参院決算委員会で5日、参院会派「立憲民主・社民」から古賀之士議員が質疑を行い、菅総理に全国的に感染が再拡大している新型コロナウイルス感染症「第4波」への万全な対応を要求しました。また、安全保障分野における産業・デジタル政策の問題点を指摘しました。

1.総理大臣訪米延期及び官邸での会合について

(1)当初4月9日に調整されていたアメリカのバイデン大統領との日米首脳会談が16日に延期された理由について、菅総理にただしました。菅総理は訪米を成功するために準備期間が必要だと答弁し、万全を期す決意を確認しました。
(2)坂井官房副長官ら菅総理に近い自民党の無派閥のグループのメンバーが1日に総理大臣官邸で会合を開いたことについて、坂井官房副長官に「4日に放送されたNHKの日曜討論では屋外での会食でもクラスターが発生していると例示されていた。コロナ禍で国民が会食などを自粛している中、会食はありえない」と強く批判しました。

2 . コロナ対策について

(1)「第4波」の認識について、特に「まん延防止等重点措置」が適用されている大阪府と兵庫県については 、緊急事態宣言の解除の時期が早すぎたのではないか、菅総理に確認しました。菅総理は「大阪府と兵庫県の解除は専門家の意見を聞いた上での判断だった」と述べ、第4波に強い警戒感を持って対応していく考えを示しました。
(2)「補正予算編成」の報道について、菅総理は「機動的に検討していく」と答弁しました。
(3)福岡県知事選挙、補欠選挙、衆院総選挙など、新型コロナウイルス感染で療養中の有権者は投票できるのか、武田総務大臣に確認しました。武田大臣は不在者投票を含めて検討していく考えを示しました。
(4)「大阪府において、聖火リレーが来週13、14日に予定されている。これまで沿道で密になった場所があったことを考えると、見直しが必要なのではないか」と丸川五輪大臣に所見を確認しました。丸川大臣は大阪府と組織委員会で協議中と答弁しました。
(5)「オリンピックに関する資格認定証やIDカードは、どの程度発行されるか。いわゆるスポンサー企業への発行枠はあるか 。あれば、どの程度か」について丸川五輪大臣に所見を確認しました。丸川大臣はスポンサー企業への発行枠は組織委員会で精査中と答弁しました。古賀議員は水際対策の強化を要請しました。
(6)尾身参考人(政府分科会会長)は、2月26日の基本的対処方針等諮問委員会で、「緊急事態宣言を解除するこ とによる心理的な影響についても強くやらないと、私は同じことが起こる可能性が極めて高い」「今まで学んだことを徹底して、国も自治体もわれわれも、かなり強い一体感と緊迫感を持たないと、これはリバウンドする可能性が高い」と述べていたと振り返り、解除後の現在の状況を踏まえた、参考人の所見を確認しました。尾身参考人は「(1)クラスターの多様化、(2)緊急事態宣言中の行動変容の協力が得られない、(3)変異ウイルスの多様化――感染対策の困難さを極めている。感染対策により直接的に介入することが大事。飲食店の見回り、飲食店の認証制度などが必要。東京都も大阪府と同じ状況になる。感染防止策を検討する時期に入っている。さらなる緊張感をもっていかなければいけない」と警鐘を鳴らしました。
(7)「持続化給付金は、『法律』によるべきではなかったか。この点、今後も発生すると予想される災害や疫病などの際に迅速に給付が可能となるよう、より一般的な『給付金法』のような法律を制定することも一案である。今国会で、預貯金口座とマイナンバーを紐づける法案が審議されているが、『国民が経済的に困っている時に給付をするのは国の義務だ』と定める法律をつくる方が先だと考えるが、総理のご見解は」と菅総理に尋ねました。菅総理は問題意識は共有しつつ、政府が適切な支援を迅速に実施していく考えを示しました。

3.日本の産業構造について(ものづくり)

 日本の産業構造について、「『自動車一本足打法』と呼ばれることがある。この点、『産業構造ビジョン2010』に対策が示されていた。この10年間、産業構造の変革について、どのような政策を打ち出し、どのような効果があったか」を菅総理にただしました。菅総理は「これまで産業構造の転換を進めた結果、25兆円の実需があった。一方で、デジタル、エネルギー分野の国際的な産業競争力は低下している」と課題を述べ、政府としては事業再構築、新産業の創出に務めていく考えを示しました。

