「経済財政予測のPDCAサイクルを構築する」(階猛衆院議員)。11日、末松義規衆院財務金融委筆頭理事、日吉雄太同委員会次席理事、階猛衆院議員、および国民民主党の前原誠司代表代行が「経済財政等将来推計委員会設置法案」等、2法案を衆院事務局に提出。同2法案は、わが国の経済及び財政等に関する将来の推計を行うための「経済財政等将来推計委員会」と呼ばれる新たな組織を国会の中に設置する内容です。
法案提出後の記者団の取材に応じ、末松筆頭理事は「財政再建を視野に入れた形で、しっかりと客観的な立場から将来の経済・財政の推計をしていこうというのが法案の趣旨だ」と紹介し、その後、筆頭提出者の階議員が内容を説明しました。
■法案提出の背景
新たに委員会を設置する目的について階議員は、「今後5年間は国会の承認なく、政府の一存で赤字国債を発行できる法案(特例公債法改正案)が衆院を通過し、現在、参院で審議されている。来年度の予算では、赤字国債の発行額は37兆円。コロナ禍ということもあり、支出がどんどん増えてきている。これから5年間、政府が赤字国債を『発行し放題』ということになると、コロナ禍の後に、財政危機が訪れるリスクも高まってくる。そこで今、支出されたものによって、将来どのような財政的な影響が出てくるのか。あるいは支出が経済にとってプラスなのかマイナスなのか。政府とは一線を画す『経済財政等将来推計委員会』というものを新たに国会に設置し、こうした将来推計を(客観的な立場から)行っていく建付けだ」と説明しました。また内閣府が定期的に出している経済財政の見通しについても、前提となる経済成長の予測が甘かったり、金利や物価の前提が支離滅裂だったり、政府に都合の良い見通しが示されるようになってきていると述べ、そのことも今回の法案提出の理由の一つだと説明しました。
■新組織の具体的な活動内容等について
新組織の原型について、2011年の原発事故の際に設けられた「事故調査委員会(東電福島原発事故調査・検証委員会)」を参考にしたと述べました。「両院のメンバーからなる議員運営委員会の合同協議会を設け、そこで外部の有識者を中心に、この委員会のメンバーを決めていく」とした上で、「この委員会は自ら推計を行うこともできるし、外部のシンクタンク、研究機関を利用して推計を行うこともできる。またさまざまなデータを取り揃えるために国政調査権を行使しながら正しい情報を入手し、客観的・中立的な将来推計をしていく」と、組織の具体的な活動内容について説明しました。
あわせて米国や英国にも同様の組織が存在することや、経済同友会や連合からも同様の趣旨の機関の設置を求める声が上がっていることも指摘しました。
■財政出動政策との整合性等について
コロナ禍で立憲民主党が求めている財政出動と、法案との整合性について記者から尋ねられると「われわれは、財政出動自体を否定するものではないが、あまりに赤字国債頼みというのでは、将来もしインフレが進んだ時に、財政が立ち行かなくなるだろう。今、赤字国債は、現実には日銀の支えがあって初めて消化できている。将来の財政破綻を防ぐためにも、こういった組織は絶対に必要だと考えている。何も矛盾はしてない」と説明しました。
2019年6月に、当時の国民民主党が参院に提出した法案との違いについて尋ねられると、階議員は「当時、私は衆院だったが、参院の浜口誠議員と一緒に立案をした」と経緯を説明。その上で「当時の法案と2つ違いがある。1つは、両院が報告書を提出するが、今回新たに内閣にも報告書を送付して、内閣から見解を報告させるというフィードバックの仕組みを設けた。2点目は、最近ではGoToキャンペーンをはじめ、補正予算などで大規模な政策が打ち出されることがあり、そうした新たな予算について、将来、経済や財政に対してどのようなインパクトがあるのかを、必要に応じてこの委員会で予測をする。こういう機能を付け加えた」と述べました。
最後に階議員は「新委員会の報告に対して、政府の方から回答を求める。違いがどうして生じているのかなどについて回答を求め、そして国会で議論して改善を求めていく。PDCAサイクルを設けることによって、政府に対し予測の精度向上も迫っていく。これは行政府にとっても役立つことになるのではないか」と述べました。
1.【ポンチ絵】経済財政等将来推計委員会関連法案について.pdf
2.【概要(ポイント)】経済財政等将来推計委員会関連法案のポイント.pdf
3.【要綱】将来推計委員会法案.pdf
4.【法案】経済財政等将来推計委員会設置法案.pdf
5.【新旧】将来推計委員会法案附則.pdf
6.【要綱】国会法の一部を改正する法律案.pdf
7.【法案】国会法の一部を改正する法律案.pdf
8.【新旧】国会法の一部を改正する法律案.pdf