遅くとも今年の秋にはおこなわれる衆院総選挙に向け、次回の総選挙の意義、立憲民主党がどのように臨むのか、福山哲郎幹事長に話を聞きました。(取材日:2021年6月30日)

――理念や政策で政権を選択する状況が整った

 次回の解散総選挙の非常に大きな意義、それは、自民党に対抗する大きな固まりの立憲民主党ができたことにより、国民の皆さんに政権の選択肢を示すことができることです。野党がばらばらではなく大きな固まりになった。野党第1党としての責任と、将来の日本の社会をどういう形に作っていくのか、そして自公政権とは違い、どのような形でコロナ後の社会を展望するのか。こういったことを明確に示して有権者の皆さんに信を問うことになります。私が最近非常に感じていることは、「立憲民主党と自民党との違いが分からない」と言われないことです。つまり、政策や理念、政治の手法が明確に立憲民主党と自民党は違う。小選挙区制度導入から25年にして、ようやく理念や政策で政権を選択する状況が整いました。安倍・菅政権で見えてきた自民党の限界、まさに昭和の政治そのものに限界を感じている国民の皆さんに、自信を持って立憲民主党を選択してもらう。それは党を選択するだけではなくて、日本の将来のあり方を選択することだということを確信を持って伝えていくことが重要です。

――約9年の自民党政権がもたらしたもの

 この自民党政権の約9年間で現れてきた問題は、一つはコロナ対策に見られる危機管理について、菅内閣、安倍内閣共に機能しなかったことです。機能しなかった原因として、(1)情報を国民に出さないこと(2)司令塔を明確にしないこと(3)科学、専門家の意見を非常に恣意的に扱ったこと――が挙げられます。その結果、後手後手にまわり、行きあたりばったりの政策が続き、そして私たちが主張していた「自粛と補償はセット」ということまでが、つぎはぎの中途半端な仕組みになったこと。野党が持続化給付金や家賃支援金、雇用調整助成金の特例措置など、具体的な提案を政府・与野党連絡協議会ですることによって、問題点はありながらも何とか補正予算で救済のスキームができましたが、そうでなければ、コロナ対策は感染防止も、ワクチンの接種も、そして自粛と補償のセットの問題も、全て国民が納得できるものではなかったです。二つ目は森友学園、加計学園、「桜を見る会」、学術会議等々の問題に見られる嘘をつく政治姿勢。文書を改ざんする、国会で虚偽の答弁をする、情報を出さない、隠す。このことが年中行事としてずっと続きました。つまり、政府・自民党がしようとしていること自身に信頼性が置けないということが、約9年間で明らかになりました。「まっとうな政治」に変えていかなければいけません。

