衆院本会議で11日、「重要施設周辺等における土地等利用状況調査・利用規制等に関する法律案」(重要土地等調査法案)に関する趣旨説明と質疑が行われ、立憲民主党の篠原豪議員が会派を代表して登壇。本法案が平常時の土地取引行為や私権設定に大きな影響を及ぼすことから、(1)法案の目的や手段の合理性(2)規制対象となるべき行為(3)個人情報の取扱い方法――などに関する政府案の問題点をただしました。
本法案の主な内容は、防衛関係施設や国境離島等の機能を阻害する土地の利用を防止するため、注視区域及び特別注視区域の指定、注視区域内にある土地等の利用状況の調査、当該土地等の利用の規制、特別注視区域内にある土地等に係る契約の届出等の措置について定めるというもの。
篠原議員は冒頭、近年のグローバル化した世界において、伝統的な安全保障に加え、経済安全保障の重要性が指摘されていると説き、「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用についても、国会において十分議論をし、安全保障上の懸念を払拭する法律案を得ることは極めて重要だ」との認識を示しました。
その上で、まず本法律案の目的や手段が立法事実に基づいて合理的なものになっているかをただしました。「国土利用の実態把握等に関する有識者会議」が、防衛施設や国境離島周辺の土地の利用を巡って「経済合理性を見出し難い、外国資本による広大な土地の取得が発生する中、地域住民をはじめ、国民の間に不安や懸念が広がっている」と指摘したことを受けて、政府が今回の立法化に至っているため、「安全保障上重要な施設の周辺や国境離島などで、安全保障上のリスクとなるような土地取引が行われたと認識しているか」と質問しました。小此木内閣府担当大臣は、安全保障のリスクを回避することを理由に「答弁は適当でない」と言及を避けました。
次に規制対象とする土地利用に関して「重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為」としか規定していないことについて迫りました。これだけでは「十分な予見可能性がない」と指摘し、規制する側の判断に規制される側が同意しない可能性があると懸念を示しました。それを回避するため、「重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為」として想定される具体的な行為として、(1)施設の運営に支障をきたす構築物の設置(2)電波妨害、施設への侵入の準備行為(3)低潮線近傍土地等への形質変更を法律で明示するよう求めました。
さらにこの法案で導入される「土地等の利用状況の調査」と個人情報の取り扱いについてただしました。篠原議員は、「個人情報の取り扱い方法について、法律案になんの規定も設けていないことは、根本的な欠陥だ」と厳しく指摘しました。本来、国への個人情報の提供は、各々別個の目的を持った法律に基づいて行われ、本人の同意がない限り他に流用することが許されるものでないと言及。ところが、今回の情報収集の目的が「安全保障上のリスク対象であるか否かの判断材料にすることにあり、場合によっては懲役刑に付される可能性もある。これは明らかに目的外使用に当たるのではないか」と疑問を呈しました。小此木大臣は法案の第7条で内閣総理大臣が関係する行政機関や地方公共団体に必要な情報提供を求めることができるという規定を設けていると説明しました。
重要施設周辺等における土地等利用状況調査・利用規制等に関する法律案」篠原豪議員質問(予定稿).pdf
なお、議案の審議に先立ち、衆院北海道2区補欠選挙で当選を果たした松木謙公議員が新人議員として紹介されました。