参院予算委員会は25日、集中審議をおこない立憲民主党から福山哲郎幹事長が質疑に立ちました。福山幹事長は(1)政府提出法案の不備(2)河井克行元法務大臣の法廷での発言(3)変異株の動向(4)ワクチン接種(5)LGBT平等法(6)東京電力の不祥事――等について質問しました。

 政府提出法案で12府省庁の所管にまたがり19法案1条約に誤字や落丁等の不備があったことについて、福山幹事長は「官僚の士気の低下とこの数の多さは異常だ」と指摘。菅総理に行政府の長として立法府へどのように説明するのかただしました。菅総理は、「全体を調査して徹底して調査する」と繰り返すのみでした。福山幹事長は、「調査が終わるまで審議はできない。審議拒否なんてしていない。(政府が)『総点検するので、申し訳ありませんが整ったら審議に入ってください』と言うのが筋だ」と述べ、1日でも早く調査を終了し再構成した法案を提出することを求めました。

 河井克行元大臣が23日に法廷で議員辞職を表明し、買収も認めたことについて、「1億5千万円の自民党の資金提供も含めて本人が買収を認めたのであれば、自民党にも責任がある」と総理に考えを求めました。菅総理は1億5千万円の使途の公表について、「検察当局に押収されている書類が返還され次第、公認会計士が内規に照らしてチェックすると報告を受けている」と資金の使い道を公開することには触れませんでした。福山幹事長が「会計士の監査は資金の入りと出が書いているだけ。使途も含めて総裁として公開、説明できますね」と求めても、菅総理は「チェックする」とのみ答えるだけで、資金の使い道を国民に説明するとは答えませんでした。
 さらに福山幹事長は、4月25日投開票の衆・参の補欠選挙と再選挙について、「(吉川元農水大臣の収賄事件での議員辞職による)北海道2区の補欠選挙で自民党は候補者擁立を断念しました。なぜ100名にも及ぶ関係者が取り調べを受け、河井夫妻が2人とも逮捕・辞職という事態で、広島選挙区は候補者を擁立したのか」と菅総理に迫りました。「自民党は地域の選挙区支部が非常に影響力を持つ」と地域での判断を踏まえるとする菅総理に、福山幹事長は「買収事件でお金を受け取った方々も、この広島選挙区の自民党候補者の集会等に出席してると聞いている。非常に問題だ」と強く指摘しました。そのうえで、この1、2年で自民党議員による逮捕・不祥事で離党、議員辞職が相次いでいることを挙げ、「あまりにも度が過ぎている。やはり長い政権は腐敗している」と述べました。

 首都圏1都3県への緊急事態宣言が21日を期限として解除されてから、すでにCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の新規感染者数が増えてきており「リバウンドの兆候が出ている」と福山幹事長は指摘。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長にこのことの評価を聞きました。尾身会長は、新規感染者数が増えている宮城県を例に、「2月7日に時短を解除したのが大きな原因の1つ。2つ目はコロナ疲れで食を介した感染が始まって、若い人から高齢者に移っている。宮城は地震があって他県からの応援も可能性がある」と3つの感染が増えている理由を答えました。さらに尾身会長は対策として、「宮城はもうすでに3月18日から県独自の緊急事態宣言を発出して今日から時短をやっていただく。それからベッドの強化をしていただいてますけど、宮城県それから国に『まんぼう(まん延防止措置)』を含めた強力な対策を検討して実施してほしい。重点リスクの高いところを中心にかなり強力な検査、それから人が足りないので保健師さんだとか感染の発見というのは大事だ。最後はやはり人々の行動が重要で、国のリーダーシップのもとに、県の人たちが今まで以上にしっかりとした感染対策、基本的な対策を取っていただければ」と説明しました。福山幹事長は、「解除の後の人の出入りが激しくなってからの状況はこれから増えてくると考えています。そして変異株は、その広がりがやはり全国に広がっています。このことについて私は心配をしていますので、ぜひ政府におかれましては対策をお願いしたい」と求めました。
 また、COVID-19のワクチン接種について、菅総理が打ったワクチンの有効期間がいつまでかを質問。田村厚生労働大臣が「長期の有効性のエビデンスは出ていない」と答弁。福山幹事長は、「総理が打たれたワクチンはどれくらい効くかわからないんですね」と述べ、日本のワクチン接種回数が遅れていることを図表で示しながら「4月に打つ高齢者は6カ月の期限なら今年の10月で切れ、また冬がやってくる」とワクチンを打ってもすぐに期限が切れて調達も少ないことに懸念をしました。また、自治体でのワクチンの接種体制について「各自治体で人口構造、医師の数が違う」と述べ、「早打ち競争をあおることはやめてほしい」と河野担当大臣に現場の状況に合わせて接種を進めるように要請しました。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催が控えている中、五輪憲章に性的指向による差別禁止が明記されていることに触れました。一方で日本には性的指向による差別を禁止する法律がないことを福山幹事長は指摘し、野党が提出しているLGBT差別解消法案を審議し成立させることを求めました。これに対し菅総理は、「LGBTと言われる方々がスポーツの世界でも偏見、不適切な取り扱いを受けるなどの困難があることを認識している。政府として適切な相談対応、周知啓発をしっかり取り組む」と答えました。福山幹事長は、「理解、啓発はもうかなり国民の中で進んでいます。特に若い世代は本当によくわかっている。それでオリンピックがあるにも関わらず、今みたいな後ろ向きな答弁だったら本当に国際社会も国内も失望感が広がる」と語気を強めました。

 また、福山幹事長は、柏崎刈羽原子力発電所でテロ対策に不備があったことをめぐり、原子力規制委員会が東京電力に核燃料の移動を禁止するなどの処分を決定したことの評価について質問しました。更田原子力規制委員長は、「極めて重大でまたかつ深刻」と述べ、「事案の具体的な詳細だけではなく管理体制のあり方、また東京電力の姿勢そのものが問われるような事案である」と評価しました。福山幹事長は、「大変遺憾に思います。10年前の反省がまったく生かされてない」と強く指摘し、質疑を終えました。