枝野幸男代表は30日、東京都議会議員選挙に大田区選挙区から立候補している斉藤りえ候補とともにJR蒲田駅西口前で街頭演説をおこないました。聴覚障がい者である斉藤候補は、北区議会議員を1期務め、今回青森から上京して初めて一人暮らしをスタートした、大田区から都議選に挑んでいます。街頭演説には、地元でともに活動する松原仁衆院議員、井戸まさえ東京4区総支部長も参加。斉藤候補の演説のリスピークは井戸総支部長が担当しました。

■斉藤りえ候補

 斉藤候補は、「最も大切にしている価値観の1つ、『多様性が尊重される社会』をつくっていくために、『誰ひとり取り残さない、あなたにやさしい東京』をつくるために、なんとしても勝ち上がらなければならないと強く決意している。耳が聞こえないという私の特性より、なかなか通常の選挙活動がままならない場面があるかと思う。私にしか聞こえない、小さな小さな声にきちんと耳を傾けて最大限頑張っていく」と表明。「耳の聞こえない私に議員が務まるのかという不安もあるかと思うが、でもだからこそ当事者の私が議会に入ることでやさしい東京を作ることができると信じている。東京都の多様性、もっと言うと、障がい者施策を進めていくためには、当事者抜きでは政策実現が難しいと思う。皆さまもご覧のように、リスピークをしていただいたり、手話通訳、字幕などの情報保全、さまざまな工夫が必要となる。こうした現状も含め、多様な方々が参画していくことが社会の多様性を向上させていく、たいせつな一歩だと考えている。障がいを持つ当事者だからこそ多様な価値観を大切にしていくことができる。障がいの有無にかかわらず豊かさを享受できる社会をつくっていくことができる。その仕事、役割を私、斉藤りえにさせてほしい。子どもも高齢者も障がい者も、誰ひとり取り残さない、あなたにやさしい東京をつくるために謙虚に前向きに全力を尽くしていく。あなたの声、声なき声、小さな小さな声を私、斉藤りえにお聞かせ下さい。障がいを持つ一人として、働く女性で子育てする一人として、皆さんの思いを、思いを尽くし、全力を尽くしていく。どうぞよろしくお願いします」と訴えました。

■松原仁衆院議員(東京3区総支部長)

 松原衆院議員は、「多様性が求められる時代にあって、立憲民主党が模索し、実現しようとしている多様性の象徴としてご支援をいただきたい。1歳10カ月で聴力を失ったが、活力いっぱい。苦難のなか夢を持ち、希望を持ち、ネバーギブアップの精神で頑張ってこられたのは多くの皆さんの支え、応援があったから。『みんなで多様性のある社会をつくっていこう』と思えたから。多様性の時代の扉を、ここ蒲田から開けていこう」と訴えました。

■井戸まさえ東京4区総支部長

 井戸さんは、ベストセラーにもなった斉藤さんの著書『筆談ホステス』に触れ、「斉藤りえの半生を描いただけでなく、ステレオタイプの思い込みや偏見を崩し、可能性を追求する、選択肢をもって歩んでいくという、リアルな障がい者像を描いたと思う」と話し、この本が注目されたことで障がい者の施策が変わったと意義を強調。北区議会議員1期4年の活動で、日本で初めての手話言語条例を作ったり、議場にパソコンを持ち込めるようになったなどの実績を重ねてきたと紹介し、「コロナ禍でもっとも大変な思いをしているのが、シングルマザーであり、障がいをもつ当事者であり、ひとりの働く女性である斉藤りえが置かれた立場。こうした声を都政に伝えていかなければ日本は変わらない」と斉藤候補への支援を呼びかけました。

■枝野幸男代表

 枝野代表は、コロナ禍で東京都においても保健所が足りない、都立・公立の病院が足りないなど、いざというときに支えとなる医療がひっ迫、「救える命が救えない」状況になっていると危機感を表明。こうした状況を変え、万が一病気になったときでも安心できる東京を、東京の医療をつくるには、障がいを持ち、そのことによるさまざまな壁、厳しい状況にふだんから直面し、安心できる社会の実現をめざし立ち上がった斉藤さんの力が必要だと訴えました。

 いのちの問題だけでなく、国や東京都の感染拡大防止に協力した、飲食店に限らずさまざまな事業者、働く人たちが仕事を続けられなくなっていると指摘。「政治とは何か、その根本が問われている。自己責任で、自分の努力でうまくいっているときはいいが、どんな方でも人生のなかでまさかという何かが起こり、自分の力だけではどうにもならないときがある。自助努力ではどうにもならないときがある。そのときのためにあるのが政治の根本だ。いざというときに頼りになる政府を取り戻したい」と力を込めました。

 東京都では、わずかばかりの飲食店に対する支援金の支払いも遅れていることも問題視。「商売を支える大きな仕事が都道府県にはある。暮らしと結びついた、日々の日常と結びついた仕事を東京都政は軽く見続けているのではないか。パフォーマンス、浮ついた都政ではない、いざというときにいのちや暮らしや商売を下支えできる都政へと変えていこう」と呼びかけました。

 その上で、今の国の政治、都政には多様性が見えていないと述べ、「飲食店、観光、イベント、文化・芸術など、全然商売にならないところもあるが、巣ごもり需要で儲かっているところもある。統計をとって平均値をとってばくっと見ていたら『そこそこではないか』という話になる。感染拡大防止にご協力いただいている皆さんを見ずに潰してしまっていいのか。その影響で仕事を失い、明日の食べ物にも困っている皆さんを見なくていいのか。そのことが問われている」「多様な皆さんがこの東京で生きている。暮らしに余裕のある方もいる。明日の食べ物にも困っている人も、お一人暮らしの高齢者も、若い人もいる。家族何人かで過ごしている人もいる。ご商売が順調な方、厳しい方。多様な人が暮らしているのに十把ひとからげにして見ているから、いざというときに頼りになる政治にならない。斉藤さんは十把ひとからげにされたら生きていくことも困難な、そんななかで生きてきた。障がいをもった方だけでなく、都政が、政治が見落としているさまざまな声がある、暮らしがあることを誰よりも分かっている。だから政治を変えないといけない」と訴えました。