安住淳国会対策委員長は29日、宮崎県連のオンラインセミナーで時局講演をおこない、渡辺創宮崎1区総支部長・宮崎県連会長と対談しました。

 安住国対委員長は冒頭、「渡辺さんは今回国政へチャレンジするが、衆院選の小選挙区はとても苛酷な選挙。よく決断していただいた」と述べ、自民党と立憲民主党では力の差が大きいが、有為な人材が育っていけば、状況はずいぶん変わると語りました。自身と同様に政治部記者だった渡辺総支部長について「政治センスや物の見方が手に取るように分かる」と評し、「立憲民主党の中に政局感のある政治家、田舎で地に足の着いた――風に乗って受かったり、落ちたりでなくて――地域を地盤に、地域の人に支えられて、宮崎の地に根付いている人を出したい」と期待を込めました。

 安住国対委員長は、新型コロナウイルスへの政府の対応が後手後手になっていることは、安倍晋三前総理と菅総理だけの責任ではなく、政権の政策を追認してきた与党全体の責任だと指摘し、今回の総選挙では自民党と公明党がおこなってきた政治を総括することになると話しました。

 任期満了が10月21日で、残り53日しかなく、公職選挙法では任期満了までの1カ月以内の選挙を実施することになっているのに、自民党が総選挙前に総裁選を実施することについて、自分たちに世間の耳目を集めようとし、「コロナで苦しんでいる人を誰も助けない日程だ」と批判しました。

 政権与党について「ここまで先の見通しを語れない人たちがコロナの対策はできないのではないかと思う」と述べ、感染症対策は先回りをして封じ込めることが大事なのに、後追いで追認してばかりで、緊急事態宣言の発出も遅れて何回も繰り返す、政策も小出しの連続だったと指摘しました。昨年10月から11月に感染者が減った時期に、野党からは早くワクチンを打てるようにすべきだと求めたのに、菅政権はハンコの廃止、GoToトラベルを推進した結果、年末年始に感染が急増し、緊急事態宣言を発出せざるを得なくなったと振り返り、その失敗の要因は変異株の感染力を甘く見ていたことに尽きるのではないかと言及しました。そして、昨年秋にGoToキャンペーンではなく、ワクチンを調達し、接種を進めてオリパラ大会が始まる前に、国民の6割、7割への接種を終えていれば、今と状況は全く違っていたのではないかと話しました。

 大きな固まりを目指して、党所属国会議員は150人になったが、まだまだ自民党との議席数に大差があるとし、「一党政治は必ずひずみとゆがみ、不正と腐敗を生む。そして政策決定がいびつになる。官僚が国民を見ないで為政者の方ばかりを見るようになる。それを正せるのは自民党の中のリーダーを変えることではなくて、政権交代しかない」と訴えました。野党が政権交代を目指すのは大変困難だとし上で、「志を持って、自民党と違う思想や考えをもって、選択肢を示して行かなかったら日本の政治はだめになる。地域で根を張って生きている人たちに信頼される政治家がたくさん集えば、必ず政権交代可能な2大政党は定着すると思っている」と語りました。

 次に、自民党は経済社会状況を見誤っていると話しました。今は人口減少・少子高齢化が進み、社会が変容しているにもかかわらず、「高度成長時代の夢をもう一度だったから、自民党はオリンピックや万博に固執したのだと思う」「新しい社会のあり方を示せないまま、高度成長時代のよき思い出にすがったということがこの7、8年続いたのではないか」と述べました。どんどん財政出動し、日銀もどんどんお金を出して株価を押し上げているが、地方では人口が減って衰退し、高齢者ばかりが残っているのが実態だとし、「今の日本社会には成長するだけの人的余力が地域になくなりつつある。そういう中で、高度成長とは違う、成熟した社会の中で、安定した社会を目指すことの方が現実的だ」と述べ、本来はそのようなあるべき社会の姿を選挙で取り上げるべきだと話しました。

 新型コロナに関し、ワクチン接種や休業・時短要請先への協力金支給の遅れなどの問題点が山積しており、さらにPCR検査の拡充、感染者を隔離して療養させる居場所の確保、軽症者に投与して重症化を防ぐ抗体カクテル治療の体制整備などをおこなうには、現在計上されている予備費は2兆6000億円では到底足りず、総選挙で政治空白が生じる前に補正予算で予備費を積んでおくべきだと与党に提案していることを説明しました。その返事は週明けにも返ってくるとの見通しを示し、「与党とか野党ということではなく、国会議員の任期中の責務として、臨時国会を開いて補正予算を上げるべきだ」と訴えました。

