山本和嘉子衆院議員(京都5区)は22日、Webミーティング「この国の将来について考えよう」を開催し、枝野幸男代表、福山哲郎幹事長と対談しました。同日、枝野代表を福知山市に迎えて時局講演会をおこなう予定でしたが、新型コロナウイルスの感染状況を受けてオンラインでの対談に変更しました。

 対談は新型コロナウイルスへの向き合い方と対策、人口減少・少子高齢化におけるこれからの日本、農業のあり方、総選挙に向けた取り組みについて山本議員が枝野代表と福山幹事長に質問する形で進められました。山本議員は、地元を歩いていると「野党としてしっかりとした政策を示してほしい、2大政党制を実現させてほしいと多くの期待を寄せていただく一方で、支持率が低迷しているというご指摘も受けている。枝野代表には枝野ビジョンの中身を含めて日本のあるべき姿を示していただきたい」と語り、対談を始めました。

 枝野代表は、山本議員は地域を積極的に回り、地域の声を集め、国会でも新人ながら即戦力として頑張ってもらっていると評価しました。今の政府が当たり前のことを当たり前にできていない原因は、たとえばコロナで困っていらっしゃる現場の、千差万別のいろいろな事情、状況を受け止めておらず、さらに情報を共有できていないことだと話しました。そうしたことを考慮しても、山本議員が地道に活動し、地域の声を直接国政につながげていることを地元の皆さんにも知っていただき、さらに活躍を続けてもらいたいと話しました。

■新型コロナウイルス感染症に対する危機管理

 山本議員は全国で1日の新規感染者数が2万5000人を超える厳しい状況について触れ、枝野代表に政府のコロナ対策についての受け止めと立憲民主党だったらどうするのかを問いました。

 枝野代表は自身が官房長官として東日本大震災と原発時期に対応した経験から、危機管理は常に悪い方の想定をしながら対応していかなければいけないのが基本中の基本だが、「今回は常に根拠なく、楽観的な見通して物事に対応している。この状況を続けている限り、状況は改善しない。よほど運のいいことが重なって起こらない限り、この危機から脱却できないと言わざるを得ない」と政府の対応を批判しました。
 現政権のコロナ対策の問題点として、正確な情報が総理や大臣に上がっておらず、情報が閣僚間・省庁間で共有されていないことを挙げました。東日本大震災の際は、全閣僚を集めた会議を毎日どころか、1日に複数回開催することもあったと振り返り、「全閣僚が集まってちゃんと情報共有する。そういう場だと、たとえば総理に忖度して、調子のいい情報だけ伝えるわけにいかない。記録が残るので、あの役所が無責任な楽観的なことを言っていたと後で言われてしまうので、きちっとした情報が上がってくるし、共有できる」と説明し、政権を取れば、翌日にこの態勢をつくると言及しました。「全政府を上げて総理の下にきちっと正確な情報が速やかに入り、その共有のもとに対策を打っていくという当たり前のことだけれども、1年半出来ていない当たり前を、まず当たり前にしていきたい」と話しました。

■医療提供体制

 山本議員は新型コロナウイルス感染症の重症者が過去最大の全国で1800人を超え、自宅療養を余儀なくされている中、自宅で亡くなる方が相次いでいることを取り上げ、医療体制をどのようにしていくべきかを福山幹事長に尋ねました。

 福山幹事長は、コロナ患者を受け入れる病院、病床が足りないことについて、病床を増やすのは法律的には難しく、国が無理やり増やせる状況ではないと説明した上で、「問題は、先々感染が広がることを見越してどういう形の準備を指示するかというのが国の役割。都道県に権限があるが、よって立つ財源や、国のバックアップが明示されていないとリスクは踏めない」とし、国が財政支援などを明確に表明すべきだと話しました。
 一方、自宅療養を余儀なくされている患者のために宿泊療養を整備することは新型インフルエンザ特措法で可能だとし、ビルや大型施設を等を借り切ったり、プレハブを建てたりすべきだと話しました。設置主体は都道府県だが、「国がやるぞという意思を示したら、それは一気に広がる」と述べました。今の政府は、「インフルエンザ特措法でできることをやらないのに、抽象的で何言っているのか分からないような話をいくらしても国民は納得しないし、オリンピックをやって国民に自粛しろと言ってもそれはなかなか説得力がない。全体としてのマネージメントと国の意思がはっきりしないことが問題だと思う」と語りました。病床について「東京都は2倍に増やしたらしいが、さらに増やす余地をどのように国が主導するかだと思う」と語りました。

