「後期高齢者向け医療保険制度の持続可能性を高めるとともに、現役世代の負担を軽減する、そのためには、公費負担の拡充とともに、いわゆる『応能負担』の強化によって、現役世代の負担を軽減するべき」(中島克仁議員)。

 8日、衆院の本会議が開かれ、後期高齢者の医療費窓口負担を現行の1割から2割へ引き上げることなどを含む政府法案「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」、およびこれに対する立憲民主党提出の対案「高齢者の医療の確保に関する法律の一部を改正する法律案」の2法案の趣旨説明と質疑が行われました。中島克仁議員が登壇し、質問の前半で政府のコロナ対応策、後半で健保法改正案ならびに野党の対案について質問をしました。

健保法改正案(政府法案)と立憲民主党提出の対案

■後期高齢者の窓口自己負担増(1割→2割へ)

 今回の政府提出法案により、単身世帯で年収200万円以上の後期高齢者の医療費窓口負担が、現行の1割から2割へ引き上げられることについて中島議員は「支払う当事者からすれば、大変な自己負担増だ。後期高齢者の皆さんは、複数の病気をお持ちであるなど、現状においても、多大な医療費を支払っている方が多くいらっしゃる」と当事者の負担増の大きさを指摘。さらに窓口負担を引き上げるということになれば「コロナ禍において、すでに顕著な『受診控え』に拍車をかけ、症状の重症化をもたらす可能性もある。少なくともこのコロナ禍においては、これ以上の受診抑制を引き起こすような政策を実施すべきではないのではないか」と訴え、菅総理の見解をただしました。

 また窓口負担増加に対して一定のラインにキャップをかける「配慮措置」が講じられることになることに関しても、「たとえ配慮措置を加味したとしても、外来費用負担の追加額は最大で年3万6,000円に上る。また入院費用には配慮措置は適用されない。このような配慮措置では、そもそも後期高齢者の『急激な負担増加を抑制する』と言うには不十分ではないか」と、総理の見解をただしました。

■後期高齢者医療制度の抜本的な改革
  1. 立憲民主党提出議員立法の提出者に対する質問

     中島議員は、団塊の世代が後期高齢者になり、医療費全体が膨らんでいくにつれて、後期高齢者支援金を負担する現役世代の負担が今後、ますます厳しくなっていくことが危惧されることから「後期高齢者医療制度について、抜本的な改革が求められていることは明らかだ」と指摘。立憲民主党の法案提出者に対し、「立憲民主党提出の議員立法では、どのように現役世代の負担を軽減しようとしているのか」「議員立法で行おうとしている保険料の賦課限度額引き上げの対象となるのは、どのぐらいの所得階層か」とただしました。

     これらの質問に対し、野党議員立法の提出者として登壇した稲富修二議員は「現役世代の負担軽減には、まずは後期高齢者の中で、特に高所得の方に『応能負担』をお願いすることが必要」との考え方を示しました。その上で、立憲民主党が提出した法案では、後期高齢者の負担割合を定める後期高齢者負担率について、(1)令和4(2022)年度以降の当分の間、現行の算定方法により算定された率に「特別調整率」を加える特例を設けること、またこの特例によって生じる後期高齢者の負担増については、(2)保険料賦課限度額の引上げにより所得の高い後期高齢者に更なる「応能負担」を求めること。またこれらに加え、(3)国による「公費負担」の拡充によって対応する――と説明。これらの措置により「政府案の見込みと同程度、現役世代の負担を軽減することができると考えている」と答弁しました。

    稲富修二議員

     中島議員は「医療保険制度の持続可能性を強化し、現役世代の負担を軽減するためには、公費負担の拡充とともに、保険料の負荷限度額の引き上げが必要と考える。医療サービスの利用を抑制する可能性のある窓口負担の引き上げではなく、所得の多寡に応じた負担をお願いする、いわゆる応能負担の強化によって、制度の持続可能性を担保するとともに、現役世代の負担を軽減するべきだ」と訴えました。

  2. 政府法案に対する質問

     後期高齢者医療制度について「政府として、現在の保険料の賦課限度額(※)について、どのように認識しているのか」と、現在の保険料の賦課限度額について、菅総理の見解をただしました。
    ※賦課限度額:医療、介護などの各保険について、それぞれの保険に設定されている1世帯ごとの保険料の上限額を指します。

