「野党には対案がないというデマを何度となくまき散らされてきたが、政府与党こそ対案がないと強く申し上げたい」(緊急事態宣言の延長と政府のCOVID-19、新型コロナウイルス感染症対策について、枝野幸男代表)。

 31日午後、枝野幸男代表は国会内で定例会見を開き、記者団の取材に応じました。枝野代表は(1)政府による緊急事態措置の延長(2)国会会期の延長と補正予算の編成(3)いわゆるLGBT法案(LGBTへの理解増進を求める法案)――等について記者団に語りました。

■緊急事態措置の延長

 東京など9都道府県に対する緊急事態措置の延長が決定されたことについて所見を述べました。

 枝野代表は「菅総理は緊急事態宣言の発令にあたり、『効果的な対策を短期間集中で実施し、ウイルスの勢いを抑え込む』と仰っておられた。残念ながら、全国の重症者の皆さんの数、あるは亡くなられた方々の数は、高止まりとなり、多くの地域で引き続き感染者は増加傾向にある。総理の意図したこととは逆の結果になったと言わざるを得ない。今回の第4波は、感染が十分に収まっていない段階で、私たちが明確に反対したにもかかわらず、宣言などを解除したことに原因がある。したがって人災と言わざるを得ない。3月1日以降だけでも5,000人以上の方がお亡くなりになっているという事態を重く受け止めていただかなければならない」と述べました。

 また休業などの規制を要請されている事業者に対する支援についても触れ、「宣言や重点措置の発令延長が繰り返されてきた地域では、特に酒類を提供する事業者を中心に、今年になってまともに営業できた日がほとんどない。こうした業者にとどまらず、観光関連などをはじめとして、塗炭の苦しみを味わっている事業者の皆さんがおられる。これらの皆さんも、政権の失敗による犠牲者と考えられる。『国民の命と暮らしを守る』という対応になっていないと言わざるを得ない。またこれは国の直接の対応ではないが、こうした皆さんに対するいわゆる『協力金』の額自体も、わずか微々たるものと言わざるを得ないケースがほとんどだが、それすらも届いてもいないという話が、各所で聞こえてきている。直接の施行は自治体任せになっているが、やはり国として緊急事態宣言等を出しているので、こうしたことについて、自治体にきちんとやらせるか、あるいは私どもが申し上げてきた通り、国としてしっかりと事実上の補償を行うべきだ」と政府対応の不備を指摘しました。

 こうした状況下での東京五輪の開催の是非について記者団に問われると「国民の命と暮らしを守ることが、日本国の総理大臣の最優先の使命だ。したがって国民の生命や暮らしを守れないのであれば断念せざるを得ないという状況は変わっていない。美術館も映画館、百貨店も『開かないで』と言いながらオリンピックを開催するというのは、常識では考えられない」「『バブル方式』と言われているが、本当にそれができるのか、きちんとした説明を説得力ある形でしていただかなければならない」と述べました。さらにワクチン接種の進展が与える影響についても「7月末までで接種が終わるのは高齢者のみだ。これでは意味をなさない」と述べました。

■国会会期の延長と補正予算の編成

 現在の緊急事態措置の期限(6月20日)が切れる前の6月16日に、国会が閉会するスケジュールとなっていることについて、枝野代表は「さらなる宣言延長が必要であるのかどうか。あるいはこの延長に伴う対策などについて、何ら示されていない。また感染が収まっていない場合、あるいは第5波が生じた場合に対する迅速な対応などを考えると、国会を閉じることは全く理解不能だ」と政府の対応を強く批判しました。

 また、補正予算の編成についても触れ「そもそも今、施行されている予算が編成されたのは12月。今回の緊急事態宣言はおろか、1月に発令された第2回目の緊急事態宣言の対策も含まれていない。首都圏、近畿圏をはじめ、多くの国民に不自由な生活をお願いし、事業者に対しても極めて厳しい環境が迫っているという状況に、支援を行っていくためには、会期を延長して補正予算を編成・審議するのは当然だ」と指摘しました。すでに立憲民主党として、持続化給付金の再給付や、経済的に苦しい子育て家庭への再給付など提案をしていることについても触れた上で「野党には対案がないというデマを何度となくまき散らされてきたが、政府与党こそ対案がないと強く申し上げたい」と語気を強めました。

 どれくらい会期の延長幅を想定しているのか問われると「国家の危機的状況も勘案すれば、本来、通年国会にすべきだ。つまり言い換えれば、12月31日までの会期にすべき状況だ。しかし自民党にも総裁任期などいろいろあるようなので、少なくとも3カ月程度の延長は必要」との見方を示しました。

■いわゆるLGBT法案について

 西村智奈美議員などが中心となり、与党と調整を行ってきたいわゆる LGBT法案(LGBTへの理解増進を求める法案)について、枝野代表は「内容について各党で合意がなされたにも関わらず、残念ながら自民党では3役一任となったと承知をしている。国会日程上、無理だという発言が聞こえてきている」と述べました。その上で、「今、国会にかかってないさまざまな議員立法を『全部無理だ』と諦めるつもりなのか。LGBT法案だけ国会日程のせいにするというならば、これこそまさに恣意的だと言わざるを得ない」と政府の姿勢を批判。「われわれとしては、国会審議のあり方、あるいは会期延長などについて、柔軟に協議に応じて、なんとかこの国会中に成立させたい」と成立への熱意を語りました。特に同法案と五輪との関係についても触れ、「『LGBTに対する差別をしてはいけない』ということは、オリンピックの理念の一つと考えられる。五輪主催国として開催前に、こうした法整備を行っておかなければならないというのが、与野党一致した共通の考え方だ」と述べました。また「これはIOCからのわが国に課せられた一つの責務であると考えている。IOCの幹部と称する人の暴言を放置をする一方で、IOCとして各国にこれまでも迫ってきたまっとうな要請にこたえないというのは何なんだということも強く申し上げておきたい」と、政府の不作為に対する強い不満を表明しました。