「解除は時期尚早。リバウンド(感染再拡大)の兆候すら見える中での緊急事態宣言解除には、反対せざるを得ない」――枝野幸男代表。18日午後、衆院議院運営委員会が開かれ、首都圏1都3県の緊急事態宣言解除方針の国会への事前報告と各党の質疑が行われました。立憲民主党からは、枝野幸男代表が質問に立ちました。

 枝野代表は、緊急事態宣言解除には「反対せざるを得ない」と主張する一方で、経営が成り立たなくなっている全ての地域の事業者に対して「事業規模や影響の度合いに応じた、きめ細かい」支援を行うことや、「おひとり様」や家族での飲食店の利用について制限を緩和するなど「(飲食店の)営業が少しでも可能になり、客足が戻る方向での自粛要請の緩和」などを政府に求めました。

■感染のリバウンド懸念と緊急事態宣言解除

 冒頭、枝野代表は東京や埼玉での感染状況を「既にリバウンドが始まっていると言わざるを得ない状況だ」と形容しつつ、「この状態で解除すれば、感染者が急増する可能性が高い。解除は時期尚早であると言わざるを得ず、反対せざるを得ない」と述べました。そして宣言解除どころか「むしろ感染者が急増したり、リバウンドの兆候が見られる地域の追加こそ、検討すべきだ」と訴えました。

■宣言解除と菅総理の政治的責任

 その上で、2月2日に菅総理が「(1カ月で宣言を解除できなかった)責任は全て私が負う」と述べたことに触れ、菅総理の政治責任に言及しました。枝野代表は「この間ギリギリの状態で頑張ってきた医療従事者、感染リスクの高い高齢者や障害者とそのご家族、そして介護にあたっている皆さん。この2カ月あまりご苦労を頂いてきた事業者、国民の多くの皆さんも、第4波にはとても耐えられない。十分に感染が収まらないまま、宣言解除を強行して第4波を生じたら、内閣総辞職では済まない大きな政治責任が生じる」と指摘。そして菅総理に「その覚悟と『私が負う』とおっしゃった責任の意味についてお尋ねをしたい」と問いかけました。

■困窮者に対する支援

 今回の宣言解除によっても、飲食店などへの時短要請は相変わらず続くことや、国民への自粛要請も継続することから、解除を最も期待してきた事業者にとっても「何のための解除かわからない」と枝野代表は指摘。立憲民主党が持続化給付金の再給付を提案していることに触れ「今必要なのは、飲食店や宣言対象地域に限ることなく、経営が成り立たなくなっている事業者の皆さんに対して、事業規模や影響の度合いに応じた、実態に合ったきめ細かい支援を行うことだ」と訴えました。

 また生活困窮者に対する支援についても、「子育て世帯への支援は実現に向かうようだが、さらに幅広く生活困窮者全体への支援、さらには中間層まで含めた支援を行うことも必要だ」と主張しました。

■飲食店へのガイドラインの変更

 飲食店への営業自粛要請については「いわゆる『おひとり様』による外食や、同居している家族での外食など、新たな感染拡大につながるリスクが低い飲食を制約する、あるいは自粛をお願いする必要があるのか。換気やアクリルボードなど感染拡大防止策を徹底すれば、相当程度リスクを下げることが可能なのではないか」と現行のガイドラインの見直しを訴えました。

 また「部分的に、zeroコロナが達成されている地域においては、他地域からの来訪者やその接触者を含む会食は、当面自粛いただくとしても、地域内の方々に限った会食は、リスクが低いのではないか。時短要請の若干の緩和だけでなく、このような感染リスクを抑えながらも、営業が少しでも可能になり、客足が戻る方向での自粛要請などの緩和をきめ細かく進めていくべきではないか」と政府の現行の政策に疑問を呈しました。

 そして閣僚の一人が「宣言の効果が薄れている」と述べたとか、助言組織の専門家が「もう打つ手がない」と述べたなどと伝えられていることについて「効果が十分でない原因は、政府の中途半端な姿勢にある」と批判。「もう打つ手がないどころか、打つべき手が打たれていないことこそが問題だ」と訴えました。

■zero(ゼロ)コロナ戦略

 立憲民主党が「zeroコロナ戦略」として、徹底的な封じ込めでリバウンドのリスクを最小化することを具体的に提案していることについて触れた上で、検査体制の拡充に関して、枝野代表は以下の4点を主張しました。

(1)症状の出ていない感染者を把握するため、濃厚接触者には限定しない、幅広い検査を実行する。
(2)医療従事者や介護従事者に対する公費による定期的な検査をより徹底するとともに、学校や保育所、学童保育など、濃厚接触が避けられない場に幅広く拡大する。
(3)全ての感染者について変異株の検査を行い、遺伝情報を追いかけるためのゲノム解析も拡大する。
(4)入国者に宿泊施設を提供し、事実上全員に入っていただくなど、十分な隔離と検査を徹底する。

 こうした提案の方向性については、これまでの政府の対処方針でもある程度採用されてはいるものの、示された対策が「遅々として進んで来なかった」と枝野代表は指摘。またその原因について「国立感染症研究所、地方衛生研究所、そして保健所という、厚生労働省の縦割り構造に対するこだわりが壁になっているからだ」と述べました。さらに「縦割りの壁を乗り越え、民間の最新鋭機器や民間検査の活用など、受け身でなく能動的に進めること。特にゲノム解析については、大学などの持つ能力を最大限に活用するために、より主体的な協力をお願いする」と、オールジャパンの体制に急ぎ転換することを求めました。

■質問終了後の記者団との会見

 枝野代表は質問終了後に記者団の取材に応じ、緊急事態宣言の解除について「今回の宣言の当初から、第4波は『絶対に許されない』ということを申し上げてきた。3度目の緊急事態宣に陥るようなことになれば、多くの事業者、あるいは個人の暮らしが成り立たなくなる。そうした状況の中にも関わらず、リバウンドの兆候が見えているにも関わらず解除するということには、到底賛成できない」と述べました。

 また委員会質問について自身の所感を問われると「5分間という限られた時間でありましたが、こちらとしては伝えたいこと、あるいは国民の皆さんにお届けをしたいメッセージは、お届けできたと思っている」と語りました。その上で「なんといっても残念なのは、『総理の覚悟』という、こうした緊急事態で大事な判断をするにあたって最もリーダーとして問われること、そして国民の皆さんにしっかりと伝えなければならないことについて、お答えをいただけなかったことだ。総理には『覚悟がない』ということが明らかになったというのは、甚だ残念だった」と述べました。