枝野幸男代表は29日、国会内で定例の記者会見を開き、過去最多を更新の新型コロナウイルス新規感染者(新規陽性者)数や、本多平直衆院議員の辞職等について発言しました。

 枝野代表は冒頭、新型コロナウイルス感染に関し、東京都で28日、新規感染者数が3177人と過去最多を更新、アスリートを含めて東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会が発表した感染者の累計は169人(28日は16人)に上っていることに触れ、「事前の政府の説明が全く実態を伴っていなかったことが明らかになっている」と問題視。一方で、アスリートや関係者らに対して、「厳しく難しい状況の中でも最善を尽くして競技に臨んでおられる。困難な中でも、感染拡大を防ぎつつ競技を円滑に遂行しようと努力しておられる現場のスタッフやボランティアの皆さんを含めて心から敬意を表したい。長年の努力の成果が自信を持って発揮できるよう、テレビの前で応援をしており、日本選手の活躍を喜んでいる」とメッセージを送りました。

 その上で、「政府は事態を深刻に受け止め、緊急事態に対する危機管理として、より強い緊張感を持ち、国内における感染拡大の抑制や医療体制の確保、そしてオリンピック関係者の感染防止に当たることを強く求める。特にオリンピックが開催されている一方で、人流の抑制など、国民の皆さんにより一層のご協力をお願いし、且つそれにご理解をいただくには、総理や、例えば東京都知事などが積極的に前面に出て、事態を率直に語り、真摯(しんし)に自分の言葉でお願いをすることが不可欠」だと指摘。菅総理に対しては、「自由な質問が制約されることがないよう十分な時間を確保した記者会見を開くこと」「一日も早く臨時国会を召集して、国会の正式な場で直接かつ十分な説明と、国民の皆さんに対するお願いをすること」を求め、「飲食店などを中心に業種や地域を問わない企業支援として、持続化給付金をバージョンアップした形での再給付をし、協力できる状況を整える。国民の命と健康を守る責任から逃れることなく国民と真正面から向き合うことを強く求める」と述べました。

 次に、性行為への同意を判断できるとみなす年齢の引き上げに関する発言をめぐり、本多平直衆院議員が立憲民主党を離党、議員辞職したことについて、枝野代表は「ジェンダー平等の推進に期待していただいてきた皆さん、特に、党ワーキングチームでお話を伺った島岡まな大阪大学教授、そして、性犯罪被害者の皆さんに、党の代表としてあらためてお詫び申し上げます。前回選挙で立憲民主党に投票いただいた皆さんをはじめ、すべての国民の皆さんにお詫びいたします」と陳謝。今回の経緯を反省し、その教訓を踏まえて以下4点の抜本的改革案を示し、執行役員会などの了解を得た上でこれら取り組みを精力的に進め、失われた信頼の回復に全力をあげると表明しました。

 第一に、党全体として、性犯罪の実態や、その背景にある日本社会が抱えるジェンダー差別の本質について、十分な認識の共有がなされていなかったことを反省し、私自身が先頭に立って抜本的に変えてまいりたいと思います。
 特に、性交同意に関する自由意志などの規定や実務を含む現在の性犯罪に関する法体系など、日本社会が抱えるジェンダー差別の本質について、女子差別撤廃条約や、国連女性差別撤廃委員会による日本政府に対する累次の勧告などを踏まえた認識の共有を進めてまいります。
 具体的には、女子差別撤廃条約や政府への勧告についての研修を、最終的には都道府県連まで含めて順次進めるなど、改革プログラムを作り実施過程を公表してまいります。

 第二に、そもそもの背景として、今回のワーキングチームでの議論も含め、議論や意思決定の場に、圧倒的に女性が少ないという実態が存在します。私自身を含め、党内のみならず政治の世界に、男性が、とりわけ、ある程度年齢のいった男性が圧倒的に多いという現実がある中で、ジェンダー平等を掲げながら、足元の党内でどのようにそのことを実現していくのか、積極的な姿勢が足りなかったことを真摯(しんし)に反省しなければなりません。
 個々のジェンダーにかかわらず、私たちは全国民の代表として、さまざまな立場の人の視点に立って日々活動をしています。私自身も、選択的夫婦別姓の実現に向けた活動など、ジェンダー平等の推進に一定の役割を果たしてきたとの自負があります。
 しかし、ジェンダー平等のためには、可能な限り、社会と同じ性別構成、年齢構成を目指していく必要があります。ポジティブ・アクションの採用を含め、各級選挙における候補者選定や党本部事務局スタッフまで含めてジェンダー平等の実践を図ってまいります。
 この努力を進めることによって、できるだけ早く、政策の決定過程に、当たり前に女性の視点が入っている状況を作っていきます。この秋の総選挙を経て、その次の総選挙までには、確実にこの状況を作っていくため、精力的な取り組みで、候補者、議員、そして党職員も含めて、女性比率を、2030年には最低でも3割を超えるよう、具体的に目標を定めて実践してまいります。
 さらに、政権を担当した際には、現政権が断念した「指導的地位の女性割合3割達成」を現実的に達成するロードマップをひいて、これを強力に推進することをお約束いたします。

