衆院予算委員会で10日午前、内外の諸課題(新型コロナウイルス感染症対応、情報通信行政、原子力安全、外交等)に関する集中審議が菅総理出席のなか行われ、立憲民主党のトップバッターとして枝野幸男代表が質疑に立ちました。

 枝野代表は冒頭、2度目の緊急事態宣言解除の際に「時期尚早だ」と指摘したにもかかわらず、菅総理は「全力を尽くす」としてこれを聞かず、結果として解除から1カ月も経たないうちに3度目の緊急事態宣言発令となるなど、これまでの緩すぎる政府の対応を批判。専門家に責任を転嫁しようとする菅総理に対し、「専門家はそれぞれの専門分野について科学的な知見を述べている。専門家の間でも意見が分かれているなかで、総合に判断をする責任は政治にある。それがこうした危機にあるときの総理の仕事ではないか」と断じました。

 新型コロナウイルス感染症による国内死亡者数が1万人を超え、特に年末から急増していることには、菅政権発足した9月以降、GoToキャンペーンの強行、遅すぎる2度目の緊急事態宣言と早すぎる解除など、根拠なき楽観論に立って対応が遅れた結果、同じ失敗を繰り返してきていると指摘。「感染症であり、救えなかった命もあるかもしれないが、適切な対応をしていれば救えた命も少なからずある。このことについての反省はあるのか。なぜ根拠なき楽観論に立てるのか、国民の皆さん、特に大切な方をなくされた方に説明をしてほしい」と求めましたが、菅総理は「亡くなられた皆さんには、心からお見舞いを申し上げる」と述べるのみで、分科会での専門家の意見を聞いた上での判断だと強弁しました。

 枝野代表は3度目の緊急事態宣言を延長せざるを得なかった事態に、「(菅総理が強弁する)人流を減らすのは手段でしかない。人流は減り、多くの犠牲を払ったが効果は出ていない。判断を間違えたことに対する謙虚な姿勢がないから何度も同じ失敗を繰り返していると言わざるを得ない」と指弾。神戸市の高齢者施設で133人が感染し、亡くなった入所者25人のうち23人は入院治療を受けられず施設内で亡くなった事例などを挙げ、入院もできずに亡くなられた方、無念の思いでそうした方を見送らざるを得なかった介護施設の皆さんへの言葉も同様に求めました。しかしながら、菅総理からは「心よりご冥福をお祈り申し上げる」の一言のみ。唖然とした枝野代表は、「政治も万能ではないので間違えることはある。しかし、例えば1年前からPCR検査を広範にやっていれば、医療体制を強化していれば状況は違った。そうした皆さんにそれだけとは、はなはだ残念だ」と述べました。

 その上で、立憲民主党が掲げる「zeroコロナ戦略」に言及。この戦略は、徹底的に感染を封じ込めることによって早期に通常に近い生活・経済活動を取り戻すもので、こうした方針のもと感染者の抑え込んでいるニュージーランドでは、日本に次いでワクチン接種率が低いにもかかわらず、マスクなしで5万人規模のイベントが行われていると述べました。

 枝野代表は、「日本が感染拡大の繰り返しに苦しんでいるのは、十分に感染者が減らないうちに対応を緩めたからだ」と指摘。「水際対策の徹底強化と、その上で徹底した検査と感染者の保護・隔離(特に無症状の感染者)、新しい感染者が出た時に感染ルートを把握できる体制をつくることが重要だ。この夏休みを去年と違う夏休みにするためには、十分な補償がセットだが、いまの緊急事態宣言をリバウンドのリスクが相当低くなるまで継続すべきだ」と主張しました。

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 また、東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師のグループによるシミュレーションを示し、「我慢をした方が経済的損失は少なくて済む。東京で言えば最低1日100人、できれば50人以下、大阪では30人、できれば15人以下に抑えられれば、保健所が新たな感染者に対する、きちんと感染ルートの把握、チェックができる。こうすればリバウンドではなく、そこからzeroにつなげていくことができる」と、これまでの基準を見直すよう提起。加えて、「医療機関・医療従事者への包括的な支援」「条件を緩和した上での持続化給付金の再交付」が必要だと強く主張しました。

 東京五輪・パラリンピックの開催をめぐっては、「入国規制や国内でどういう行動規制をかけるのかはわが国の国家主権そのもの。国際オリンピック委員会(IOC)の判断や意見に左右されることなく、命と暮らしを守る観点から政府が独立して判断すべきだ」と指摘。「政府は国民全体の安全・安心を守る立場から、水際対策を中心に感染対策に万全を期すべく、主催者と連携していく」「国民の命と健康を守り、安全・安心な大会が実現できるように、全力を尽くすことが私の責務だ」などと具体性のない答弁を繰り返す菅総理に対し、「いまの日本の感染状況と、ここから3、4カ月の想定のなかで、国民の命と健康を守ることとオリンピック・パラリンピックの開催を両立させることは残念ながら不可能と言っていいと言わざるを得ない」と述べ、早急に決断するよう促しました。

 最後に枝野代表は、新型コロナウイルス感染症は、第2次世界大戦以後、東日本大震災・原発事故と並ぶ戦後最大の危機だとの認識を述べ、「総理自身が先頭に立ち、自らの言葉で強い意志を示していただき、そのための道筋を示すことが危機を乗り切るための前提条件。総理に危機感が感じられないなかで外出しないでくださいとお願いしても、国民に応じてもらえないのは当たり前だ」と菅総理の姿勢を批判。「私たちには十分な覚悟と準備ができている。私には経験と教訓がある。総理がその覚悟と気概を示されないのであれば、潔く身を引くべきだ」と迫り、質疑を終えました。

 枝野代表は質疑のなかで、現在国会で審議中の、入国在留管理局(入管)が権限を強めようとしている、出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正案について、名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)で収容中のスリランカ人女性が適切な治療をされずに死亡した事案にも言及。「人権感覚に欠けた、こうした入管の事案は繰り返されている。(法務省による)この死亡案件の真相究明と、それを踏まえた十分な審議が不可欠だ」と求めました。