■国会開会の必要性

 山本議員は緊迫している新型コロナの状況に対応するために「国会を1日でも早く開いてこうした議論を進めていくべきだ。地元でも国会を開かないのかと指摘される」と話し、枝野代表に考えを聞きました。

 枝野代表は、予算と法案の審議は国会を開いていないとできないと話し、立憲民主党が提出した、持続化給付金再支給法案、コロナ特別給付金法案、検査拡充・病床確保・医療従事者等支援3法案などを取り上げ「政府に案がないのなら、われわれが出している案を議論してもらいたい」と話しました。また、昨年度の予備費が5兆円ほど積み残しがあるが、臨時病床、宿泊療養施設を国の責任でやるにはら補正予算は不可避だとした上で、「自民党総裁選挙だ、その後任期満了で総選挙だと言ったら3カ月くらい国会が開けなくなる。だからその前にちゃんと国会を開いて補正予算をやっておきましょう、最低限の法律をちゃんとつくっておきましょうよと言っている。政府ではないので予算案は提出できないが、中身はわれわれも提案をしている」と述べました。野党が憲法に基づいて国会召集を要求していることについて、「憲法には国会議員の4分の1の要求があれば開かなければならないと書いてある。開くのはいやだと拒否できない。政府が言えることは、いつまでに開くのでちょっと待ってください、急に明日開けと言ってもそれはできないと言うならまだ100歩譲れる答えだが、今は全く開こうとしていないのは明確な憲法違反を公然としているわけで、憲法の観点からも許しがたい」と批判しました。その上で、「国民の皆さんの後押しをいただいて1日も早く開かせなければいけないと思っている」と述べました。

■生活困窮者への支援

 山本議員はコロナ禍が長引き、仕事を失い生活に困窮する人が増え、自殺者も増えていることに危機感を示し、こうした状況についてどのように取り組むべきか福山幹事長に尋ねました。福山幹事長は「たとえばパートの仕事を失ったひとり親世帯等は、夏休みで給食がない分食事代がかかったり、塾に行きたくても行けなかったりしている。高校生で親が仕事を失ったことを理由に大学進学を諦めるようなことが出てきている。そういう声がひとり親世帯を支援しているNPOなどにはいっぱい届いていて、党の会議でそれをたくさん伺ってきた」と話し、それを受けて立憲民主党は、子育て世帯の給付金を夏休みの前に給付するよう、国会が閉会する前の6月から政府に求めているが実現していないと報告しました。コロナで厳しくなっているのは飲食店だけではなく、幅広い業種、業態に網をかけて救済するために持続化給付金をもう1回給付することを求めてきたが、政府は動かず昨年度の予算が30兆円残っていると嘆きました。立憲民主党は「補償をちゃんと出すようにと1年半ずっと言って来たが、結果として継ぎはぎの協力金や給付金になった。全部を変えるわけにはいかないが、われわれが政権を取らせていただいたら補償と自粛や補償と時短の関係について少しガイドラインを見直さないといけないのではないかと思っている」と表明しました。

■人口減少に向き合う

 山本議員は、地元では人口減少・少子高齢化が顕著で、地域・集落の維持、生産人口の維持が最重要課題になってると述べ、支え合う日本という観点から過疎化、人口減少についてどのように課題を解決していくか枝野代表に問いました。