4.デジタルプラットフォーマーについて

(1)2年前の本会議で、キャッシュレス・消費者還元事業について、「決済データが、例えば中国において処理及び保存された場合、わが国の法律においてポイント補助に値するかどうか政府がチェックできるか」と質問した。経産大臣は、「決済事業者に対しては、個人情報の許可のない利用防止の体制整備も含めて、十分なセキュリティを担保することを求めることとしております。具体的には、決済事業者の登録手続の際に、セキュリティに関する外部認証や社内規定などの提出を求め、どこでデータを処理、保存するのであれ、十分なセキュリティが担保されているか審査を行うこととなります。その上で、仮に制度の実施を通じて十分なセキュリティが担保されていない事業者が発覚した場合には、当該決済事業者の参加資格を停止し、補助金返還要求を実施するなど、厳しい対応を取ることとしております」と回答したと過去の国会答弁を振り返りました。
(2)通信アプリのLINEが利用者の個人情報などを中国からアクセスできる状態にしていた問題で、梶山経済産業大臣に「LINE Payも合め、当時の審査は十分だったか。LINE Payは、『十分なセキュリティが担保されていない事業者』にあたるか。あたるとすれば、どのような対応を取るのか 。補助金返還要求を行うのか」を質問しました。梶山大臣は政府の個人情報保護委員会によって検査中だと答弁しました。
(3)海外からのサーバーアクセスに関しては、犯罪捜査であれば米国の政府機関が国外のサーバーにアクセスできる「クラウド法が注目されている。日本の個人情報保護法では、『法令に基づく場合』は保護の例外とされているが、米国クラウド法は 『法令』にあたらないと聞く。ならば、クラウド法への対処として、行政協定の締結が必要となるケースがあるが、現状でどのようになっているか」と茂木外務大臣に確認し、「日米首脳会議で日米同盟の確認とともに、日米安全保障分野で経済、デジタル分野の議論を俎上(そじょう)に乗せてほしい」と要請しました。
(4)SNSをはじめとするネットシステムでは、個人情報と引き換えに広告を行うビジネスモデルが確立されており、個人情報の保護を徹底させれば、現行のビジネスモデル自体が崩壊しかねないとして、そのバランスについてどう考えるかただしました。西村経済再生担当大臣は、デジタル市場競争会議で評価を行なっていると述べ、早期に方向性を検討していく考えを示しました。

5.日本の産業構造について(デジタル社会)

(1)「時価総額上位10社について日本と米国を比較してみると、大きな違いがあることに気付く」と語り、「アメリカでは、アップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、アルファベットなど、プラットフォーマーが並んでいる。これに対して日本は、ソフトバンクグループが該当するかどうか。また、なにより規模が異なる。日本 1位のトヨタは約27兆円なのに対して、アメリカ1位のアップルは約220兆円と文字通り桁が違う。株式市場は、将来への期待を表している。『デジタル社会』の実現を目指す上で、こうした状況をどのように考えるか」とただしました。菅総理は「デジタル改革の司令塔となるデジタル庁を創設し、経済構造を転換し、日本産業の競争力を高めていきたい」と答弁しました。
(2)「重要なデータを取り扱うのはほとんど海外の企業となってし まった。われわれはこれまで、食品自給率やエネルギー自給率を気にしてきた。これからは、その2つと並んで、あるいはそれ以上に重要な、データ自給率、デジタル自給率を上げることを国として取りくむべきではないだろうか」と提案。菅総理に「デジタルで国民の食い扶持をつくっていくことが菅総理の責任である」と決意を確認し菅総理からは「そうした提案につきましては検討させていただきます」との答弁がありました。平井デジタル改革担当大臣は「国際的に通用するデジタル革命を進めていきたい。そのためにはデジタルシフト、デジタルトランスフォーメーションが急務だ」と答弁しました。

6.ディスプレイ産業のあるべき姿について

(1)「令和元(2019)年度産業革新機構(INCJ)の業務の実績評価について」では、株式会社JOLEDについて、「将来、保有する株式の譲渡その他の処分を決定する時は、わが国ディスプレイ産業全体のあるべき姿を念頭に、処分方法を検討し、また、経済産業省との緊密な連携を継続されたい」とした経済産業大臣の意見が付されていると指摘。「わが国ディスプレイ産業全体のあるべき姿」とはどのようなものか、ディスプレイ産業に未来はあるか、菅総理の所見を求めました。
(2)産業革新機構(INCJ)という官民ファンドと言いながら国が大きな影響を持つファンドの傘下となったジャパンディスプレイのこれまでの経緯、現状及び今後をどのように考えるか、梶山経済産業大臣をただしました。梶山経済産業大臣はジャパンディスプレイ(JDI)は民間のいちごトラストと資本提携し、新経営陣の下でディスプレイ事業の効率化を図るとともに、センサーなどの高い技術力を活かしてヘルスケアをはじめとした新規市場に注力していくと答弁しました。

 古賀議員は「雇用を守る」産業政策の検討を菅総理に要請し、質疑を終えました。