立憲民主党孤独・孤立支援プロジェクトチーム(PT)は24日、コロナ禍が長期化するなか深刻化する孤独・孤立問題について、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星(おおぞら・こうき)さんからヒアリングをおこないました。同団体は、オンラインチャットの相談を通じて孤独・自殺対策に取り組んでいます。ボランティアのチャット相談員は1,000名程度、海外在住の日本人も相談に応じ、時差を活用して24時間対応が可能になっていると言います。

 PT座長の徳永エリ参院議員は冒頭、「孤独・孤立の問題は今や高齢者に限らず若い世代のあいだでも広がっている。当事者の声が一番大切。多くの皆さんの声を聴き続けていらっしゃる大空さんにしっかりとお話を伺いたい」とあいさつしました。

 大空さんは、今の社会状況は、何らかの社会課題が発生したときに、頼れる人がいないという望まない孤独があることによって、その社会課題が悪化、あるいは構造が複雑化し、その結果、精神疾患、絶望感などを感じ自殺につながる、また新しい社会課題が起きている「バッドサイクル(渦巻き型の悪循環)」にあると分析。同団体では、望まない孤独の解消し、確実に頼れる人にアクセスできる仕組みを作っていくため、「傾聴」(相談を受ける)と「危機介入」(児童相談所や警察と連携をしながら、その場の危機を介入し取り除いていく)、「データ」を重視し、データについては特に、事前にいかに予防していくのかという視点から、寄せられた相談内容を分析・公表することで、今後の予防につなげていきたいと述べました。

 自殺者数の推移については、特に19歳以下が横ばい、ないしは増加していることを「子どもたちの人口は減っているなかで異様な状態」だと指摘。その要因の1つに電話相談中心主義とも言える支援体制を挙げ、若者に効果的にアプローチするためにはオンラインでのチャット相談などさまざまな手法での相談体制が必要だと話しました。

 相談者の属性(2020年度の相談実績)では、女性が70%以上を占め、男性が約15%、その他が11.1%と、圧倒的に女性が多いとして、この背景には「男性は『男は泣くな』といったスティグマ(差別や偏見)があり、相談窓口に来る男性は重症化した方で、そうなるまで相談に来られない」と指摘。LGBTQの方の60%以上が「自死を考えたことがある」との調査結果にも触れ、日本の自殺統計原票や、(同団体がデータを提供する際の)厚生労働省のシートにも男と女の種別しかなく、対策もデータも取れていないことを問題視、こうした書面についても改訂を求めていく考えを示しました。

 大空さんは、2018年に世界で初めて孤独担当大臣を導入した英国の取り組みにも触れながら、同団体が政府に提言した「日本における総合的な孤独・孤立対策(案)」についてあらためて説明。3つの基本方針(案)として、(1)予防的施策(2)制度・窓口の集約と広報(3)受け皿の強化・拡大――を同時並行でおこなうことが重要だと説きました。

 また、自ら望んで一人でいる積極的な孤独、英語でいう「ソリチュード」と、一般的な孤独(あえて「望まない孤独」と呼んでいる)「ロンリネス」とを区別する必要があると強調。家族や社会とのつながりはありながら「社会的に孤立していなくても孤独」な人たちへの支援の重要性にも触れ、コミュニケーション量や、つながる場所が多いというだけは社会的関係が強化されるものではなく、支援的な社会的相互作用をどう増やすか、量だけでなく質に着目した対策への転換、日本にある「頼ることは恥だ」「生活保護を受けることは恥だ」という強力なスティグマ、孤独は自己責任、個人の問題とされている社会の風潮を変えていく必要があると指摘しました。

 参加議員からは、相談員の質の確保・人材育成や、孤立・孤独対策基本法の検討、大空さんから話のあったLGBTQのデータが存在しないという問題、支援の手が届きにくい「社会的に孤立していなくても孤独」な人たちへの支援のあり方、男性が相談できないというスティグマをどう解消していくか――など、さまざまな質問や意見が上がりました。

 大空さんは、孤独・孤立対策について社会全体で広く取り組んでいく必要であり、そのためには基本法の制定も意義があると話し、SOSの出し方については、教育あるいは「誰かに頼るのは悪くない」というメッセージを社会的立場のある人が出していくことも効果があると述べました。