経済政策調査会長をつとめる江田憲司代表代行(経済政策担当)は16日、経済政策調査会の中間とりまとめを記者会見で発表しました。
 江田調査会長は、枝野幸男代表が16日の菅内閣不信任決議案の趣旨弁明の中で政権構想を示し、経済政策調査会の中間とりまとめの一端が入っていたことに触れ、「実は6月8日に調査会としての中間とりまとめをし、その後(10日の政調審議会で)党議決定を経た正式なものだ」と説明しました。

 江田調査会長は、立憲民主党の経済政策について「自民党と立憲民主党の違いはいろいろあるが、自民党は企業、とくに大企業、あるいは業界を支援基盤とする政党で、枝野代表の言葉で言えば、供給サイドに立つ政党。一方、立憲民主党は、消費者、生活者、働く者の立場に立つ政党、いわば需要サイドに立つ政党。その意味で、それを端的な表現で経済政策を表すと「分配なくして成長なし」と言えるのではないか。経済学の世界では、従来であれば経済成長と再分配は二律背反だという考えが支配的だったが、最近ではIMF、OECDといったいわゆる新自由主義的なことを標榜してきた国際機関までが格差是正、貧困撲滅が成長を促すと言っている。すなわち、成長と分配は両立する。むしろ、所得再配分機能を高めて格差是正、貧困撲滅をすることが成長につながるのだということを言い出している。これは画期的なことだと思うが、これはある意味、立憲民主党の経済政策はこれと同じ流れに沿うもの。あるいは、ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン教授の言葉を借りれば『1%から取って99%に回す経済政策』だ」と述べました。
 また、今の日本経済が一向に混迷から抜け出せないでいるが、その根本要因を見極めた上で対策を打っていく必要があるとの認識を示し、「この20数年来、実質賃金が下がり、その間に消費増税もあり、いわゆる可処分所得が減ってきた結果、国民経済の5割から6割を占める消費が伸びない――これが根本原因だ。そこにしっかりと対策を打つというのが、立憲民主党の経済政策だ」と語りました。

■基本的な政策

 政策の具体的な内容として次の点をあげました。

1.ベーシックサービスの充実
 ベーシックサービスとは医療、福祉、介護、子育て、教育といった人生を生きていく上で不可欠なサービス、言い換えれば『人への投資』。医療や福祉、教育にはそれぞれの政策目的があるが、これを経済政策的に言えば、そうした政策を通じて国民の懐を温かくする。国民の懐を温かくすれば、消費やお買い物が伸びる。

2.減税等
 一年間の所得税免除、つまり所得税ゼロ。その恩恵が及ばない低所得者の皆さんには給付金。給付付き税額控除という難しい言葉があるが、簡単に言うと給付金。消費減税5%。さらに、最低賃金を引き上げる。

 江田調査会長は、「こうした手法で、よりストレートに国民の懐を暖かくする。その結果、買い物消費が伸びる、国民経済が伸びる、国民生活を豊かにする――というのが基本的な政策だ」と述べました。

 上記の基本的な政策に加え、「国の形のような経済政策にかかわらない抜本的な政策としては、分散分権型経済の実現、言葉を変えて言えば内需主導、地産地消の経済の実現。簡単に言うと、介護の世界ではケースワーカー、ソーシャルワーカーを中心として、地域にきめ細かいニーズに応じたネットワークづくりをしていく。自然エネルギーで言えば、地方に行くほどポテンシャルが高い、小水力、太陽光、風力といった小さな会社が雨後の竹の子のように地域に出てきて、そこで雇用を生み、収益を生み出していく。これは地域間格差の是正にもつながる」と語りました。
 こうした経済政策の効果として「今言われている中間層が底抜けしている、分厚い中間層を取り戻して行く。言葉を変えれば、かつて言われた『一億総中流社会』を取り戻す、その復活を目指すのが立憲民主党の経済政策だ」と主張しました。 

■財源の捻出

 財源については、「過去には無駄遣いの解消だとか、埋蔵金がいくら出ると言っていて実際は出なかったこともあったので、今回はしっかり皆さんのご批判にも耐え得る対策を出した。具体的に言えば、富裕層、大企業に対して応分の負担を求めていく。別の言葉で言えば、優遇税制を是正していくことが肝だ」と述べました。

 所得税について「年収が1億円を超えると所得税の負担率が下がっている。お金持ちほど所得税の負担率が低いが、それは株式分離課税があるからだ。所得税の最高税率は45%。過去は75%だという時代もあったが、これをどんどん下げてきた。しかし、今や株式、金融所得に対しての税率はたったの20%しか課税されていない。お金持ちほど株取引、株取得が多いのに、所得税の負担はどんどん下がっていっている。本来総合課税であれば45%を支払わなければいけないところを20%ですんでいる。これを少なくても国際標準並みに上げていく」と述べました。
 さらに、「バイデン米大統領は、今20%の分離課税を39.5%に上げると公約し、発表された。ある程度のお金持ちに限定しているが。独仏、ヨーロッパでも大体30%前後なので、少なくとも30%に上げている。状況を見極めて、またさらに引き上げている。こうしたところで税収を得ている。所得税自体も最低50%まで上げている。累進率も上げている。けっして富裕層をいじめるということではなく、担税能力があるので応分の負担をしてほしいということだ。その意味で、1%から取って99%に回す所得税改革をやる」と説明しました。

 法人税について、大企業が一番負担しておらず、中小零細企業よりも負担していないと説明し、「こんなことが許されてよいのか。政策減税(租特=租税特別措置)がたくさんあり、大企業にどんどん適用されている。ひどいところは法人税ゼロのところもある。こういう不合理を是正していくのが立憲民主党の役割だと思っている」と述べました。法人税について、たとえば10%から40%の累進課税を導入する考えを示しました。
 社会保険料については、月収上限(たとえば現在、健康保険料の標準報酬月額139万円で頭打ち)を見直し、高所得者には応分の負担を求める考えを示しました。

 江田調査会長は、個人金融資産が1900兆円、企業の内部留保が475兆円に達していることを取り上げ、「日本はお金がないわけではなく、それが有効に活用されていない。それをするのが所得再分配政策であり、まさに立憲民主党の経済政策だ」と強調しました。

2021年6月8日経済政策調査会にて「中間とりまとめ」.pdf
経済政策調査会開催実績(20201020~20210608)).pdf