 枝野代表は「日本全体で人口が減っていくので、一定程度じわじわと減っていくことは都市部を含めて避けられない」との認識を示した上で、「急激な人口現況は地域で持続してきたものを壊してしまうので何とか食い止めなければいけない」とし、若い世代が故郷に残れるようにしていかなければいけないと話しました。過疎地域ほど高齢化率が高く、医療や介護のニーズが高いこと、若い世代にとって教育が大事な要素であることを挙げ、そうした分野で仕事をつくり、賃金水準を引き上げることで地方に住み続けられるようになると話しました。これに加えて太陽光、水力、地域によっては風力とか地熱等の自然エネルギーを促進すべきで、過疎地域ほど有利な条件が整っているところが多いと述べました。。そして「こうしたことをパッケージにしていけば、人口が減ることは止められなくても、減るスピードを大幅に緩やかにし、尚且つ、ある所で止まり、その地域で持続的に生活できていく社会がつくっていけると思う。遅すぎるくらいなので、急いでスタートさせないといけない」と話しました。

 山本議員は、地域の活性化を京都北部地域でどのように実現していくかを福山幹事長に聞きました。福山幹事長は「われわれが政権の時に京都縦貫自動車道にしっかり予算をつけた。新名神高速道路は2年後に通じて北部から南部まで全部つながることになる。加えて舞鶴の国際拠点港の整備をして物流も含めて関西と舞鶴をつなごうと。状況によっては、新名神がつながれば中部地方ともつながる。そうした想定の中で観光と物流をつなげていくというイメージでわれわれは政権の時に当時の山田知事とも連携をしながらやってきた」と構想について説明した上で、残念ながらこのコロナ禍で観光が完全に誤算になってしまったと説明しました。
 京都北部だけではなく、京都市内もホテル、旅館、飲食、お土産ものを含めて人が来なければ商売にならないので、観光に特化するのは非常にリスクが大きいと話しました。しかし、コロナはいつかは終わるのだから、それまでに何とかそのやっていた人を支えるのが国の役目だと思っていると述べ、持続化給付金の再支給が必要だと強調しました。
 また地方の高齢者施設、介護に従事する者の賃金が低いことに触れ、「地域のお年寄りをしっかりケアしてくれる人というのはエッセンシャルワーカー。その対価、人件費等は国がこれだけ持つ、というのはメッセージとして出していかなければいけないのでではないか」と話しました。

■女性の活躍

 山本議員は地元で介護サービスの人手不足、生産人口が減っていることが問題になっている点に触れ、専業主婦だった方や子育てが一段落した方が仕事をもつことが期待されると話し、女性の活躍についての認識を枝野代表に聞きました。

 枝野代表は、「この問題は政治ができることと政治ではできないことと重なっている。残念ながら社会の中に夫婦2人、妻は専業主婦に子ども2人のいわゆる「典型所帯」のようなものがイメージとしていまだに残っている。それが企業、仕事の場においても、そうしたバイアスのようなものが年代にもよるが、強く残っている」との認識を示し、女性がそれぞれの力、持ち味を発揮できるような構造をつくっていかなければならないと話しました。そうした社会に向けて1つひとつは決定打ではないが、いろいろなことを同時平行で進めていかなければいけないとし、その中で1つの象徴として選択的夫婦別姓というのは非常に大きいと語りました。「嫁に行く、嫁にもらうといった日本語がいまだに残ってしまっているということについて、時代状況、社会構造が違いますねということの強いメッセージになると思っている。この間、抵抗が大きかっただけにメッセージとしては大きいと思っている」と語りました。
 次に、子育てを社会全体で担うことを挙げ、「希望すればどなたでも質の高い保育が受けられるという構造で、子育てはもう家族だけでは担いきれない。女性、母親に依存している構造では無理。同じことが介護についても言える。日本で昭和のある時期までは、子育てと介護は女性の仕事という意識が強く残っていたことが、女性の社会参加にものすごく抵抗になっていると思うので、この2つを社会全体で支えるという基盤をつくることが、大きな影響力をもっているポイントだと思っている」と述べ、できるだけ速やかに進めていきたいと語りました。

