参院本会議で26日、「所得税法等の一部を改正する法律案」及び「財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案」の2法案が議題となり、勝部賢志議員が「ともに反対」する立場から討論しました。

 冒頭、勝部議員は、今この時も医療現場の最前線で職務に打ち込んでおられる医療従事者の皆さまをはじめ、介護、教育、子育てなどをはじめとしたエッセンシャルワーカーの皆さんのご労苦に「心からの敬意を表したい」と述べるとともに、そういった方々の「現場支援策の更なる充実と感染封じ込め対策に、国を挙げて取り組まなければならない」との決意を述べた上で反対討論に入りました。

■為政者に対する国民の信頼の欠如

 勝部議員は「税は納税者・国民の皆さまの政府に対する信頼によって成り立つものだ」と述べた上で、今の納税者の政府に対する信頼感の欠如を指摘。その理由として、大臣室で賄賂を受け取り議員辞職した元農水大臣や選挙買収で逮捕された元法務大臣夫妻、暴力事件や緊急事態宣言下での高級クラブ通いなどのスキャンダルや官僚接待問題、さらには資料を出さなかったり、都合の悪いことは「記憶にない」との答弁を繰り返す閣僚や官僚などの事例に言及しました。「与党は有権者・国民に対して、身を律する緊張感を全喪失したかのような有様」「『長期政権は腐敗する』とはまさにこのことだ」と与党の緩みを指摘。「今やその信頼そのものが揺らいでいると断ぜざるを得ない」と断罪しました。

 そして議題である「所得税法等改正案、及び公債特例法案」の正否を云々する以前に、「果たして現在の政府には国民の皆さまに納税をお願いする資格があるのか、国民の皆さまに借金・債務をお願いできる資格があるのか、その資格自体が欠けてしまっていると言わざるを得ないのではないか」と問いかけました。

■格差是正への気概を感じさせない税法改正

 勝部議員は「いま世界中で、子ども、女性、非正規雇用の労働者などは、極めて過酷な状況に追い込まれている一方で、各国の巨大企業や億万長者の資産は、更に拡大するという不公平・不公正が眼前に拡がっている」というコロナ禍の現実に言及。その上で「こういった時こそ『格差是正』をはじめとした諸課題に、政府がしっかりと立ち向かう姿勢を示すべきだ」と指摘しました。ところがこの改正案は「少しでも格差を是正しようとする気概がまったく感じられない、志の低い改正案と言わざるを得ない」と述べ、その点が「『所得税法の一部を改正する法律案』に反対する最大の理由だ」と説明しました。

■その他の反対理由

 民主党政権時代に「租税特別措置透明化法」が作られ、透明化・効率化が目指されてたにも拘わらず、第2次安倍政権以降、流れが逆行。今や「企業数では0.1%に満たない資本⾦100億円超の巨⼤企業が受けた減税総額が、少なくとも3兆8000億円にも上る」と指摘。「そもそも『自助』でなんとでもなる巨⼤企業を、更に有利にする『公助』となってしまっている」と税制の現状を批判しました。

 また社会的格差の問題で最も問われるのは、その格差の再生産であり、「公助」が考えるべきは「親を選ぶことはできない子どもが、生まれた時点で共通のスタートラインに立てることの保障でなければならないはずだ」と勝部議員は述べました。今回の改正事項には「『教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置』の若干の見直しと、適用期間の延長が盛り込まれている」ものの、格差を是正するという観点からすれば、「資産課税全体を見直すことが必要ではないか」と主張しました。

 その反面、「コロナ対策納税猶予特例制度」が延長されないことに加え、社会保険料の特例納付猶予も同時に打ち切られ、「いまだ先の見通せないコロナ禍の現状で、これら制度の打ち切りが、危機に直面している事業者・国民に対して大きな不安を与えてしまう」として、政権の対応は「きわめて冷たい対応と言わざるを得ない」と批判しました。

 また「公債特例法案」については、この法律がまさに特例として制定された際の「『衆参ねじれ国会』と『国難である東日本大震災時』という条件・背景を抜きに、政府の利便性のみの観点から延長されてきたことがそもそも問題だ」「政府・与党のおごりと緩み、国会と国民軽視がここにも現れている」として、あわせて反対する旨を表明しました。

2021年3月26日参議院本会議反対討論(所得税法等改正案及び公債特例法案)勝部賢志.pdf