立憲民主党経済政策調査会(会長・江田憲司衆院議員)は16日、国会内で会議を開催。城南信用金庫名誉顧問の吉原毅氏、城南信用金庫城南総合研究所特別顧問の楠達史氏から「自然エネルギー革命で日本経済は再生する」をテーマに、アライアンス・フォーラム財団代表理事の原丈人氏から「経済危機に対応する会社法制の強靭化について」をテーマにご講演いただきました。

 冒頭、江田憲司会長は、「来るべき総選挙での経済政策の策定に向け、いま多方面にわたって検討している。今後の日本社会、経済のあるべき姿のキーワードは分権だと思っている。地域おこし、格差是正、貧困撲滅を図っていくのが自然エネルギーだと思っている」とあいさつしました。

 「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」の会長でもある吉原氏は、「エネルギー革命で、太陽光や風力などを拡大していくと設備投資が必要になる。設備投資をすると、消費が伸びてGDPも増える。一部の金融投資家だけでなく中産階級の人たちも潤う。原発をやめることでみんなが安全・安心になる。自然エネルギーのいいところは、地方にも豊かさがあまねく行き渡り、エネルギーの自給もできるので外国からエネルギーを購入しなくて済む。年間25兆円のエネルギー費がゼロになったら、25兆円の減税と同じ。一石七鳥だ。野党だからこそ、明るく前向きな政策を打ち出していただきたい」と力説。1ギガワットの設備容量の原発1基を作るのに1.5兆円かかるのに対し、同じ1ギガワットの設備容量の太陽光発電は1000億円と、15分の1に過ぎず、加えて原発は、使用済燃料の処理および処分に必要なバックエンドコストが天文学的に高いとして、自然エネルギーの拡大が経済成長につながると指摘しました。農業を行いながら太陽光発電も行うという、営農型太陽光発電にも言及し、「460万ヘクタールの農地を活用すれば日本は(エネルギーを)完全自給できる。何より潤うのは一般の農民。一般の人たちが潤うように経済を立て直していけば素晴らしい社会になる」などと話しました。

 楠氏は、日本のエネルギー政策の要諦の前提であるはずの安全性について、原子力規制委員会の規制基準は、大規模な損壊が発生した場合の対応に係わるものであり、あらゆる事態下での「大規模損壊未然防止」のための規制基準ではなく、原発の存立が依拠する基準となり難いとの見解を明示。再生可能エネルギーを国内で活用することによる効果としては、CO2削減による温暖化防止や、地政学的リスク・大規模爆発事故リスク等の回避によるエネルギー安全保障の確立、経済活性化などを挙げました。

 その上で、税制のあり方については、米国には付加価値税がないことや、消費税の逆進性などを指摘し、「安定的経済成長と税収確保の同時達成のため、基幹2税(所得税・法人税の両税、消費税なし)の税制にして、『少子化低迷社会』から『豊かな社会』創りを目指したい」との考えを示しました。

 後半は、「公益資本主義」を提唱する原氏が講演。原氏は、小泉政権から始まり現在まで継続する「株主資本主義」により、中間層の減少を招いたと指摘。本来社会の公器であるべき企業が、市場万能・株主至上主義で貪欲な経営を正当化、結果として株主価値を最大化する一方で労働分配率の低下、停滞が進み、従業員1人当たりの平均報酬額は上がっていないと述べました。

 「企業は公共的なもの」だと強調する原氏は、企業に一定規模の資金を留保する制度に改めることで、感染症や自然災害、周辺諸国の有事の際に、政府の支援や銀行借入れに頼らず、従業員や家族の健康と生活を守り、事業を継続することができるよう、会社法制を強靭化する必要があると主張。会社を支える構成員である従業員や顧客、仕入先、地域社会、地球といったすべての社中に貢献することにより企業価値を上げ、その結果として株主にも利益をもたらす「公益資本主義」への転換を訴えました。

 公益資本主義の実践原則として、(1)会社が生み出した利益を株主に偏重して配分するのではなく、従業員、顧客、仕入先、株主に適正に分配(2)持続性を持った分配を行えるよう中長期的な視点での経営(3)イノベーション起業家精神を持った経営――の3点を列挙。公益資本主義に転換することで、勤労所得を倍増し日本人一人ひとりが豊かになり、天寿を全うする直前まで健康でいられる最初の国を目指すべきだと説きました。