参院本会議で19日、政府提出の「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」(健康保険法等改正案)に対して、「立憲民主・社民」会派を代表して、石橋通宏議員が質問に立ちました。
冒頭、(1)三原じゅん子厚労副大臣が先週13日の参院厚生労働委員会を離席し、一時、行方不明になった問題(2)政府は18日、出入国管理法改正案の今国会での成立を断念したが、なぜ明確に国際法違反である改正案を国会に提出したのか、なぜ繰り返される収容施設での死亡事件の原因究明に後ろ向きなのか――について菅総理に見解をただしました。菅総理は三原副大臣に二度と同じ問題を起こさないよう注意し、出入国管理法改正案は今国会で審議しないという与野党協議の結果を尊重したと答弁しました。
続いて、新型コロナウイルス感染症対策について、遅すぎた緊急事態宣言の発令、早すぎた解除、緩すぎた措置内容、まったく不十分な事業主や失業者等への協力金や給付金、完全に遅きに失した変異株対策や流行地域からの渡航禁止など、昨年から繰り返されてきた人災とも言うべき一連の失政の責任について、菅総理の認識をただしました。
■医療費負担を含む社会保障制度のあり方について
「政府は本法案において、一定以上の所得がある75歳以上後期高齢者の医療費窓口負担を、これまでの1割から倍増となる2割への引き上げを提案しているが、今は『自助』を強化する政治ではなく、『公助』を立て直し、『支え合い』を強化して、年金頼みの高齢者世帯も、医療・介護・福祉が必要な方々も、誰もが安心して生活できる社会保障制度の再構築をめざすべきだ」と立憲民主党の考え方を主張しました。
また、「今こそ、抜本的な年金制度改革を断行して、年金の最低保障機能の強化を進めるべきだと考えていますが、菅総理は、今のままの年金制度で問題ない、つまりは、これからは老後も『自助』で頑張ってくれと、国民に要請するのでしょうか」と菅総理に答弁を求めました。
■今回の政府案における後期高齢者の医療費窓口負担2割化の根拠と妥当性について
「窓口負担2倍化の対象となる370万人の後期高齢者の方々について、医療費負担が倍増しても、日々の生活や老後の安心に影響を与えないと断言されるのか、だとすればその根拠はなんなのか」菅総理にただしました。
また、2017年の調査では、60歳代以上の世帯のうち約3割が「貯蓄ゼロ」になっていると指摘し、今後、切り崩す貯蓄もなく、医療費倍増に苦しむケースが増大する懸念を示しました。
■窓口負担が2倍となる高齢者の方々についてのいわゆる長瀬効果(患者負担が増加する制度改革が実施されると、受診行動が変化し、受診率が低下するなどの影響)について
「政府は、今回の引き上げによって、2022年度で1,880億円の給付費減を見込んでいるが、このうち900億円は受診抑制が生じることを認めているのか。これまでの引き上げによって、高齢者の受診抑制や症状の重篤化、生活の困窮化が生じてこなかったのかどうか、厚労省はどのような科学的な調査・分析を行い、どのような結果を得たのか」を田村厚生労働大臣に確認しました。
田村大臣は一定程度以上の後期高齢者世帯では長瀬効果の影響は見当たらないと答弁しました。
■現役世代の保険料負担の軽減とその財源のあり方について
「立憲民主党は保険料の賦課限度額を引き上げ、後期高齢者の中でも一部の特に高所得の方々に絞り、保険料の負担増をお願いして、応能負担の強化と公費の追加投入によって、社会全体で医療費負担を分かち合うべきだと修正案を衆院に提出した」と報告。
「本来は、医療費のみに閉じた議論をするのではなく、社会保障と税のあり方を一体的かつ抜本的に見直すことで、負担の分かち合いのあり方を再検討すべき」と問題提起し、「なぜ、超富裕層への課税強化を見送り、その一方で、収入の限られた高齢者の医療費負担を倍増させるのか」と菅政権の「自助」を強調する政策を批判しました。
■最後に
石橋議員は「今こそ、今回のコロナ禍で顕在化したわが国の社会保障制度の問題点や課題を洗い出し、10年後、30年後の社会をも見据えて、将来またわが国を襲うとも知れない自然災害や感染症や気候変動の影響の中にあっても、すべての国民の安心と安全を守っていくことのできる社会を構築していくべきであり、そのために国会が、与野党あげて、その責任と役割を果たしていくべきだ」と主張。
「立憲民主党は、『自助』に基づく弱肉強食型社会ではなく、『公助』に基づく『誰もがつながって、支え合う』未来を構想し、その実現に向けて全力を尽くしていく決意である」と述べ、代表質問を終えました。