにしていきたい」などと応じました。

山崎誠議員

 山崎議員は、(1)東京電力福島第一原子力発電所事故からの避難者(2)東京電力福島第一原子力発電所事故をめぐる問題――について質問。国家公務員宿舎に住む、区域外避難者の方々に対し、福島県はセーフティーネット契約の期限が切れたことで、2019年より損害金と称して2倍の家賃請求を続け、2020年12月には緊急連絡先に当たる親族宛に、「速やかに国家公務員宿舎から転居するよう、特段のお力添えを」「ご親族が自主的に移転されない場合は、訴訟などの法的手段に移行せざるを得ない」といった内容の文書を送付していることを取り上げ、「これが原発事故で傷ついた被害者への対処として正しいと言えるのか。これは正しい、適切だと考えるのか」と平沢大臣に見解を求めました。

 平沢大臣は、「今の文書は、これは福島県の担当課長名で出されたもの。国は、このような福島県の考え方を尊重しながら、引き続き、役割分担を基本として、連絡を取り、避難者の方々の生活再建を支援していきたい」などと答弁。山崎議員は「この問題については、今までの大臣含めて『国が前面に立って福島県と寄り添って対応する』という答弁を何度もいただいている。国は関係ない、そうおっしゃりたいのか。残念でならない」と述べました。

 これに関し東京電力の文挾副社長は、「自主避難者の方々に対する支援のあり方については、今後も、国と関係者のご意見を伺って考えていきたい」と答弁。山崎議員は、「今のご回答は、昨年の5月21日の当委員会で私が小早川社長に質問したときと同じ」だと指摘。昨年の質疑の際、自身からはこうした避難者の支援のために民間主導で基金などを作って支援をしてはどうかと提案したことにも触れ、「どんな検討をされたか、検討状況を教えてほしい」と尋ねました。しかしながら、文挾副社長同じ答弁を繰り返すのみで、山崎議員は「何にもやっていないということじゃないか」と苦言を呈し、前向きに、迅速な支援をと求めました。

金子恵美議員

 金子議員は、(1)真の復興に至るまでの財政措置の必要性についての認識(2)特定復興再生拠点地域外の帰還困難区域についての方針(3)国際教育研究拠点の基本構想策定に向けての取り組み――等について質問。「復興と廃炉は一体となって進んでいると思っている」と述べ、内堀雅雄・福島県知事が記者会見で、「政府からの財源措置は廃炉の期間と連動する。すなわち30年から40年だ」と発言した意義を強調。真の復興に至るまで十分な財政措置を講じるよう求めました。

 原発事故による帰還困難区域を抱える5町村(浪江、双葉、大熊、富岡の4町と葛尾村)でつくる協議会が2月26日、国に対し、特定復興再生拠点区域(復興拠点)以外の避難指示解除について、具体的な方針を6月までに示すよう要望したことにも触れ、早急に方針を決めてもらいたいと要請。平沢大臣は、「要望を重く受け止め、政府として検討を加速化させたい」などと答えました。

 金子議員はまた、同日閣議決定された、2021年度から5年間の第2復興・創生期間に向け、新たな復興の基本方針について、「避難指示が解除された地域への移住促進」や「国際教育研究拠点の新設」といった新たな話はあるが、実際にどのように動いていくかが見えない、見えにくい基本方針だったと指摘。国際教育研究拠点についても、2月22日には第1回目の関係省庁会議が開かれるなか、今後のスケジュールはどうなるのかと質問しました。これに対し平沢大臣は、「これから検討する。具体的なことは決まっていない。世界級のものをつくることは間違いないが、細かいことはこれから」と答えるのみでした。

小熊慎司議員

 小熊議員は、(1)ALPS処理水(2)風評被害――について質問。多核種除去設備(ALPS)を使って「汚染水」から大部分の放射性物質を浄化処理したALPS処理水は、東京電力福島第一原発の敷地内に設置されたタンクに保管されていますが、2022年夏には敷地内のタンクが満杯になる見通しとされていました。この取り扱いは重要な課題の1つであり、立憲民主党が提案している敷地外での地上補完を続けるという提案を準備するにしても、2年はかかるにもかかわらず、政府はいまだに判断していません。小熊議員は、「まだ決めていないことに対して支障はないのか。技術的な問題を含めて、準備期間を含めると、いつまでに決定しなければいけないのか」と迫りました。

