「在宅医が肺炎症状、呼吸器症状がある方を診ることはできません。やはり、そういう中等症の患者さんを医師が効率性をもって管理できる宿泊療養施設――この準備を、なぜもっと早くしておかなかったのか」(中島克仁衆院議員)。

 4日の衆院厚生労働委員会の閉会中審査。立憲民主党の3番手として、自身が医師でもある中島克仁議員が質問に立ちました。政府がコロナ患者の入院方針を転換し、入院要件を厳格化したことについて、田村憲久厚労大臣をただしました。また医師としてコロナ患者に処方しているイベルメクチンの製造企業側による販売規制(自粛)について、田村大臣の指示による撤廃を求めましたが、田村大臣は消極的な姿勢に終始しました。

 冒頭、中島議員は今回の入院方針の転換に至る過程で、田村厚労大臣が「フェーズが変わった」と発言した点を取り上げ、大臣の認識が変わったのは何を契機としたものだったのか、問いただしました。これについて田村大臣は(1)それまで前週ベースで1.3倍だった実効再生産数が、あっという間に2倍となった(2)新型コロナウイルスの感染力が、(実効再生産数が8倍程度ある)水疱瘡(水ぼうそう)並みかもしれないという米CDC(疾病予防管理センター)の内部文書の存在が明らかになった(3)緊急事態宣言の発出により、繁華街の夜間の滞留人口はやや減っていたにもかかわらず、新規感染者数の伸びが倍増したこと――を挙げました。これに対し、中島議員は「今回のデルタ株がどれほど脅威をもたらすかは、インド地域での感染爆発状況を見ていれば、当然予想はつく状況だった。国内でも尾身茂政府分科会長をはじめ、京都大学や国立感染症研究所の専門家たちも警鐘を鳴らしていた。専門家たちの警鐘にもかかわらず、これまた後手後手に回っているのではないか」と指摘しました。

 臨床在宅医の立場から中島議員は、中等症Ⅰの患者について、「これはもう肺炎所見がありますから、その上、呼吸器症状がある方は在宅では診られません。在宅医師をどう確保しているのか確認させてください」「症状がある、軽症と言ったって40度の発熱があって咳き込みがある訳です。最初は画像診断で肺炎の所見がなかったかもしれないが、数日間40度の発熱があって、そして中等症なのか、それとも軽症のままなのか、在宅経験のない医師は判断ができません。軽症なのか、中等症Ⅰなのか、いったい誰が判断して、そして入院の可否を誰が判断するのですか。在宅で管理する医師は、どうやって(患者を)管理するのでしょう。在宅医療の整備は、もう万全になっているという理解で良いのでしょうか」とただしました。

 これに対し、田村厚労大臣は「スマホとアプリで管理できるような形で、日々の経過観察の対応をしていく。勿論、悪化の兆候があれば、それは在宅での医療――在宅といいますか往診も含めて――、あとは遠隔診療という形になりますが。東京においてはかなりの区で対応を頂いてると、われわれも確認している」と述べました。同時に「ただ今のように倍々のペースで増えていけば、それは人数に対して医師の数も限られておりますので、なかなか難しい部分は出てくると思う」とも答弁しました。

 中島議員は「現状でも感染拡大している段階で、武器も持たずに在宅医が肺炎症状、呼吸器症状がある方を診ません。やはり医師が効率性をもって、そういう中等症の患者さんを管理できる宿泊療養施設――この準備を、なぜもっと早くしておかなかったのか」「肺炎症状がある方を原則自宅で診る、こんな方針を政府が立てたことは、私には大変ショックですし、それぐらい今、危機的状況なんだと大臣は国民に対して明確にメッセージを出すべきだ」とも述べました。

 また医師として、コロナ患者の診療の際に処方している「イベルメクチン」について、製造メーカー側の販売規制(自粛)がかかっているとも指摘。「患者に対し、一刻も早く可能性のある、選択肢を広げるのが政治の責任だと私は思います。使用したい方、使いたい医師が使えるように、大臣から指示を出していただきたいと思いますが、いかがですか」と、田村大臣の指示による規制の撤廃を求めました。これに対し田村厚労大臣は「『診療の手引き』の中に、しっかりとイベルメクチンも記入させて頂いております。販売自粛については、民間の企業の方針というものがある中において、なかなか申し上げづらい。エビデンスがあれば別だが、ご承知の通り、今は治験の最中。『診療の手引き』に則り、ご使用頂きたい」と消極的な姿勢に終始しました。これに対し、中島議員は「『診療の手引き』で示していて『使っていいよ』と言ってるものに対して、政府は責任を持って供給確保する責任がある」と反駁し、この日の質問を終えました。

20210804厚生労働委員会提出資料.pdf