 第三に、以上二点について党を挙げて精力的に推進するため、規約に基づく党の常設機関であるジェンダー平等推進本部の本部長を、私自身が務めることとします。
 規約上は、幹事長や政務調査会長に対する提言機関のような位置づけになっていますが、私自身が本部長を務めることで、より強力かつ直接的に、ジェンダー平等の視点を党運営や政策立案に反映させてまいります。
 特に、政務調査会におけるジェンダー差別に関連する会議体の設置にあたっては、ジェンダー平等推進本部との共管として、政策決定過程にジェンダー平等推進の視点が重視される体制を担保します。

 第四に、今回の問題の発端が、政務調査会に設けられたワーキングチームにおける議論での発言であったことから、情報管理のあり方と自由闊達な議論の担保など、ガバナンスのあり方が問題となりました。
 まず、党内において自由闊達に議論がなされるべきであることは当然としても、それが党の公式の会議の場における国会議員としての公的な立場に基づく発言である以上、責任を伴うことも当然であると考えています。何より私たちは、政府・与党に対して、意思決定過程の議事録作成とその情報公開を求めてきています。
 発言された政策内容自体の是非、賛否そのものによって党としての処分対象になるようなことは当然あり得ませんが、その議論の過程における党内会議での発言は、外部に公開されうること、そして、その表現のあり方によっては、社会的、政治的に強い批判を受けうることについて、再度認識を深めるよう、党内で徹底してまいります。
 一方で、非公開の前提でなされた内容が外部に伝えられた経緯について疑義が示され、また、詳細かつ正確な発言内容の確定に困難をきたしたことは、ガバナンスの問題としてすみやかに改善しなければならないと思っています。一般的な公開の有無、問題が指摘された場合に備えた正確な記録とその管理、必要な場合の公開基準などについて、政務調査会を中心に、立憲民主党が準備を進めている情報公開法等の改正案で政府に求めている基準をもとに、すみやかにガイドラインをつくるよう指示してまいります。
 同時に、党員の倫理の確保に関連して、倫理規則第3条及び第5条3項に規定する調査について、事実関係の確定に困難をきたす場合に備えた第三者的調査体制の整備など、より迅速かつ公平な手続きを担保するための改善策を、私自身がトップとして整理をしてまいりたいと思っております。

 続いて質疑応答がおこなわれ、オリンピックが開催に対する現段階での見解を求められると、「われわれが危惧した通りの状況になっており大変残念な状況の中でのオリンピックになっている」と懸念を示した上で、「政権を担うべき政党として、あるべき論と同時に、現実というものを冷静に見極めなければならないと思っている。まずはアスリートの皆さんには目の前の競技に集中して全力を出していただきたい。そして政府、そして特に総理は、この状況を重く受け止めて、『国民の命と健康を守る』責任から逃げることなく、真正面から向き合って対応することを強く求めていきたい」と述べました。

 冒頭発言の「抜本的改革案」のなかで言及した「2030年までに指導的地位の女性割合3割達成」について、衆院選挙の公約に掲げるかどうかを問われると、枝野代表は、「秋の総選挙で政権を取れば、ここから10年弱の間だが、現実的に達成するロードマップをひいて強力に推進する。どの紙にどう書くかは別として、ここで申し上げているので、わが党としての明確な公約だ」と明言しました。

 国際通貨基金(IMF)が27日に発表した世界経済見通しで、2021年の日本の実質成長率を2.8%と、4月時点の予測を0.5ポイント下方修正したことについて、日米欧の主要7カ国(G7)で予測が悪化したのは日本のみであることに、「日本が相対的に沈んでいくような状態になってきているのはないか」との問いに対しては、「日本の成長力という問題よりも、この間、日本のバブル崩壊以降の長期低迷の主要因がどこであるのかが顕著に出ている」との認識を明示。この間日本の成長力の足を引っ張っている内需、国内消費を拡大するためには、「格差を是正して消費できる所得を国民の皆さん、中間層から低所得者の皆さんに再分配すること」「将来不安を小さくすること」の2点が何よりもの経済対策だとあらためて強調しました。

 加えて、「雇用者数、事業者数から考えても中小企業・小規模企業者が安定的な発展をしていかない限りは日本の経済は成り立たないというのが一貫した姿勢」だとして、政権を取ったら政府を挙げて、小さな企業を支援するための政府全体のプロジェクトにしていきたいと述べました。