 続いて、安住国対委員長と渡辺総支部長がミニ対談をおこないました。まず、臨時国会開会の見通しについて尋ねると、「今やらないと憲法に従って要請された国会要求に内閣が応えられなかったとうことになってしまう」と述べました。自民党総裁選、総選挙で新しい人事が決まるまで、どうしても2、3カ月、国会は何も決められなくなってしまうと解説し、その間に新型コロナに対応できるように予算措置をしておくことが国会議員としての責務だと重ねて話しました。

 渡辺総支部長は、政権与党が昨年に続き今年も通常国会をしないなど、国会での議論をしようとしてこなかったことについて見解を問うと、安住国対委員長は、300議席を超える自公に対し、少数野党は押し切られ、力づくで国会を閉じられて、議論を封殺されてしまったと振り返りました。数のおごりに陥っていた自民党が、横浜市長選で敗れると、少し謙虚な姿勢を見せていることを例に挙げ、「選挙は大事。有権者の1票が政治を変える。われわれは政権を目指して頑張るが、仮に政権に届かなかったとしても、与野党が伯仲して10議席や20議席の差の中にあったら、乱暴な国会運営はできない。私たちの宿題は、そういう数をちゃんと持って、国民の皆さんからばらばらだと言われないように結束して物に当たっていく。政策が決まったら、それに従う。そういう大人の政党に脱皮するところを国民にきちっと見せて信頼されること。そして政党同士で競い合う。私はその基礎をこの選挙で作りたい」と語りました。

 続いて、渡辺総支部長が国政で何を目指すかを語りました。今政治に一番足りていないのは「納得」ではないかと提起し、「できるだけ多くの人が皆さんが、いろいろな形での納得を得られる合意形成をつくることが本来の政治の役割」だとし、10年余りにわたる県議会議員としての経験を話しました。しかし、「今の政治はその納得を得ようという基本姿勢を大きく欠いてしまっている」と指摘しました。コロナ禍の中で、この25年、30年の間、気づかないようにしよう、目を向けないようにしようとしたさまざまな課題、沈殿するように下に溜まっていた事象が表面化し、これはこの30年の政治のツケだった。行き過ぎた新自由主義が結果としてコロナに対応できない社会をつくっていないか。社会からゆとりやバッファーのようものを奪い去ってしまったがために、コロナに対応できない社会になっていたのではないか」と指摘しました。また、政権に都合のよい人や味方になっている人の利益になるように対応しているように見えること、国会を開かず議論をしないことも国民が政府のコロナ対策に納得しないことに結びついているのではないかと語りました。

 次に、国会議員として大きく変わろうとしている社会構造を見据えて役割を果たしたいと語りました。自身が10月に44歳になる、いわゆるロスジェネ世代、就職氷河期時代の中間くらいの年齢だと明かし、その世代の中には社会に出た時から非正規雇用のままで賃金が上がらず、生活が厳しく家族を持ちたくても持てないまま40代、50代を迎え、20年後には老後を迎えることになる方が相当いらっしゃることを取り上げました。そうした状況を踏まえ、政治の責任として「困った時にも安心して暮らし続けられれる社会の構造をつくる」ように取り組みたいと話し、そのために、税を含めた負担とサービスの給付のあり方、ベーシックサービス等生活の土台となるものを整えること等について体系的に考えていく必要性を強調しました。

 次に経済政策を取り上げました。宮崎県民の就業状況について、農業従事者(9.8%)よりも医療・福祉(16.4%)の方が多く、これは高齢化が進んでいるからだと説明しました。しかし、介護や医療の現場で働く人の多くの賃金水準は十分と言えず、引き上げていく必要があり、そうすることによって地域で経済が循環することになると話しました。一方、外需については、購買力が豊かになっていくアジアに視点を置くべきであると語りました。

 最後に、「1人ひとりの声がないがしろにされている国会の中で、1人でも多くの皆さんの理解、納得を得らえる政治を実現するために全力を尽くしたい。たくさんの声を受け止めて、その中から、現状として届いていない声をしっかり、強めに押し出しながら言っていくのが野党第1党の役割。多くの声を受け止め、1人でも多くの人に納得してもらえる合致点を見出し、答えを出していくことが役割だ」と話し、国政に決意をもって挑戦する以上、あまり目立たなくても、縁の下の力持ちのような役割を含めて、しっかり果たせるような立場に立てるよう、全力で取り組んでいきたいと決意を表明しました。

セミナーの録画はこちら(https://cdp-japan.jp/news/20210827_1989)から視聴できます。