衆院本会議で22日、内閣提出「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案」および立憲民主党、日本共産党、国民民主党が共同提出した「消費者被害の発生及び拡大の防止並びに消費者の利益の一層の擁護及び増進を図るための消費者契約法等の一部を改正する法律案」(消費者の権利実現法案)の趣旨説明がおこなわれ、柚木道義議員が質疑しました。

 この内閣提出法案は、消費者の脆弱性につけ込む悪質商法に対する抜本的な対策強化、新たな日常における社会経済情勢等の変化への対応のため、特定商取引法・預託法等の改正による制度改革によって、消費者被害の防止・取引の公正を図る目的で提出されました。立憲・共産・国民案である「消費者の権利実現法案」は内閣提出法案の対案であり、(1)包括的なつけ込み型勧誘の取消権の創設(消費者契約法)(2)販売預託商法の原則禁止、詐欺的定期購入の規制強化等(契約書等の電子化はしない)(3)クーリング・オフ期間の延長(特定商取引法など)――を内閣提出法案に付け加え、情報の質・量及び交渉力の格差から消費者を守ることを目的としています。

 柚木議員は、(1)契約書面等の電子化(デジタル化・ペーパーレス化)の規定を盛り込む必要性(2)契約書面等の電子化規定の立法事実(3)総理の答弁への対応(4)野党提出法案において契約書面等の電子化(デジタル化)規定を削除した理由(5)つけ込み型勧誘取消権の検討――等について質疑しました。

 今回の内閣提出法案について柚木議員は、「販売預託商法を原則禁止とする本改正で、法制定から 34年の時を経て、ようやく抜本的な対策がとられることとなり、関係者一同が喜んでおりました」と紹介。一方で、「政府提出の改正法案には、消費者被害を防止するどころか、消費者被害を拡大させるような規定がいつの間にか紛れ込んでいたのです。改正される特定商取引法や、預託法において、購入者等の承諾を得て、契約書面等を電子化して提供できるとされました」と改正案では契約書面等の電子化ができ、家族や見守りを行なう第三者による消費者被害の発見が困難になると指摘。なぜ契約書面の電子化を盛り込んだのか、消費者団体や事業者団体から意見を聴取したのか、聴取したのであれば政府でどのような検討をおこなったのか質問しました。井上大臣は、「政府全体におけるデジタル化の議論の中で、規制改革推進会議において特定商取引法の一部取引類型の契約書面等についても電磁的方法による提供を可能とするように取りまとめられました。これを受けて消費者庁としては消費者の利便性の向上及び消費者利益の保護を図る観点から、具体的な制度のあり方について検討を行ないました」と説明しました。

 また、消費者から電子化の要望があるのかを党の部会で消費者庁にただしても、「1つも明らかにされなかった」と述べ、消費者からの電子化の要望があることのエビデンス、立法事実を質問しました。井上大臣は、「紙よりもデジタル技術を活用して、必要な情報を保存・閲覧しやり取りする方がより便利であると感じる国民も増えているのではないかと考えます。このような消費者ニーズの変化は、まさに今回の制度改正の立法事実であり、契約書面等の電子化には消費者にとって書類の保管が容易になる拡大縮小などの閲覧がしやすいといったメリットもある」と答弁しました。柚木議員は、「消費者庁は、2011年の『情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会』において、契約書面等の電子化に対して消費者保護の後退を懸念して反対していたのではないか」と指摘しました。

 3月26日の参院財務金融委員会で、契約書面等の電子化により消費者被害が拡大する懸念が多数表明されていることを質問された菅総理が「承知していなかった。検討する」と答弁したことについて、その後、政府においてどのような検討が行われたか質問しました。また、契約書面等の電子化により消費者被害が発生することがないと思うのであれば、消費者被害が発生した際にどのように責任をとるのかただしました。井上大臣は、「消費者被害を抑止する制度の設計に全力で取り組むことでその責任を果たす」などと答弁しました。

 続いて、立憲・共産・国民提出の「消費者の権利実現法案」について、契約書面等の電子化規定を削除した理由を質問しました。提出者で答弁に立った国民民主党・無所属クラブの井上一徳議員は、「政府案は契約書面等について、消費者の同意がある場合には書面交付の電子化を可能としております。しかし消費者が同意をするよう誘導することは事業者にとって極めて容易です。その上で、消費者契約の場面において書面交付を電子化した場合には、紙に比べ契約内容を確認しにくく、契約締結について本人以外の者が気づくきっかけが失われるなど、結果として消費者被害が拡大することとなりかねません」と説明しました。

 柚木議員は、つけ込み型勧誘取消権の創設やクーリング・オフ期間の延長などの成年年齢引下げを踏まえた対策の必要性、これらの規定を盛り込んだ意義や効果についても質問。井上議員は、「消費者問題の分野においては、成年年齢の引き下げに対応できる環境が整っていません。そこで20歳未満の成年者については、成年年齢の引き下げに対応できる環境が整うまでの間、消費者被害の発生及び拡大を防止するため一定の特別の扱いをする必要がある」と指摘。そのうえで、「20歳未満の成年者を対象に、特定商取引に関する法律を含め14の法律中のクーリング・オフに係る規定の熟慮期間を一律に7日間延長し、成年年齢の引き下げの施行に伴い生じる消費者被害の発生を最小限に抑えようとしております。また3年前の消費者契約法改正により追加された消費者取消権の行使のための要件がいたずらに厳格であるため、若年層を中心に悪質事業者による消費者被害が頻発する恐れもあります。そこでつけ込み型勧誘に係る取消権の包括規定を創設することといたしました」と答弁しました。

 最後に柚木議員は、「政府提出の改正法案は、このままでは消費者被害拡大法案となりかねません。しかし、販売預託商法を原則禁止にするなど評価できる法案でもあります。われわれが提出した法案を取り入れていただいて、与野党の英知を結集して、消費者の被害を防ぐ法案を作り上げたい」と対案を含めた法案成立の協力を求めました。

衆院本会議趣旨説明質疑_柚木道義議員.pdf