「これまでの治水は、抜本的な対策とは言えなかったのではないか」――小宮山泰子衆院議員。23日、衆院本会議において「特定都市河川浸水被害対策法等改正案」(流域治水関連法案)の趣旨説明と質疑があり、小宮山国土交通部会長が登壇しました。同法案は、近年、気候変動等の影響により全国各地で水災害が激甚化・頻発化していることに対応するためのもの。ハード整備の加速化・充実や治水計画の見直しに加え、上流・下流や本川・支川の流域全体を俯瞰し、国や流域自治体、企業・住民等、あらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」の実効性を高めることを目指す内容です。

 冒頭、小宮山議員は武田良太総務大臣の会食問題について触れ、総務省の利害関係者であるJR東海の葛西敬之名誉会長となぜ会食をしたのか、また株式公開買い付け当事者であり、総務省にとって最も深い利害関係者の一つであるNTTとNTTドコモのトップがその場に同席する事を知ってから「何故、即座に退席しなかったのか」と、武田大臣をただしました。

 本法案については、(1)これまでの治水政策の総括(2)治水分野における農林施策との連携(3)水災害を含む総合的な施策が協議される水循環基本計画との整合性(4)特定都市河川の流域における限定的な制度とした理由(5)特定都市河川の指定のない河川の流域における、土地の利用規制等の対策(6)生態系ネットワークなど、地域の生態系や生物多様性を治水と共に構築していく考え(7)ダムの事前放流の取組の強化(8)政策実行、事業への予算付けの公平性、公正性の確保――等のテーマについて政府をただしました。

■これまでの治水政策の総括

 小宮山議員はまず「水防災意識社会」の再構築の取組が進められる中、毎年のように大規模な水災害が起き、人的・物的被害が絶えない状況を指摘し、「これまでの治水は、抜本的な対策とは言えなかったのではないか」と赤羽一嘉国土交通大臣を問いただしました。 

■農林施策など他分野の政策との整合性

 その上で、今回の流域治水関連法案で新たに設置する、国や流域自治体、企業・住民等のあらゆる関係者が協働して取り組む「協議会」と、「水循環基本法」に基づく協議会との関係性や、農林施策における治水政策との整合性についてただしました。

■「特定都市河川」の指定という条件

 同法に基づき、新しい協議会の設置や流域治水の計画に基づく雨水貯留浸透施設に係る「官民連携」、土地利用規制等の抜本的な対策が可能となるのは、全国で8水系しかない「特定都市河川」(特定都市河川浸水被害対策法)の流域に限られていることから、小宮山議員は、特定都市河川の流域における限定的な制度とした理由を政府に尋ねました。また今後「特定都市河川」の指定を拡大していった場合には、計画策定や協議会の運営に加え、計画を実施するための貯留浸透施設等を設けるために「地方公共団体の財政的負担・人的負担が生じる」として、指定の拡大を支援していくための政府の施策についてただしました。

 さらに「災害はどこでも起こりうるもの」と指摘し、特定都市河川の指定のない河川の流域における、雨水貯留浸透施設の整備の推進や、浸水により人命への危険が想定される土地の利用規制等の対策について、国土交通大臣の見解を尋ねました。

■縦割り行政の壁を越えて

 生態系ネットワークなど、地域の生態系や生物多様性を治水と共に構築していく考えがあるか、小泉進次郎環境大臣をただすとともに、利水ダム等の事前放流を効果的に実施するためには、従来の縦割り行政の壁を越えた流域治水実現のための連携が鍵となると指摘。今後どのように連携し、取り組んでいくつもりなのか、赤羽国土交通大臣をただしました。

■予算の公平性、公正性の確保

 最後に、法案が仮に成立した場合には「大規模な事業予算が必要となる」ことに加え、先の参議院選挙広島選挙区における河井克行元法務大臣夫妻による買収事件では、裁判において、お金を受け取った側の地方議員が「現金の受け取りを拒むと、国の助けを受けて進める地方の事業を邪魔されることを恐れた」と発言があったとの報道に言及。「与党議員がいるから予算がつく、事業が進む。そうしたことが実態なのか」と述べた上で、政策の実行や事業への予算付けの公平性、公正性の確保について、赤羽国土交通大臣をただしました。

20210324「特定都市河川浸水被害対策法等改正案」趣旨説明質疑.pdf