衆院本会議で15日、菅内閣不信任決議案が議題となり、衆院会派「立憲民主党・無所属」を代表して原口一博国会対策委員長代行が賛成討論をおこないました。

 冒頭、新型コロナウイルス感染症により亡くなった方々に対し哀悼の意を捧げ、救急や医療現場など最前線で必死に国民の命を守るため戦っているすべての関係者に対し敬意を表しました。そのうえで、「菅内閣不信任の最大の理由は、国家最大の危機ともいうべきコロナ禍において危機管理能力が欠如し、国民の命と健康、暮らしを守ることができていないからだ」と菅政権のこれまでのコロナ対策を強く批判しました。

 今国会が予算案審議ではなく異例の特措法改正から始まったこと、政府与野党協議会等でこの危機に際して協力を優先したきたと述べ、 10年前の東日本大震災に際して「危機において国会を閉じるべきではない」と民主党政権に働きかけた菅総理の言葉を取り上げ、国会延長要求に対するゼロ回答を改めるよう強く求めました。

 菅政権では、医療につなげることさえできずに亡くなった方々が続出しており、早期発見・早期治療・早期保護が必要なのにPCR検査が抑えられ空港検疫でさえ最近まで抗原検査だったと述べ、「明らかな政策の失敗だ」と断じました。
 原口議員は、菅菅総理が「国民の命を犠牲にしてまで五輪を行なうことはない」と答弁したことについて、先日、内閣官房のコロナ対策室が民間機関に依頼したデルタ変異株の考慮されていない試算でも五輪を行うことで一日200人、期間中に1万人を超える感染者が増えるという結果となっていると強い危惧を示しました。

 また、「今なお、PCR検査も先進国最低水準、ワクチン接種も世界最低水準、デルタ株のゲノム解析も5%台では、どうして感染を抑え込むことができるでしょうか。インドではデルタ株がひと月足らずの間に優性になり多数の死者を出しましたが、あまりにも危機感のない対応ではないか」と菅政権の五輪ありきの強硬な姿勢を批判しました。
 しかも、補償なしの自粛要請が長期化し、粗利補償や消費税減税をするどころか、家賃補助も持続化給付金も終わらせ雇用調整助成金特別枠も小出しの延長を決めたのは、5月の末。その結果、潰れなくてよかった会社が潰れ、解雇されなくてよかった人たちが解雇されていると述べ、表面だけの失業率や倒産件数しか見ようとしない菅内閣の姿勢を断じました。

 また、緊縮・増税・支援打ち切り路線で格差が拡がり国民の所得伸び率も大きく落ち込み、実質給与は下がり続けている中、雇用の調整弁にされているのが、非正規、若年層の女性で、子どもの貧困も拡がっていると強い懸念を示しました。
 米国では、3次にわたる特別給付金をはじめ約563兆円にも及ぶコロナ対策予算が組まれており、他の国々も大胆な救済策を講じている。しかし、菅内閣は、世界有数の予算を組んだと言いながら、多額の執行残を理由に第1次補正予算を組むことさえ拒否している。執行残は、それだけ国民に届けられなかったことであり、反省すべきだと述べ、大型の補正予算を求めました。

 また、IMFなどの経済予測でも他の先進国がV字回復ともいうべき経済成長が予測されていると語り、与党からも大型補正予算を求める声があるとして、このまま国会を閉じては助けられる国民も助けられないと訴えました。

 G7について、「(菅総理は)歴代自民党政権でさえ触れなかった問題にも触れられたが、外交の継続性、国益と安全保障の議論がどこまでなされたか不明だ」と問題提起しました。

 北方領土問題、尖閣海域における中国公船の侵入、米国GAO(政府監査院)でさえ懸念を表明している辺野古基地移転にも触れ、強行する道理はないと進言しました。国民投票法案改正案を提出した原口代行は、どうして菅総理は外国人の広告規制を積極的に取り入れようと指示なさらないのか、放送事業者の外資規制違反が判明したがこれで良いのか、認識をただしました。 

 ワクチン接種対策について、「ワクチン担当大臣等と総理の認識の違いが露呈して国民が不安に思う場面が続いており、副反応への説明も不十分だ」と述べました。

 日本学術会議会員任命拒否について、 菅総理は教育の可能性を軽んじているのではないか。人間の尊厳と自由という普遍的価値を共有できるのかと疑問視しました。そのうえで、なぜ、選択的夫婦別姓もLGBT差別解消も実現しないのか、多様性の尊重や異なる価値観への寛容について、一致できない自民党政権を批判しました。

 相次ぐ不正や不祥事(森友問題での赤木ファイルの隠蔽、農水省鶏卵事業者問題、広島における多額買収事件など)について、総理のリーダーシップは見えない。むしろ持続化給付金問題に象徴されるように特定の事業者に利益が集中しているとの疑念を国民が抱いている。国民の窮状に付け込んで口利きをするなどあってはならないと苦言を呈しました。

「国会を閉じてはならない。第1次補正も秋以降になるなら救える命が救えない。この一事をとってしても総辞職に値するものだ。政治は、国民のものであり、最高の倫理でなくてはならない。国会が国民の前で真実を述べる場でなくなれば、国会は機能を停止してしまう」と他の議員らに賛同を求め、討論を終えました。

菅内閣不信任決議案に対する賛成討論(予定稿).pdf