 これに対し江島経済産業副大臣は「タンクが満水となる時期は、降雨の状況や汚染水の発生状況、雨水対策の効果等を検証しながら継続的に精査をしているところ。当初の見込みと比較して、少なくともその差分については満水時期の見通しが後ろ倒しになると考えている。一方で、現在と同様の状況かどうかはまだ不透明。慎重に評価をしていかなければならない」と答弁。東京電力の文挾副社長も「2020年の夏以降になるという見通し」「準備期間は、やはり2年程度はかかるものと考えている」などと答え、政府がいまだに判断していない状況に対して納得いく説明はありませんでした。

 小熊議員は、所信表明で「適切なタイミングで、政府として、責任を持って結論を出す」と述べた平沢大臣の認識をただしましたが、平沢大臣は「技術的な問題もいろいろあり、経産省の方ででやっている」と答弁を拒否。小熊議員は「所管は経産省だが、大臣が所信で適切なタイミングという言葉を使っている。復興庁は元々ワンストップで決断する象徴だった。理解してもらわなければ困る」と無責任な大臣の対応を批判しました。

階猛議員

 階議員は、(1)交流・関係人口増加策の検討状況(2)移住・定住促進策の検討状況(3)造成宅地の空き区画や移転跡地の利活用促進策の実施状況――について質問。昨年、復興庁の期限を10年間延長する法案のときの付帯決議に「新型コロナの非常事態措置により人の交流や移動の自粛が求められていることから、収束後を見据えた観光業等を支援するための対策を検討する」とあることに関連し、自身が3月2日の予算委員会の質疑で、「コロナの感染拡大防止に成功した地域においては地方創生臨時交付金に特別枠を設けて財源を追加配分して、自治体が独自に観光、交通、飲食関連の需要喚起策を講じることができるようにすべきではないか」と提起、これに対して菅総理から、「地域の中で一番痛んでいるところにその対策というのは当然必要」との答弁があったことを紹介。被災地は、まさに一番痛んでいるところだとして、過日、被災地のあるホテル、家族経営のところに話を聞いたところ、「コロナ前の同じ時期と比べて7、8割の減収で、家族は経営陣なので雇用調整助成金ももらえず、ただ働きだ」ということだったと述べ、三陸沿岸のようなコロナ感染抑止地域において、被災地の観光事業等を支援するため、地方創生臨時交付金に特別枠を設けて必要な財源を追加配分しすべきではないかと主張。あわせて、三陸沿岸地域は、観光庁などが推進していくという、ワークとバケーションを合わせた言葉である、ワーケーションのモデル地域としてふさわしいのではないかと述べ、「感染拡大を防げると同時に三陸海岸の活性化、政府が進めるデジタル化とも軌を一にしている。何よりも、震災の経験があるので防災意識の向上にも貢献するということで、最適ではないかと思っている」と提案しました。

 また、同じく付帯決議にある「移住・定住促進策の検討」に関連し、オランダのある老人ホームで行っている、毎月30時間高齢の入居者とともに時間を過ごすことを条件に、学生が無料で入居できるとする取り組み紹介。災害公営住宅の空き室増加を防ぎ、入居者の孤立を防ぐため、入居高齢者の見守り等を行うことを条件に、現役世代や若者世代に低廉な家賃で入居させる取り組みをすべきではないかと提案しました。

 階議員のさまざまな具体的な提案に、平沢大臣も「面白い、ユニークな取り組みで大きなヒントがある。参考に検討したい」などと答弁、前向きな姿勢を示しました。

岡本あき子議員

 岡本議員は、(1)2月13の福島県沖地震の被災者に対する救済措置(2)被災地域全体への移住促進――等について質問。本年2月13日夜、福島、宮城両県で最大深度6強を観測した地震に関しては、東日本大震災の余震とみられることから、「被災した方々に対し同様の復旧・復興事業のスキームや復興特別会計を活用できないか。一連の対象として扱ってほしい」と求めましたが、政府は「必要な支援は講じていく」と述べるにとどまりました。また、移住の促進について、一般的な地方創生政策とは別に、「新たな東北」への具体的な支援策として、被災地に対し「課題先進地」としての交付金を活用してもらえないかと提案しました。