政府のCOVID-19(新型コロナウイルス)対策

■大阪、東京における緊急事態宣言解除、その後のまん延防止等重点措置などの対応について

 質問の冒頭、中島議員は「昨日は全国の感染者が1月30日以来の3,000人を超えた。また大阪では、1日の感染確認が過去最高の800人を超えたことを受けて『医療非常事態宣言』が発出された」と指摘。その上で菅総理に対して (1)緊急事態宣言の解除時期は適切であったと考えているのか(2)その後の「まん延防止等重点措置」の適用は遅すぎたのではないか(3)変異株の脅威を鑑みれば、緊急事態宣言も検討すべきではないか――とただしました。

 また前日に555人の新たな感染が確認された東京都の小池百合子知事が「まん延防止等重点措置」の適用を国に要請する考えを示したことについて、「早急に東京にも『まん延防止等重点措置』を適用するべきだ」と述べた上で、総理の見解をただしました。

■いわゆる『第4波』への備え

 自身が医師である中島議員は、いわゆる『第4波』に備えるための新型コロナ対策について、政府をただしました。中島議員は「昨年末、GoToトラベルを止めず、対策が後手後手になった経緯、認識の乏しさ、危機感の欠如が新型コロナウィルス第3波を招き、医療のひっ迫を招いたことをお忘れでしょうか」と述べ、第4波についての政府の現状認識、第4波と判断するための基準、第4波に備えるための具体的な対策について、菅総理の見解をただしました。

■コロナワクチンの集団接種 
  1. 集団接種計画の遅れと混乱

     現状では、医療従事者の優先接種が終わらないまま4月12日から高齢者3,600万人の接種が始まろうとしており、「ワクチンを打ち終わっていない医療従事者が高齢者のワクチンを打ち始めるケースもあり、(中略)医療従事者からは、接種を後回しにされる不安も募っている」と指摘。その上で(1)4月からの高齢者接種を急ごうとしたのは、ひとえに『高齢者の接種を4月中にスタートする』と宣言した菅総理のメンツを保つための既成事実作りではないか(2)高齢者に対し、もっと丁寧な説明が必要ではいか(3)ファイザー社製ワクチン供給の進捗状況――について菅総理をただしました。

  2. 医療スタッフ確保のための課題

     中島議員は(1)政府が「約1万人程度の医療スタッフの確保を図る」としている東京オリンピック・パラリンピックの開催(2)衆院の解散総選挙が行われた歳の、ワクチン接種施設や自治体職員の確保(3)変異株の感染爆発などによる医療機関の人手不足――といった不測の事態の例を挙げ、どのように対応するつもりなのか、菅総理をただしました。

■国産治療薬の開発

 「わが国が医療先進国として培ってきた経験医学を新型コロナ治療方針の確立に向け、最大限発揮する局面だ」と述べた上で、中島議員は(1)新型コロナウイルス治療への応用が期待される国産の抗寄生虫薬「イベルメクチン」について、菅総理が委員会質疑の中で「わが国にとって極めて重要な薬で、最大限努力・支援していく」と答弁したことに触れ、「最大限の努力・支援を具体的にどこに、どのように指示を出したのか」ただすとともに、「新型コロナウイルス感染症の治療薬開発、確立に最大限の努力をせよと明確に指示を出して頂けないか」と菅総理に要請しました。またわが国には有事・緊急時の際の薬事承認の制度がないことから、こうした薬事承認の制度作りについて、菅総理の見解をただしました。

■「かかりつけ医(日本版家庭医)」制度の創設

 中島議員は「新型コロナウィルス感染症のまん延・長期化により、わが国の医療体制の課題が浮き彫りとなった」として、プライマリ・ケア機能を持つ「かかりつけ医」の制度が日本にないことを取り上げました。新型コロナウィルスの感染拡大状況において、もしこうした制度が整っていたのならば、「相談から検査や加療へと適切に繋げられたり、ワクチン接種も、かかりつけ医の元で的確なリスクコミニケーションが図られ、円滑なワクチン接種が進められていたはずだ」と述べました。中島議員はコロナ対応や少子高齢化、人生百年時代を迎えた平時のわが国の医療体制の再構築のためにも、こうした「かかりつけ医」の制度が「不可欠だ」と訴えるとともに、菅総理にその見解をただしました。

2021.04.08 衆議院本会議質問-中島克仁議員.pdf
2021.04.08 本会議稲富修二議員答弁案.pdf