――立憲民主党が信頼できる政府を取り戻す

 立憲民主党が政権をとれば、まず十分なコロナ対策を講じます。それと同様に大事なのは、今申し上げた森友、加計、「桜を見る会」等に関して徹底的に情報開示し、真相究明チームをつくり信頼できる政府を取り戻します。このことをまずは国民の皆さんにお示しします。旧民主党政権の時に、岡田克也外務大臣(当時)が核の密約を解明しました。私は外務副大臣としてその作業を見てきましたが、われわれは安倍・菅内閣がおこなってきたさまざまな事件についての真相究明、解明についてすぐに取り掛かり、政府自身が国民の皆さんの信頼を取り戻すことをしていかなければいけないと思います。そして三つ目は、社会のあり方に対しての違いです。自民党政権は枝野代表が20年にわたって主張してきた選択的夫婦別姓について未だに結論を出せないでいます。そしてオリンピック・パラリンピックの年にもかかわらず、LGBT差別解消の問題は議連では法案がまとまっていましたが、自民党の一部の議員の反対によって、それも非常に差別的な発言によってまとまりませんでした。選択的夫婦別姓もLGBT差別解消法案の問題も社会のあり方をどうするかということに関わります。また女性のジェンダー平等の問題も同様です。日本は女性の活躍が遅れている、LGBTに対する差別がある、女性のジェンダー指数が国際的に非常に低い、こういったことを払拭し、あらゆる方々が排除されない社会をつくっていく。このことについてもわれわれが政権を担えばすぐに選択的夫婦別姓は民法改正をしたいですし、LGBT差別解消法案もすぐに成立させます。これは全く自民党とは考え方が違うことです。
 そして四つ目は、今非常に厳しい状況になっている経済の立て直しです。まず私が思うには、年収1千万程度以下の方々には、やはり元気になってもらわなければいけない。例えば親御さんが介護・高齢世代になっている。子どもの教育費はこれから非常に増えていく。その人たちを豊かにしないと、日本の消費は全く上がらない。まず、私たちは年収1千万円程度以下の方の所得税の減免をすることにより、一生懸命働いている人たちを応援する。一方で、困窮家庭、低所得の家庭については現金給付をしていく。それに加えて、コロナで非常に厳しい状況になっている経済を立て直すためにも、コロナの補償はした上で、時限的に消費税を5%に減税をしていく。これは、政権を担ってすぐというより、若干時間がかかるかもしれません。なぜならば、衆院で過半数の議席を獲得したとしても参院はまだ自公が過半数を持っているので、法律が通らないかもしれない。つまり、われわれとしては消費税の時限的な減税をするために参院で多数派を形成することも必要です。こういった経済政策を連続的に進めることにより、国民の皆さんに安心していただき、少しでも生活の不安を取り除くことをおこなっていきたいと考えています。これも、消費税を下げられない自民党とは違う政策になります。
 立憲民主党は、すでに綱領で目指す社会像を明示していますが、原発を将来的になくすことも含めて、再生可能エネルギーを増やす。これだけ異常気象による災害が頻発する中で、気候変動対策は急務です。将来的に「原発のない」カーボンニュートラルか、「原発に頼る」カーボンニュートラルかで、これも自民党の政権とは全く性質を異にします。中長期的な課題ですが、「原発のない」カーボンニュートラルに向けてのロードマップ作りも政権としてすぐに着手します。やらなければいけないこと、課題をたくさん抱えていますが、できることを一つひとつ実現していきます。国民の皆さんにただスローガン的に物事を「やります」というのではなく、具体的なものを実現し、「リアリティ」を持って政治をおこなう。そのことがわれわれに任せられた責任だと思います。

――女性候補の擁立

 女性候補の擁立は積極的におこないたいと常に思っています。2年前の参院選挙の時は、旧立憲民主党時代ですが、選挙区も比例代表候補者も40%を超える女性候補の擁立をしてきました。ただ衆院選挙は、大きな固まりになり、もうすでに活動をされている総支部長が多い状況があり、なるべく空いている選挙区に女性候補者を立てたいと思っていますが、今からたくさんの女性候補者をたてるのは難しいです。しかし、できるだけ30%に近づいて女性候補者を立てられるように努力したいです。来年の参院選挙に向けては、比例代表そして選挙区ともに引き続き女性候補者の擁立に取り組んでいきます。

――政治はおこなう人間によって変わる

 次の総選挙は、東日本大震災で危機管理を担当した枝野官房長官とコロナ対策で危機管理を担当した菅官房長官とのいわば官房長官対決です。そのことをもってしても、枝野代表は内閣総理大臣としての資質と担う意思を十分に持っていると思います。国民の皆さんに「枝野代表を総理に」と明確に申し上げて、戦いに挑みます。立憲民主党はいま60数人ほど、政府の中で、大臣や副大臣、政務官の経験を持つ議員がいます。つまり、われわれが政権を担うことになっても、それぞれの経験を持ってすぐに対応できる人材が揃っています。ですから、政策、社会のあり方、そして人材を具体的に皆さんにお示しをして、選択していただける準備をすることが、これから党として総選挙に向けておこなわなければいけないことだと考えています。「政治は誰がおこなっても同じではない」「おこなう人間によって政治は必ず変わる」というのが私の信念です。立憲民主党が政権を担えば、自民党政治とは異なる政治になり、今の劣化した政府をしっかり機能する政府に立て直すことができると考えています。
 安倍前総理は一度失敗したことを糧に第2次安倍政権を続けてきました。9年前に下野をした時の反省を枝野代表も私も持っています。それを党全体に共有しながら、政権を担う準備をし、国民の皆さんに期待をいただけるようにします。「政治はおこなう人間によって変わる」ということを国民の皆さんに共有していただきます。
 新ポスターの「変えよう。」と党のスローガンの「あなたのための政治」は、国民とともに一人ひとりの命や暮らしを守る政治変えていこうという思いそのものです。ぜひ、国民の皆さん、新しい政権で「あなたのための政治」を実現しましょう。