 山本議員は女性の活躍をしっかりとサポートできるように、ジェンダー平等の観点からしっかり頑張っていきたいと意気込みを語りました。

■農林水産業

 山本議員は、地元の基幹産業である農業について、担い手不足・後継者不足が大きな課題になっていると指摘しました。全国の農業人口が2000年には389万人だったのが、約20年後の2019年には168万人となり半減し、農業従事者の平均年齢は67歳と高齢化していること、地元でも空き家・空地と並び休耕田も増えていることを説明しました上で、今後の農業のあり方について枝野代表に聞きました。
 枝野代表は、「農業だけでなく、林業、水産業にも言えるが、第2次、第3次産業と同列の経済合理性だけで判断するのはもう時代遅れだと思う。確かにこの間、競争して勝てる農業に対する支援はそれなりに政府がやってきたが、実際に大規模化することで競争力を高めたり、高品質の産物の競争力を高めて一部うまくいっているが、日本の農業の耕地面積とか従事者数から言ったら圧倒的な部分はそれに対応できない。これに対応できないものは、自助努力が足りないから消えていってよいという社会を選ぶのかということがわれわれに問われている」と提起しました。「農業であれば食糧安全保障もそうだし、水、緑、空気、災害防止という多面的な効果があって、単純なお金儲けのための道具ではない」という認識に立ち、「必要なことをどうやって支えるのかと言ったら、みんなで出し合った税金でその仕事に就いている人たちが、ちゃんと継続的にその仕事を営めるようにお金を出すのは当たり前だ。国会議員もそうだし、裁判官、警察官だってその仕事から何の経済的価値を生み出していないけれども、社会に必要な仕事だからその仕事をしている人たちを支えるためのお金をみんなで負担していく。1次産業はこれをベースにしていくべきだ」「その分かりやすい具体的な対応策が戸別所得補償制度だ」と説明しました。

■衆院選に向けて

 山本議員は支持者から立憲民主党の支持率が上がらないことを心配されると話し、党としてどのように取り組むのかを福山幹事長に聞きました。

 福山幹事長は、日本社会ではどこの政党を支持するかということを表明する文化がないこと、コロナ禍が厳しい状況で野党を支持をするかどうかを考える余裕がないのではないかということを指摘しました。また、菅内閣の支持率が落ちているということで政治全体への信頼が失われ、支持政党なしが増えているのではないかと話し、「菅内閣の支持が落ちたからすぐに立憲民主党に飛び乗るような支持は、それは支持とは呼ばないと思う。そうしたブームで失敗した例はたくさんある。支持なし層の方がたくさんいらっしゃるということは、次の選挙の時に本当にじっと立憲が本当に信頼できるのか、菅さんのままでよいのかをみんなが吟味する土俵がようやくできつつある」との考えを示しました。そして、枝野代表に総理になってもらおうと思ってもらい、一票を投じていただけるような環境をこれからあと2カ月の間どれだけ頑張れるかがわが党の勝負所だと話しました。4月の補欠選挙・再選挙で3連勝しことを挙げ「有権者は見てくれていると思っている」と期待を込めました。

■「変えよう。」に込めた思い、

 山本議員は18日に発表された新しい政党ポスターの「変えよう。」という言葉に込めた思いを枝野代表に聞きました。

 枝野代表は「足元では命の危機、暮らしの危機に直面している人がたくさん出ていて、皆さんとにかく何とかしてくれよと思っておられる。何とかするには変えなければ何ともならないということは皆さん気付いていらっしゃると思う。われわれは、ここを変えるんだという準備ができている。今はコロナでひどい状況になっているけれども、明治維新から150年進んできた前提が全部違ってしまっているのだから、150年で人口が4倍に増えていたところが、今のペースで行くと、同じペースで減って行く。だから同じようなやり方がうまく行くはずがないのに、オリンピックとか万博とか、それこそ人口が一番増えていた時期の成功体験に縛られていたらどんどん悪くなる。だからとにかく勇気をもって『変えよう』という呼びかけをさせていただいた」と説明しました。そして、政権が変わって全てが明日からバラ色になるわけではないが、変え始めないともう間に合わない状況ではないかと思っていると話し、「だから皆さんに『変えましょうよ』ということを伝えていきたい。変えるのは私ではなく、立憲民主党でもなく、有権者の皆さんだ。だから『変えます』ではなく、『変えよう』という呼びかけをさせていただいた」とポスターに込めた思いを強調しました。

 山本議員は最後に、京都5区はずっと保守が強い地域だが「時代を変えるという思いで総選挙に向かってしっかりと活動していきたい」と決意を述べました。